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48.懐かしい光景でした

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徐々に光が強くなり、やがて視界が全て真っ白になるほど眩しいものに変わる。
やがて光が収まると、そこには見慣れた懐かしい景色が広がっていた。
「ここは……教室……?」
そこは、俺たちが通っている高校の教室だった。教室には誰もいなかったが、窓から見える風景からして間違いない。
「戻ってこれたんだ……本当に……」
俺の腕の中には、しっかりと太陽がいた。
ホッとして、太陽を抱きしめる。陽平が優しく太陽の頭を撫でた。
「太陽、パパたちの世界に着いたよ」
「あ~あぅ~」
太陽は嬉しそうに笑っている。

また全裸になってしまうのではないかと不安だったが、無事に異世界の服を着たままだった。
ルシアンにもらったアイテムもしっかりとポケットに入っている。
こっちの世界の物は持ち込めないが、異世界のものは持って帰れる仕組みらしい。

3人で窓の外を眺めていると、教室のドアが開いて、クラスメイトたちが入ってきた。
「……え!?太一と陽平!?」
「おおお!お前ら、帰って来たんだな!!」
「おかえりー!!!」
懐かしい顔ぶれが走り寄ってくる。ちょうど移動教室から戻ってくるタイミングだったようだ。次々とみんなが教室に入ってきて、俺たちに声をかける。
「向こうの世界はどうだった?お前たち結婚したのか?」
「もしかして、その子、2人の子供!?」
「子供の名前当ててやるぞ!……『太陽』だろ!」
俺と陽平は戸惑った。まるで俺たちが異世界に行っていたことを知っていたかのように話しかけられている。

すると、担任の先生が息を切らしながら教室に入ってきた。
「お前たち、帰って来れたんだな!良かった……」
「えっと……あの……」
「はは、驚くのも無理はないよな。実は……」
先生は優しく微笑むと、どういうことなのか説明してくれた。

突然教室で俺たちが消えた時、先生がすぐに警察に連絡したそうだ。
俺たちが消えた後は、その場に着ていた服だけが残されている状態だったらしい。
警察が来て現場を確認すると、その後異世界研究所の職員たちがやってきたということだった。
過去にも同じように異世界に行って戻ってきた人たちがいるため、実は秘密裏に研究が進められていたのだ。
先生やクラスメイトは研究所の人から説明を聞き、俺たちは無事で、そのうち帰ってくるから大丈夫、と聞かされていたらしい。

「そんな研究所があるんですね」
「ああ、先生も最初は信じられなかったが……」
研究所では、実際に異世界から帰ってきた人たちの話や、持ち帰ってきた物から分析し、異世界の存在を証明したそうだ。
様々なことが分かってきていて、俺たちも子供を連れて帰ってくる可能性があると知らされていたようだ。

「異世界へは必ず2人セットで召喚されるそうなんだ」
基本的に夫婦や恋人同士、もしくは……お互い好き合っているけれどまだ付き合っていない2人が選ばれているらしい。
「え、それって……」
俺と陽平は顔を見合わせる。つまり、俺たちもその条件に当てはまっていたということだ。
「でも、僕は昔から太一のこと好きだったけれど、太一は別に僕のこと好きじゃなかったよね?」
陽平が不思議そうに聞いてくる。
「うーん、友達としては大好きだったから、そういう意味では好きだったことになるのかな……」
「太一……それでもすごく嬉しいよ!」
「ヒューヒュー!」
クラスメイトたちが冷やかしてきた。俺は恥ずかしくて顔を真っ赤にする。
「こら、陽平!みんないるから……」
2人きりの生活に慣れてしまっていたが、学校でイチャイチャするわけにはいかない。
「太一は昔から優しいし、いつも一緒にいてくれたよね。……ありがとう」
「……おぅ」
真面目に言われてしまうと、ダメとは言えなかった。でも恥ずかしい……。

「ねえねえ、どうやって結婚したの!?」
「赤ちゃん可愛いね!男の子?」
そのままクラスメイトたちが集まってきて、俺たちは質問攻めにあった。
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