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12 初めての異世界
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次の日の朝。達したまま寝てしまったので、朝から二人でシャワーを浴びた。最近はこのパターンが多い。
「じゃあ、行こうか」
「ああ!」
身支度を整えて、俺たちは出発した。向かうのは、二人が最初に出会った森のような場所だ。
この場所は、本来はちょっとした雑木林なのだが、魔力によって空間を歪められており、アルクにしか分からない抜け道があるらしい。
「真尋、こっちに来てくれ」
アルクに促され、歪みの中に足を踏み入れる。すると、一瞬にして景色が変わった。
森の中にいたはずなのに、目の前には大きな門がある。街の入り口のようだ。後ろを振り向くと、見渡す限りの大草原が広がっている。
「うわぁ……」
まるでファンタジー映画の世界に飛び込んだような感覚だった。風が吹き抜けると草花が揺れ、空を見上げれば鳥が飛んでいる。
「すごいな!アルクの世界はこんなに綺麗なんだな!」
俺は感動して、思わず歓喜に満ちた声を上げた。
「ここは王都の近くだから安全なんだ。少し離れると狂暴化した魔獣のせいで危険な地域ばかりだけどね……」
アルクはそう言うと、少し寂しそうな表情になる。
「そうなんだ……早く平和になると良いな」
「ああ……そのために僕は戦っているんだ」
真剣な眼差しで前を見る姿にドキッとした。世界のために戦うという彼の決意は本物だ。こういうところが好きなんだよな……。
「さあ、街に入ろう。ここに、神の祠があるんだ」
「へぇ……」
神の祠と聞いて、ゲームを連想してしまう。この世界にはそういうものがあるんだな。
「さあ、真尋、行こう」
アルクに手を引かれて歩き出す。周りを見ると、レンガ造りの家が立ち並んでおり、道行く人々はカラフルな髪色をしていた。まさにRPGの街といった雰囲気である。お店屋さんの看板のようなものもあり、書かれている文字は読めなかった。異世界にやって来たんだな、と実感する。
しばらく歩くと、アルクが立ち止まった。
そこには、こじんまりとしているが、手入れが行き届いている綺麗な建物があった。大切にされていることが見て取れる。ここが神の祠なのだろう。
中に入ると、祭壇のような場所に小さな像が置かれていた。女神なのだろうか、中性的で美しく、優しそうな表情をしている。
「この像が神様なのか?」
「そうだよ」
アルクによると、この神は世界を司る神であり、すべての人々を導いてくれる存在だという。
「じゃあ、この像に祈りを捧げれば……」
「ああ、きっと願いを聞いてくれるはずだ」
「そうか……」
アルクは膝をつくと、両手を組んで目を閉じた。
「神よ。真尋は悪い人間ではありませんでした。どうか、恋人になることを許してください」
「ん!?」
想定と違った発言に驚いてしまう。俺の魔力の謎を解明してもらうんじゃなかったのか……。
「な、なあ、アルク……それ、今お願いすることじゃないような……」
「うん?ああ、そうだけど、その前にまず神に報告しないとね」
「そういうものなのか……?」
アルクの中では筋が通っているらしい。確かに、俺もお世話になった人がいたら、その人に報告するだろう。そういう感じなのかもしれない。相手、神様だけど……。
「さあ、次は君の番だよ」
「えっ……」
よく分からないままアルクに倣って祈ることにする。
「えーっと……、俺はこれからもアルクと一緒にいたいと思っています。よろしくお願いします」
こういうことでいいのか不安だったが、とりあえず口に出してみた。
俺の言葉を聞いたアルクが、嬉しそうな表情を浮かべている。こういう時は本当に無邪気な子供のようだ。
『その願い、聞き届けましょう』
すると、どこからともなく声が聞こえてきた。驚いてアルクを見ると、小さく頷く。どうやらアルクにも同じように聞こえたようだ。
「今のは……?」
「ああ、神の声だよ」
「神と会話が出来るのか!?」
俺は思わず叫んでしまった。いったいどういう仕組みになっているのだろう。
「ああ。勇者である僕は神の使途として認められているからなんだ」
