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06☆物件見学
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「うわぁ、なにこれ、すごく良いじゃん!」
十夜が見つけた物件は、なんと新築のタワーマンションの上階の部屋だった。
本当に出来たばかりのマンションで、どこも清潔で輝いている。防音の個室もあり、歌やダンスの練習もできそうだ。
それ以外の設備も最新式なものが揃っているし、部屋も広々としている。快適な生活が送れること間違いなしだ。
「よくこんな物件があったなぁ」
「ああ。しかも場所も良いしな」
僕がはしゃいでいると、十夜も気を良くしたのか、嬉しそうに返事が返ってくる。
そうなのだ。この物件は場所もちょうど良い。事務所へも行きやすく、交通ルートも安全そうだった。
「あ、こっちにも部屋がある」
「そこは寝室だな」
僕はうきうきしながら寝室のドアを開ける。しかし、部屋の中を覗いた瞬間、僕は固まった。
目の前に広がるのは、ある意味期待通りの美しい寝室に、高級そうな大きなベッドが一つ。
そう、ベッドが一つなのだ。
「ね、ねぇ……ベッドが一つしかないんだけど……」
「ああ、カップル向けの物件らしくて、最初からクイーンサイズのベッドがセットされてるんだって」
「そ……そうなんだ……」
確かに、普通に考えて、この家に暮らすのは夫婦や恋人同士だろう。男二人でルームシェアするような所ではない。
これは部屋を作り変えてもらわないといけないな、なんて考えていると、予想外な言葉をかけられた。
「俺達もカップルだから問題ないな」
「へっ!?」
あまりの内容に、すっとんきょうな声を出してしまった。何を言っているんだコイツは。
「大きなベッドだから、二人で寝ても今までより広いよ」
「それは確かに……って、いや、そうじゃなくて!」
二人で寝ても十分ゆったりとできそうなサイズだけれど、そういう問題ではない。
僕達が一緒に寝るなんて、どう考えてもありえない。
それなのにコイツは、どうして僕が焦っているのか理解できない、といった様子で首をかしげている。
今何を言っても無駄な気がして、僕は諦めた。実際に寝る時になれば、コイツもさすがに気づくだろう。
「それにしても、この物件高そうだなぁ……」
とりあえず寝室問題は置いておいて、話題を変えた。これだけ良い条件だと、きっと家賃も高いはずだ。
「ああ、それは大丈夫。俺が出すよ」
「え!?」
予想外の言葉に驚いてしまう。
「いや、そんなわけにはいかないよ!」
「いいよ。お前は実家に仕送りしてるだろ?」
僕達は売れているので、お給料もそれなりに貰っている。しかし、僕の実家はあまり裕福ではないので、仕送りをしていた。学費の返済もまだ残っている。
十夜の実家はお金持ちなので、稼いだお金は自分の自由になっていた。とはいえ、使うこともないので貯金していると前に聞いたけれど。
「で、でも……」
僕が困っていると、十夜がばつの悪そうな笑みを浮かべた。
「じつは……もう契約しちゃったんだ」
「ええ!?どういうこと!?」
衝撃的な発言を聞いて、思わず叫んでしまう。
「今すぐ契約しないと売り切れてしまうって言われて……」
「ああ、なるほど……」
確かに、これだけの良物件ならすぐに売り切れてしまう可能性はありそうだ。だからといって、即決してしまうなんて。
「それに、俺はこの部屋にお前と住みたいんだ。これは俺のわがままでもある。だから、お願いだよ」
そんな風に言われてしまうと、断りきれない。僕と住むというのはさておき、こんなに良い条件の物件を見てしまったら、絶対に住みたくなる気持ちは分かる。
「じゃあ……ありがたく甘えることにするよ。でも、生活費はちゃんと支払いさせてくれ」
「ああ、分かった!」
そう言って笑う十夜はとても嬉しそうで、僕はそれ以上何も言えなかった。
こういうのを、甲斐性のある男と言うのだろうか。女の子からしたら理想の男性なんだろうな、と思う。
そんな男が、僕のために色々してくれているということに、何だか優越感を抱いた。
「お前が気に入ってくれて良かったよ」
いつの間にかすぐ近くに十夜の顔があり、何故かドキッとしてしまった。理想の男性だとか、そんなことを考えていたからだろうか。なんとなく気恥ずかしくなって、目をそらす。
「まぁ、悪くはないかな」
素直に褒めるのも悔しくて、ひねくれた態度で答えたが、コイツは気にも留めない様子だった。ムッとされるかと思ったのに、余裕のある感じがやっぱりむかつく。
「じゃ、早速引っ越し業者に連絡するな」
「え!?今!?」
いくら契約済とはいえ、見たばかりの物件にもう引っ越しするなんて。冗談だと思いたいが、コイツの目は本気だ。
余裕があるんじゃなくて、早く引っ越したくてむしろ余裕がなかったのかもしれない。
