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01☆真剣交際宣言!?

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「僕達は、真剣に交際していることを報告いたします!」

十夜が真面目な顔でそう宣言すると、一斉にフラッシュが焚かれる。
(どうして、こんなことに……)
僕は、隣で引き攣った笑いを浮かべながら呆然としていた……。

***

僕は白川しろかわ 光輝こうき、二十二歳。アイドルグループ「Colorful Stars」のメンバーだ。
男性五人で結成されたグループで、結成二年でドーム公演を成功させた。今や飛ぶ鳥を落とす勢いのアイドルグループである。
忙しい日々を送っているが、メンバーとの仲も良く、いつも楽しく過ごしていた。
ただ、一人を除いては――。

「おい!さっさと準備しろよ、遅れるぞ」
「言われなくても分かってるよ!」
僕に偉そうに命令してきたのは、メンバーの一人、黒坂くろさか 十夜とおや。僕の天敵だ。
コイツは何の因果か、家が近所で幼稚園から中学までずっと同じ学校に通っていた。高校でやっと別々になったと思ったのに、スカウトされて入ったアイドル事務所で再会してしまう。さらに、最悪なことに同じグループでデビューすることになってしまったのだった。
十夜は僕より背が高く、イケメンで頭もいい。その上スポーツ万能で歌もダンスも上手くて、僕よりファンも多い。
子供の頃から、コイツにだけは負けまいと頑張ってきたけど、結局一度も勝てなかった。だから、僕はコイツをライバル視しているのだ。
まあ、実は努力家なところとか、ちょっとだけ尊敬している部分もあるけど、本人には絶対に言ってやらない。
そう思っていることに気づかれたくなくて冷たく当たってしまい、結局ケンカばかりしている。

「ほらほら、二人とも、今日は雑誌の取材も来てるんだから、喧嘩しないでよ~」
爽やかな笑顔で僕らをたしなめてきたのは、緋月ひづきしょう。センターを務める、グループのリーダーだ。
優しくて穏やかで面倒見が良い。でも、実は怒ると超怖い。このグループの中で一番怒らせてはいけない人物である。

「そうだぞ、仲良くしろよ」
そう言って僕らの肩に手を置いたのは藍田あいだ 壮太そうた。頼りになる兄貴的存在だ。
高校まで柔道をしていたらしく、体つきがガッチリしている。ちょっと強面だけど整った顔をしていて、その男らしい性格から、女性ファンだけでなく男性からも人気がある。

「全く……毎日よく飽きないな」
呆れながら呟いたのは紫城しじょう れん。クールな性格であまり笑わない。でも時々見せる微笑みが魅力的で、コアなファンが多い。

そう、僕達の名字は、白、黒、緋、藍、紫……みんな色が関連している。何を隠そう、名字に色が付くというだけで組まされたグループなのだ。色のイメージでグッズも作りやすいとか何とか……。
さらに、十夜と僕は黒と白で、名前も闇と光っぽさがあってよく対にされている。

「光輝、最初は俺とお前の撮影だろ?早く行くぞ」
十夜に急かされ、僕は渋々立ち上がった。
今日は、来月リリースする新曲CDのジャケット撮影なのだ。前回のCDジャケットはかなり評判が良かったようで、今回も期待されている。中でも、僕と十夜のツーショットが大反響だったとかで、今回も二人の別撮りがあるのだ。

スタジオに入ると、既にカメラマンやスタッフ達がスタンバイしていた。挨拶をして、早速撮影がスタートする。
「じゃあ十夜君、光輝君、並んでみようか」
カメラの前に二人で並び、ポーズを取る。何度もシャッター音が鳴り響いたが、なかなか良い写真にならないのか、カメラマンの男性は難しい表情を浮かべていた。
「う~ん……何か違うんだよねえ……二人とももう少し近づいてみてもらえるかな?」
すると、十夜は無言のまま僕の方に近付いてくる。その時、ふわりと香水の香りがした。爽やかで甘い、柑橘系の匂い。
……あれ?何だ?妙に落ち着かない気分になってしまう。
何とか平静を装っていたが、いつの間にか十夜の吐息を感じるくらいの距離にまでなっていた。
(ち、近い!近い!)
心臓が激しく高鳴るのを感じて、必死に落ち着こうとする。
(いやいや、相手は十夜だぞ……!なんでドキドキしてるんだ……しっかりしろ、僕……!)
自分に言い聞かせるように心の中で叫んだ。しかし、真剣な眼差しの十夜と目が合って、顔が熱くなっていく。
その瞬間、十夜はニヤリと笑いながら僕の頬に触れた。
「なっ……!?」
ビックリして抵抗しようとすると、耳元で囁かれた。
「動くなよ」
いつもとは違う低い声にビクッとすると同時に、全身に電気が流れたような感覚に襲われる。
(だ、ダメだ……!何だか僕おかしい……何とかしないと……)
混乱しながらも考えを巡らせていると、十夜が僕の首筋に顔を近づけた。
「ぅひゃっ!?」
僕が素っ頓狂な声を上げると同時に、カメラマンの声が響く。
「はい、オッケー!いいね、凄くセクシーな雰囲気が出てたよ!」
「キャー!さすが幼馴染コンビ!」
女性スタッフの黄色い声が遠くで聞こえる中、僕は頭が真っ白になったまま立ち尽くしていた。
(え……?何、今の……)
今、一体何が起きたのか。首に触れた、柔らかいあの感触は――。
(今コイツ……、僕に、キ、キ、キスしなかったか!?)
間違いない。コイツの唇が僕の首筋に触れていたのだ。
「お、お、お前……今……」
動揺して上手く言葉が出てこない。そんな僕を見て、十夜は意地悪そうな笑みを浮かべている。
「お前が悪いんだからな。あんな反応するから……」
「はあ!?どういうことだよ!」
意味がわからず問い詰めようとした時、誰かに肩を叩かれる。振り向くと、翔が立っていた。
「はいはい、そこまでだよ。続きは後にしてね」
翔の言葉を聞いた十夜は舌打ちをし、さっさと離れていく。

混乱したまま撮影は続き、しばらくして休憩時間となった。
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