「なるほど……」
神と会話ができるとは、アルクはこの世界でも特別な存在のようだ。それにしても、ただの像だと思っていたのに、本当に神様だったとは……。
「じゃあ、行こうか」
「ああ!」
身支度を整えて、俺たちは出発した。向かうのは、二人が最初に出会った森のような場所だ。
この場所は、本来はちょっとした雑木林なのだが、魔力によって空間を歪められており、アルクにしか分からない抜け道があるらしい。
「真尋、こっちに来てくれ」
アルクに促され、歪みの中に足を踏み入れる。すると、一瞬にして景色が変わった。
森の中にいたはずなのに、目の前には大きな門がある。街の入り口のようだ。後ろを振り向くと、見渡す限りの大草原が広がっている。
「うわぁ……」
まるでファンタジー映画の世界に飛び込んだような感覚だった。風が吹き抜けると草花が揺れ、空を見上げれば鳥が飛んでいる。
「すごいな!アルクの世界はこんなに綺麗なんだな!」
俺は感動して、思わず歓喜に満ちた声を上げた。
「ここは王都の近くだから安全なんだ。少し離れると狂暴化した魔獣のせいで危険な地域ばかりだけどね……」
アルクはそう言うと、少し寂しそうな表情になる。
「そうなんだ……早く平和になると良いな」
「ああ……そのために僕は戦っているんだ」
真剣な眼差しで前を見る姿にドキッとした。世界のために戦うという彼の決意は本物だ。こういうところが好きなんだよな……。
「さあ、街に入ろう。ここに、神の祠があるんだ」
「へぇ……」
神の祠と聞いて、ゲームを連想してしまう。この世界にはそういうものがあるんだな。
「さあ、真尋、行こう」
アルクに手を引かれて歩き出す。周りを見ると、レンガ造りの家が立ち並んでおり、道行く人々はカラフルな髪色をしていた。まさにRPGの街といった雰囲気である。お店屋さんの看板のようなものもあり、書かれている文字は読めなかった。異世界にやって来たんだな、と実感する。
しばらく歩くと、アルクが立ち止まった。
そこには、こじんまりとしているが、手入れが行き届いている綺麗な建物があった。大切にされていることが見て取れる。ここが神の祠なのだろう。
中に入ると、祭壇のような場所に小さな像が置かれていた。女神なのだろうか、中性的で美しく、優しそうな表情をしている。
「この像が神様なのか?」
「そうだよ」
アルクによると、この神は世界を司る神であり、すべての人々を導いてくれる存在だという。
「じゃあ、この像に祈りを捧げれば……」
「ああ、きっと願いを聞いてくれるはずだ」
「そうか……」
アルクは膝をつくと、両手を組んで目を閉じた。
「神よ。真尋は悪い人間ではありませんでした。どうか、恋人になることを許してください」
「ん!?」
想定と違った発言に驚いてしまう。俺の魔力の謎を解明してもらうんじゃなかったのか……。
「な、なあ、アルク……それ、今お願いすることじゃないような……」
「うん?ああ、そうだけど、その前にまず神に報告しないとね」
「そういうものなのか……?」
アルクの中では筋が通っているらしい。確かに、俺もお世話になった人がいたら、その人に報告するだろう。そういう感じなのかもしれない。相手、神様だけど……。
「さあ、次は君の番だよ」
「えっ……」
よく分からないままアルクに倣って祈ることにする。
「えーっと……、俺はこれからもアルクと一緒にいたいと思っています。よろしくお願いします」
こういうことでいいのか不安だったが、とりあえず口に出してみた。
俺の言葉を聞いたアルクが、嬉しそうな表情を浮かべている。こういう時は本当に無邪気な子供のようだ。
『その願い、聞き届けましょう』
すると、どこからともなく声が聞こえてきた。驚いてアルクを見ると、小さく頷く。どうやらアルクにも同じように聞こえたようだ。
「今のは……?」
「ああ、神の声だよ」
「神と会話が出来るのか!?」
俺は思わず叫んでしまった。いったいどういう仕組みになっているのだろう。
「ああ。勇者である僕は神の使途として認められているからなんだ」
「なるほど……」
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