10 / 33
【10】奇跡!?聖女の真の実力
しおりを挟む
「ルセル……キスしてくれ」
王子の声はかすかで、ほとんど聞こえないほどだったが、その言葉が耳に届いた瞬間、心臓が激しく高鳴る。
「え……? キス……?」
こんな時にどうしてキスなんて……。戸惑いの感情しか浮かばない。しかし、王子の目には確かな決意が宿っている。それを見て、俺も覚悟を決めた。
震える手で彼の頬に触れると、その冷たさに胸が痛む。彼は痛みに耐えながらも、薄く開いた瞳で優しく俺を見つめていた。
「王子……」
俺は小さく祈るように呟きながら、彼の唇にそっと顔を近づける。心臓が激しく鼓動し、緊張で手が震えていた。
(これが……俺の初めてのキスになるなんて……)
唇が触れる瞬間、まるで世界が止まったかのような感覚に包まれた。周囲の音も光も消え去り、二人だけが存在するような静寂が訪れる。
そして、唇を重ねると、温かい光が俺たちを包み込んだ。体の奥底から、柔らかな光があふれ出し、その光は王子の体へと流れ込んでいく。
俺は目を閉じ、唇を重ねたまま、光の流れに全てを委ねた。
「んっ……」
それは、まるで俺たち二人の命が溶け合うかのような不思議な感覚だった。胸の中から湧き上がるエネルギーが、王子の中へと届けられ、彼の冷たかった体が徐々に温かさを取り戻していく。
俺は魔力についてまだよく分かっていないけれど、この瞬間だけは確信できた。この光が、王子を救うのだと。
(お願い、王子、戻ってきて……)
心の中で強く祈りながら、口づけに全ての想いを込めた。温かい光がさらに強さを増し、俺の体を通して王子へと流れ続ける。その感覚は、言葉にできないほどの幸福感と共に広がっていった。
「……ル、セル……」
王子の声がかすかに漏れ聞こえた。彼の体が少しずつ反応し始め、呼吸が穏やかになっていく。俺の魔力が、確かに彼に届いているのだと思った。
俺は唇を離さず、さらに強く想いを込めた。王子が助かるように、その一心で。自分の体から流れ出す光が、まるで川のように彼の体内に染み渡っていく。その流れが、彼の命を救っていると感じられた。
しばらくすると、王子の呼吸が徐々に落ち着きを取り戻した。傷口はほとんど塞がり、彼の体から再び力強い生命の気配が感じられる。
「ルセル……もう大丈夫だ、ありがとう」
その声には、以前の力強さが戻っていた。その瞬間、胸の奥に喜びと安堵が一気に広がる。
「王子……良かった……!」
涙がこぼれそうになるのを必死にこらえながら、俺は王子の手を強く握りしめた。彼の命を救えた、それだけで胸がいっぱいになる。
「君の魔力が、僕を救ってくれたんだ」
王子は穏やかに微笑み、俺の手を優しく握り返した。その温もりが、心の底まで染み渡っていく。
「王子……」
俺は彼の顔を見つめ、もう一度、力強くその手を握り返した。
「これが……聖女の力なのか……」
「まさか、本当に聖女だったとは……」
周囲の貴族たちがざわめき始め、次々と俺を聖女として認める声が聞こえてくる。それに少しだけ安堵したが、今はそれよりも、王子が無事であることが何よりも嬉しかった。
「ルセル、ありがとう。君は本当に素晴らしいよ」
王子の言葉が終わると同時に、彼は力強く俺を抱きしめてきた。突然のことに驚いたが、その温もりが体全体を包み込んでいく。
「えっ、ちょっと、王子……!」
不意の抱擁に、顔が一気に熱くなる。さっきのキスのことが頭をよぎり、心臓はバクバクと音を立てた。恥ずかしさに耐えきれず、逃げ出したい気持ちが込み上げる。
「君の魔力がなければ、僕はどうなっていたか……」
王子の声には感謝と安堵が滲んでいた。俺は彼の胸に顔を埋めながら、何とか平静を保とうとする。
「いや、そんな……王子が守ってくれたから……」
王子の腕の中で、俺は彼の存在がどれほど大きな支えになっているかを改めて感じていた。彼のぬくもりと鼓動が、俺を包み込み、心の奥底まで響いてくる。
「ルセル、本当にありがとう」
