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09☆初の別行動
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次の日の朝、マネージャーから連絡があり、十夜はしばらくドラマの撮影に入ることになった。
交際発表をしてからは、僕達は必ずセットで仕事が入っていたが、久しぶりに別行動となる。
十夜は演技力もあるので、単独でよくドラマに抜擢されているのだ。
今回のドラマは少年漫画が原作の探偵もの。以前のシリーズでも十夜が主演を務めていた。その続編制作が急に決まったらしい。
「いきなり今日から現場だって……急すぎるな」
「ほんと急だねぇ。でも、ドラマ楽しみだな」
ドラマに出ている十夜を見るのは、純粋に楽しい。僕は演技が苦手だけど、十夜の演技はすごく自然で、見ていて引き込まれるものがある。だからこそ、主演を任せてもらえるのだろう。
「でも、お前と一緒にいる時間が少なくなっちゃう……」
そんな実力派アイドル様の口から、拗ねた子供のような言葉が出てきて驚く。
「え!?いや、仕事は別でも家で会えるでしょ……」
「それはそうだけど……」
僕は、正直ホッとしているところもあった。一昨日の一件から、十夜と二人きりになると変に意識してしまうからだ。
昨日の夜も緊張してなかなか寝付けなかった。必死で寝たふりをしていたので、何もなかったけれど……。
「ドラマを楽しみにしているファンのためにも、撮影頑張ってこいよ」
「分かった……」
しょんぼりとしている十夜を見て、少しだけ申し訳なく思う。ポンポンと頭を撫でてやると、嬉しそうな表情になった。犬みたいだな。
「なあ、お願いがあるんだけど……」
「ん?何?」
「毎日、行ってらっしゃいのキスしてくれないか?」
「はぁ!?い、嫌に決まってんだろ」
一体何を言い出すのか。全力で拒否すると、十夜は再び悲しげな顔をする。
「もうドラマ頑張れない……」
「おいコラ……いい大人が駄々こねるんじゃない」
「だって……光輝のチューが無いとやる気出ない……」
「な、何言ってんだよ!」
そんなことを言っていると、マネージャーが迎えに来た。
「ほら、早く」
「ああ~もう!はいはい!」
仕方なく、チュッと頬に触れるだけの軽いキスをする。
「ふふっ、ありがとな!頑張ってくるよ!」
十夜は満足したようで、元気よく出ていった。
リビングに戻ってソファに座り、大きく息を吐く。
(自分からキスしてしまった……)
ドキドキと心臓がうるさい。顔も熱い。
(こんなの、おかしいよな……)
大嫌いだったはずなのに、いつの間にかこういうことをするのが普通になってきていて、しかもそれが嫌じゃないのだ。
この関係が心地よいとさえ思ってしまう自分がいる。この感情は……。
「あー!もうやめやめ!仕事しなきゃ!」
これ以上考えるのはやめようと、自分に言い聞かせるように呟いて、立ち上がった。
今日は急に十夜の仕事が入ってしまったため、他のメンバーは各自家で出来る作業をする。
とりあえず、今日中にやっておかなければならない仕事を片付けることにした。
「ふぅ、これで終わりっと」
仕事に没頭しているうちに、あっという間に時間が過ぎていた。時計を見ると既に夕方を過ぎていて、空腹を感じる。
「お昼も食べずに作業していたのか……」
さすがに何かお腹に入れようと立ち上がると、テーブルの上にメモが置かれていることに気が付いた。
『ちゃんと飯食えよ』
そう書かれている紙を見て、思わず吹き出してしまう。
「アイツ、居ない時まで偉そうだな……っていうか、オカンかよ」
一緒に暮らしてみて、アイツは意外と心配性なところもあると気が付いた。
そんな一面を知っているのは自分だけだと思うと、少し優越感に浸ってしまう。
「んー、何を食べようかな。チャーハンとかでいっか」
普段ご飯を作ることがないので、食材はほとんど家に置いていない。
日持ちのするレトルトや冷凍食品が、家での主食なのだ。
冷凍庫からチャーハンを出して解凍しようとしていると、ピンポーンとインターホンが鳴る。
「誰だろう?」
モニターのカメラを見ると、翔の姿があった。
「翔!?どうしたの?」
「やあ。十夜がいなくて寂しがってるかと思ってね」
「べ、別にそんなことはないけど……」
本当は少しだけ、この家に一人でいるのは寂しいと思っていたけど、そんなことは言えるわけがない。
玄関のドアを開けて、翔を迎え入れた。
「差し入れ持ってきたから、一緒に夕飯どう?」
そう言いながら、翔は手に持っていた袋を掲げる。
「わぁ、やったー!」
中を見ると、色とりどりのおかずがたくさん詰まっていた。
交際発表をしてからは、僕達は必ずセットで仕事が入っていたが、久しぶりに別行動となる。
十夜は演技力もあるので、単独でよくドラマに抜擢されているのだ。
今回のドラマは少年漫画が原作の探偵もの。以前のシリーズでも十夜が主演を務めていた。その続編制作が急に決まったらしい。
「いきなり今日から現場だって……急すぎるな」
「ほんと急だねぇ。でも、ドラマ楽しみだな」
ドラマに出ている十夜を見るのは、純粋に楽しい。僕は演技が苦手だけど、十夜の演技はすごく自然で、見ていて引き込まれるものがある。だからこそ、主演を任せてもらえるのだろう。
「でも、お前と一緒にいる時間が少なくなっちゃう……」
そんな実力派アイドル様の口から、拗ねた子供のような言葉が出てきて驚く。
「え!?いや、仕事は別でも家で会えるでしょ……」
「それはそうだけど……」
僕は、正直ホッとしているところもあった。一昨日の一件から、十夜と二人きりになると変に意識してしまうからだ。
昨日の夜も緊張してなかなか寝付けなかった。必死で寝たふりをしていたので、何もなかったけれど……。
「ドラマを楽しみにしているファンのためにも、撮影頑張ってこいよ」
「分かった……」
しょんぼりとしている十夜を見て、少しだけ申し訳なく思う。ポンポンと頭を撫でてやると、嬉しそうな表情になった。犬みたいだな。
「なあ、お願いがあるんだけど……」
「ん?何?」
「毎日、行ってらっしゃいのキスしてくれないか?」
「はぁ!?い、嫌に決まってんだろ」
一体何を言い出すのか。全力で拒否すると、十夜は再び悲しげな顔をする。
「もうドラマ頑張れない……」
「おいコラ……いい大人が駄々こねるんじゃない」
「だって……光輝のチューが無いとやる気出ない……」
「な、何言ってんだよ!」
そんなことを言っていると、マネージャーが迎えに来た。
「ほら、早く」
「ああ~もう!はいはい!」
仕方なく、チュッと頬に触れるだけの軽いキスをする。
「ふふっ、ありがとな!頑張ってくるよ!」
十夜は満足したようで、元気よく出ていった。
リビングに戻ってソファに座り、大きく息を吐く。
(自分からキスしてしまった……)
ドキドキと心臓がうるさい。顔も熱い。
(こんなの、おかしいよな……)
大嫌いだったはずなのに、いつの間にかこういうことをするのが普通になってきていて、しかもそれが嫌じゃないのだ。
この関係が心地よいとさえ思ってしまう自分がいる。この感情は……。
「あー!もうやめやめ!仕事しなきゃ!」
これ以上考えるのはやめようと、自分に言い聞かせるように呟いて、立ち上がった。
今日は急に十夜の仕事が入ってしまったため、他のメンバーは各自家で出来る作業をする。
とりあえず、今日中にやっておかなければならない仕事を片付けることにした。
「ふぅ、これで終わりっと」
仕事に没頭しているうちに、あっという間に時間が過ぎていた。時計を見ると既に夕方を過ぎていて、空腹を感じる。
「お昼も食べずに作業していたのか……」
さすがに何かお腹に入れようと立ち上がると、テーブルの上にメモが置かれていることに気が付いた。
『ちゃんと飯食えよ』
そう書かれている紙を見て、思わず吹き出してしまう。
「アイツ、居ない時まで偉そうだな……っていうか、オカンかよ」
一緒に暮らしてみて、アイツは意外と心配性なところもあると気が付いた。
そんな一面を知っているのは自分だけだと思うと、少し優越感に浸ってしまう。
「んー、何を食べようかな。チャーハンとかでいっか」
普段ご飯を作ることがないので、食材はほとんど家に置いていない。
日持ちのするレトルトや冷凍食品が、家での主食なのだ。
冷凍庫からチャーハンを出して解凍しようとしていると、ピンポーンとインターホンが鳴る。
「誰だろう?」
モニターのカメラを見ると、翔の姿があった。
「翔!?どうしたの?」
「やあ。十夜がいなくて寂しがってるかと思ってね」
「べ、別にそんなことはないけど……」
本当は少しだけ、この家に一人でいるのは寂しいと思っていたけど、そんなことは言えるわけがない。
玄関のドアを開けて、翔を迎え入れた。
「差し入れ持ってきたから、一緒に夕飯どう?」
そう言いながら、翔は手に持っていた袋を掲げる。
「わぁ、やったー!」
中を見ると、色とりどりのおかずがたくさん詰まっていた。
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