すぐさま電話をかけ始めた十夜を見ながら、僕は小さく溜息を吐いた。
十夜が見つけた物件は、なんと新築のタワーマンションの上階の部屋だった。
本当に出来たばかりのマンションで、どこも清潔で輝いている。防音の個室もあり、歌やダンスの練習もできそうだ。
それ以外の設備も最新式なものが揃っているし、部屋も広々としている。快適な生活が送れること間違いなしだ。
「よくこんな物件があったなぁ」
「ああ。しかも場所も良いしな」
僕がはしゃいでいると、十夜も気を良くしたのか、嬉しそうに返事が返ってくる。
そうなのだ。この物件は場所もちょうど良い。事務所へも行きやすく、交通ルートも安全そうだった。
「あ、こっちにも部屋がある」
「そこは寝室だな」
僕はうきうきしながら寝室のドアを開ける。しかし、部屋の中を覗いた瞬間、僕は固まった。
目の前に広がるのは、ある意味期待通りの美しい寝室に、高級そうな大きなベッドが一つ。
そう、ベッドが一つなのだ。
「ね、ねぇ……ベッドが一つしかないんだけど……」
「ああ、カップル向けの物件らしくて、最初からクイーンサイズのベッドがセットされてるんだって」
「そ……そうなんだ……」
確かに、普通に考えて、この家に暮らすのは夫婦や恋人同士だろう。男二人でルームシェアするような所ではない。
これは部屋を作り変えてもらわないといけないな、なんて考えていると、予想外な言葉をかけられた。
「俺達もカップルだから問題ないな」
「へっ!?」
あまりの内容に、すっとんきょうな声を出してしまった。何を言っているんだコイツは。
「大きなベッドだから、二人で寝ても今までより広いよ」
「それは確かに……って、いや、そうじゃなくて!」
二人で寝ても十分ゆったりとできそうなサイズだけれど、そういう問題ではない。
僕達が一緒に寝るなんて、どう考えてもありえない。
それなのにコイツは、どうして僕が焦っているのか理解できない、といった様子で首をかしげている。
今何を言っても無駄な気がして、僕は諦めた。実際に寝る時になれば、コイツもさすがに気づくだろう。
「それにしても、この物件高そうだなぁ……」
とりあえず寝室問題は置いておいて、話題を変えた。これだけ良い条件だと、きっと家賃も高いはずだ。
「ああ、それは大丈夫。俺が出すよ」
「え!?」
予想外の言葉に驚いてしまう。
「いや、そんなわけにはいかないよ!」
「いいよ。お前は実家に仕送りしてるだろ?」
僕達は売れているので、お給料もそれなりに貰っている。しかし、僕の実家はあまり裕福ではないので、仕送りをしていた。学費の返済もまだ残っている。
十夜の実家はお金持ちなので、稼いだお金は自分の自由になっていた。とはいえ、使うこともないので貯金していると前に聞いたけれど。
「で、でも……」
僕が困っていると、十夜がばつの悪そうな笑みを浮かべた。
「じつは……もう契約しちゃったんだ」
「ええ!?どういうこと!?」
衝撃的な発言を聞いて、思わず叫んでしまう。
「今すぐ契約しないと売り切れてしまうって言われて……」
「ああ、なるほど……」
確かに、これだけの良物件ならすぐに売り切れてしまう可能性はありそうだ。だからといって、即決してしまうなんて。
「それに、俺はこの部屋にお前と住みたいんだ。これは俺のわがままでもある。だから、お願いだよ」
そんな風に言われてしまうと、断りきれない。僕と住むというのはさておき、こんなに良い条件の物件を見てしまったら、絶対に住みたくなる気持ちは分かる。
「じゃあ……ありがたく甘えることにするよ。でも、生活費はちゃんと支払いさせてくれ」
「ああ、分かった!」
そう言って笑う十夜はとても嬉しそうで、僕はそれ以上何も言えなかった。
こういうのを、甲斐性のある男と言うのだろうか。女の子からしたら理想の男性なんだろうな、と思う。
そんな男が、僕のために色々してくれているということに、何だか優越感を抱いた。
「お前が気に入ってくれて良かったよ」
いつの間にかすぐ近くに十夜の顔があり、何故かドキッとしてしまった。理想の男性だとか、そんなことを考えていたからだろうか。なんとなく気恥ずかしくなって、目をそらす。
「まぁ、悪くはないかな」
素直に褒めるのも悔しくて、ひねくれた態度で答えたが、コイツは気にも留めない様子だった。ムッとされるかと思ったのに、余裕のある感じがやっぱりむかつく。
「じゃ、早速引っ越し業者に連絡するな」
「え!?今!?」
いくら契約済とはいえ、見たばかりの物件にもう引っ越しするなんて。冗談だと思いたいが、コイツの目は本気だ。
余裕があるんじゃなくて、早く引っ越したくてむしろ余裕がなかったのかもしれない。
すぐさま電話をかけ始めた十夜を見ながら、僕は小さく溜息を吐いた。
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