王子は柔らかく笑みを浮かべ、さらに強く俺を抱きしめた。
「ちょ、ちょっと待ってください! 王子、近すぎますよ……!」
俺は慌てて距離を取ろうとしたが、彼の腕の力は思った以上に強く、簡単には逃れられない。
「いやだな、ルセル。そんなに恥ずかしがらないでくれよ」
王子は楽しそうに笑いながら、さらに俺を強く抱きしめた。その無邪気な笑顔に、恥ずかしさが一層募る。
「本当に、もう……!」
顔が熱くなるのを感じながら、俺は諦めて彼の肩に顔を埋めた。彼の温もりに包まれ、恥ずかしさと喜びが胸の中でせめぎ合っていた。
王子の声はかすかで、ほとんど聞こえないほどだったが、その言葉が耳に届いた瞬間、心臓が激しく高鳴る。
「え……? キス……?」
こんな時にどうしてキスなんて……。戸惑いの感情しか浮かばない。しかし、王子の目には確かな決意が宿っている。それを見て、俺も覚悟を決めた。
震える手で彼の頬に触れると、その冷たさに胸が痛む。彼は痛みに耐えながらも、薄く開いた瞳で優しく俺を見つめていた。
「王子……」
俺は小さく祈るように呟きながら、彼の唇にそっと顔を近づける。心臓が激しく鼓動し、緊張で手が震えていた。
(これが……俺の初めてのキスになるなんて……)
唇が触れる瞬間、まるで世界が止まったかのような感覚に包まれた。周囲の音も光も消え去り、二人だけが存在するような静寂が訪れる。
そして、唇を重ねると、温かい光が俺たちを包み込んだ。体の奥底から、柔らかな光があふれ出し、その光は王子の体へと流れ込んでいく。
俺は目を閉じ、唇を重ねたまま、光の流れに全てを委ねた。
「んっ……」
それは、まるで俺たち二人の命が溶け合うかのような不思議な感覚だった。胸の中から湧き上がるエネルギーが、王子の中へと届けられ、彼の冷たかった体が徐々に温かさを取り戻していく。
俺は魔力についてまだよく分かっていないけれど、この瞬間だけは確信できた。この光が、王子を救うのだと。
(お願い、王子、戻ってきて……)
心の中で強く祈りながら、口づけに全ての想いを込めた。温かい光がさらに強さを増し、俺の体を通して王子へと流れ続ける。その感覚は、言葉にできないほどの幸福感と共に広がっていった。
「……ル、セル……」
王子の声がかすかに漏れ聞こえた。彼の体が少しずつ反応し始め、呼吸が穏やかになっていく。俺の魔力が、確かに彼に届いているのだと思った。
俺は唇を離さず、さらに強く想いを込めた。王子が助かるように、その一心で。自分の体から流れ出す光が、まるで川のように彼の体内に染み渡っていく。その流れが、彼の命を救っていると感じられた。
しばらくすると、王子の呼吸が徐々に落ち着きを取り戻した。傷口はほとんど塞がり、彼の体から再び力強い生命の気配が感じられる。
「ルセル……もう大丈夫だ、ありがとう」
その声には、以前の力強さが戻っていた。その瞬間、胸の奥に喜びと安堵が一気に広がる。
「王子……良かった……!」
涙がこぼれそうになるのを必死にこらえながら、俺は王子の手を強く握りしめた。彼の命を救えた、それだけで胸がいっぱいになる。
「君の魔力が、僕を救ってくれたんだ」
王子は穏やかに微笑み、俺の手を優しく握り返した。その温もりが、心の底まで染み渡っていく。
「王子……」
俺は彼の顔を見つめ、もう一度、力強くその手を握り返した。
「これが……聖女の力なのか……」
「まさか、本当に聖女だったとは……」
周囲の貴族たちがざわめき始め、次々と俺を聖女として認める声が聞こえてくる。それに少しだけ安堵したが、今はそれよりも、王子が無事であることが何よりも嬉しかった。
「ルセル、ありがとう。君は本当に素晴らしいよ」
王子の言葉が終わると同時に、彼は力強く俺を抱きしめてきた。突然のことに驚いたが、その温もりが体全体を包み込んでいく。
「えっ、ちょっと、王子……!」
不意の抱擁に、顔が一気に熱くなる。さっきのキスのことが頭をよぎり、心臓はバクバクと音を立てた。恥ずかしさに耐えきれず、逃げ出したい気持ちが込み上げる。
