ゲームの世界に転移したら美形王子に溺愛されてるんですが!?

krm

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18.心細いんですが!?

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どのくらい時間が経ったのだろうか。目が覚めると、見知らぬ場所にいた。
「ここは……?」
俺は不安になって周囲を確認する。目の前には鉄格子があり、外に出ることはできない。
鉄格子の向こうには扉があり、部屋の中に檻がある構造のようだ。
「どうやら閉じ込められているみたいだな……」
俺は自分の状況を理解する。

しばらくすると、部屋の扉が開いて誰か入ってきた。
「やっと起きたようだな」
「お前は誰だ!」
「オレか?オレは魔王様の直属の部下、ラウルというものだ」
魔王の配下を名乗る男は、黒いローブを着ており、顔を隠している。その声から男だということが分かった。
「魔王軍が俺をさらった理由はなんだ?」
俺は疑問に思っていたことを口にする。
「貴様に人質となってもらうためだ」
「人質だって?」
「そうだ……。お前には重要な役目がある」
「一体何をさせるつもりだ……?」
「その時になれば分かる……。それまでは大人しくしているのだな……」
「ふざけるな!ここから出せ!」
俺は怒って叫ぶが、相手は冷静な口調で続けた。
「悪いがそれはできない……。魔王様の命令なのでな……」
「魔王がなぜ俺を人質にするんだ?」
「それも教えられない……」
「魔王はどこにいるんだ?」
「それを教えることはできない……。もう少ししたら会えるだろう……。その時まではここで待機していろ……」
「おい、ちょっと待てよ!」
俺の言葉を無視して、ラウルと名乗る男は立ち去っていった。

「くそっ……なんなんだよ……」
俺は苛立っていた。訳も分からないままこんなところに閉じ込められてしまうなんて……。
これから俺はどうなるのだろう……。不安な気持ちのまま、俺は考え込む。

ゲームの中では、ドラゴンにお姫様がさらわれて、それを主人公である勇者が助けに行くという話だったはずだ。
それなのに、なぜか俺がさらわれてしまった。これはいったいどういうことなのか……。
もしかすると、俺が王子と恋人(お試し)になったことで、変わってしまったのだろうか。
アルベール王子と結婚するはずだったお姫様の代わりに、現在王子の恋人(お試し)の俺がさらわれたと考えられる。(誰が何と言おうとまだお試しだからな……!)

しかし、そうなってくると、この場合に勇者は俺を助けてくれるのだろうか……。
そもそも魔王が復活したばかりで、勇者がまだ現れていない可能性もある。
「あれ……?これまさか、誰も助けに来てくれないんじゃ……」
そうなったら、自力でここから脱出しなければいけないということだ。
しかし、どう頑張っても俺の力では頑丈な檻から出られそうにない。
「あの魔王の部下が言っていたように、魔王に会うまで待つしかないか……」
とりあえず、しばらく様子を見るしかないだろう。
トイレと水道と簡単な寝床は用意されているようなので、しばらく暮らすことはできそうだ。俺はひとまず安心する。
「とりあえずは、おとなしくしていよう……」
俺はそう思いながら、ベッドの上で横になった。すると、すぐに眠気が襲ってくる。
「今日は色々あって疲れたからな……」
俺はそのまま眠ることにした。

次の日の朝起きると、鉄格子の前に食事が置いてあった。
「これを食べろということか……」
俺は警戒しながら少しずつパンとスープを食べてみる。どうやら毒は入ってなさそうだ。味はそれほど悪くなかった。
「まぁ、食料もあるみたいだし、しばらくは大丈夫か……」
俺はホッとする。
しかし、もしさらわれたのがお姫様だったら、こんなところで生活するのは大変だったろうなと思う。
さらわれたのが俺で良かったと思うべきか……。
幸い、回復魔法を使うことができるので、体力的な面は問題ない。だが、精神的な苦痛は大きかった。
最低限生きることは出来るとはいえ、自由に外に出ることはできない。
それに、いつまでここにいれば良いのかも分からず、気が滅入ってしまう。
「これからどうなるんだ……」
俺は不安になる。
もしかしたら、このまま殺される可能性だってあるかもしれない。元の世界に戻るどころか、死ぬなんてことになったら最悪だ。
そんなことを考えると、恐怖を感じずにはいられなかった。
「なんとか脱出できないかな……」
俺は部屋を調べてみる。だが、特に変わったものはなかった。
「ダメか……。せめて窓があれば外が見えるんだけどな……」
俺は落胆し、ベッドの上に座ったまま天井を見上げる。

「王子……」

俺は王子のことを思い浮かべた。
この状況で思い出すのは、元の世界の家族や友人ではなく、王子だったのだ。

最後に聞いた王子の悲痛な叫びを思い出すと、胸の奥が締め付けられるような感覚に襲われる。きっと、ものすごく心配していることだろう。
「王子に会いたい……」
こんなことになるなら、もっと王子と仲良くなっておくべきだったと後悔していた。
恋人とはいえまだお試しだから……と親密になりすぎるのを避けていたことを悔やむ。
十分親密なこともしていたといえばしていたけれど。
でも、まだ、俺は王子に抱かれていない。最後まではシていなかったのだ。
こんな時だというのに、王子の温もりを思い出して興奮しそうになる自分に呆れてしまった。
「ははは……。俺って意外と性欲強かったんだな……」
俺は苦笑いを浮かべる。
でも、このまま二度と王子に会えない可能性だってあるのだ。そんなことを考えると、涙が出てくる。
「うぅ……嫌だよぉ……」
もう会えないかもしれないと思うと、涙が止まらなかった。
「うぅ……せめて王子の顔だけでも見たい……。もう一度会いたいよ……」
泣きながらそう呟いた時、部屋の外から騒がしい音が聞こえて来た。
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