「君の魔力がなければ、僕はどうなっていたか……」
王子の声には感謝と安堵が滲んでいた。俺は彼の胸に顔を埋めながら、何とか平静を保とうとする。
「いや、そんな……王子が守ってくれたから……」
王子の腕の中で、俺は彼の存在がどれほど大きな支えになっているかを改めて感じていた。彼のぬくもりと鼓動が、俺を包み込み、心の奥底まで響いてくる。
「ルセル、本当にありがとう」
王子は柔らかく笑みを浮かべ、さらに強く俺を抱きしめた。
「ちょ、ちょっと待ってください! 王子、近すぎますよ……!」
俺は慌てて距離を取ろうとしたが、彼の腕の力は思った以上に強く、簡単には逃れられない。
「いやだな、ルセル。そんなに恥ずかしがらないでくれよ」
王子は楽しそうに笑いながら、さらに俺を強く抱きしめた。その無邪気な笑顔に、恥ずかしさが一層募る。
「本当に、もう……!」
顔が熱くなるのを感じながら、俺は諦めて彼の肩に顔を埋めた。彼の温もりに包まれ、恥ずかしさと喜びが胸の中でせめぎ合っていた。
96
お気に入りに追加
105
あなたにおすすめの小説
アルファ王子ライアンの憂鬱 〜敵国王子に食べられそう。ビクンビクンに俺は負けない〜
五右衛門
BL
俺はライアン・リバー。通称「紅蓮のアルファ王子」。アルファとして最強の力を誇る……はずなんだけど、今、俺は十八歳にして人生最大の危機に直面している。何って? そりゃ、「ベータになりかける時期」がやってきたんだよ!
この世界では、アルファは一度だけ「ベータになっちゃえばいいじゃん」という不思議な声に心を引っ張られる時期がある。それに抗えなければ、ベータに転落してしまうんだ。だから俺は、そんな声に負けるわけにはいかない! ……と、言いたいところだけど、実際はベータの誘惑が強すぎて、部屋で一人必死に耐えてるんだよ。布団握りしめて、まるでトイレで踏ん張るみたいに全身ビクンビクンさせながらな!
で、そこに現れるのが、俺の幼馴染であり敵国の王子、ソラ・マクレガー。こいつは魔法の天才で、平気で転移魔法で俺の部屋にやってきやがる。しかも、「ベータになっちゃいなよ」って囁いてきたりするんだ。お前味方じゃねぇのかよ! そういや敵国だったな! こっちはそれどころじゃねえんだぞ! 人生かけて耐えてるってのに、紅茶飲みながら悠長に見物してんじゃねぇ!
俺のツッコミは加速するけど、誘惑はもっと加速してくる。これ、マジでヤバいって! 果たして俺はアルファのままでいられるのか、それともベータになっちゃうのか!?
【完結】オーロラ魔法士と第3王子
N2O
BL
全16話
※2022.2.18 完結しました。ありがとうございました。
※2023.11.18 文章を整えました。
辺境伯爵家次男のリーシュ・ギデオン(16)が、突然第3王子のラファド・ミファエル(18)の専属魔法士に任命された。
「なんで、僕?」
一人狼第3王子×黒髪美人魔法士
設定はふんわりです。
小説を書くのは初めてなので、何卒ご容赦ください。
嫌な人が出てこない、ふわふわハッピーエンドを書きたくて始めました。
感想聞かせていただけると大変嬉しいです。
表紙絵
⇨ キラクニ 様 X(@kirakunibl)

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。

失恋して崖から落ちたら、山の主の熊さんの嫁になった
無月陸兎
BL
ホタル祭で夜にホタルを見ながら友達に告白しようと企んでいた俺は、浮かれてムードの欠片もない山道で告白してフラれた。更には足を踏み外して崖から落ちてしまった。
そこで出会った山の主の熊さんと会い俺は熊さんの嫁になった──。
チョロくてちょっぴりおつむが弱い主人公が、ひたすら自分の旦那になった熊さん好き好きしてます。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる