上 下
62 / 329
第2章

なんだかこういう話聞いてると胸がキュンキュンするよね!

しおりを挟む
 「入っていきなりだけど、全然歯ごたえないね。」

 「油断は禁物だぞ。いきなりジーカのような厄介なやつが襲ってくるかもしれんからな。」

 リーノはディランにそういわれるものの、はいはいと手をひらひらさせただけであまりまともに取り合わない。

 しかし眼だけは絶えず動かして周囲を観察しているあたり、言われなくてもわかってるってことなのかな。

 今は例え入り口に近いところであっても油断できないのは事実だし、洞窟は様々に枝分かれしているから思わぬところから思わぬ敵が出てきてもおかしくない。

 ドルン山脈にはその内部に入るための洞窟の入り口が数多くあり、たまに洞窟内にいないはずのモンスターも迷い込んでくる場合があるとか。

 その時は本当に稀だけど山頂付近にいるような強力なモンスターとも出くわす場合があり、洞窟内のモンスターと出くわすよりよほど運が悪いということもあったりする。

 そんな場所で油断するほどリーノも甘くはない。

 私たちはそんなリーノよりもむしろポートとメイリーンさんのほうがよほど心配である。

 何せ戦闘中でも互いを意識しているせいか注意が散漫になっていた。戦闘中に反応が遅れていたのはこの二人だけだったし。

 それでもやることはきっちりとこなしているうところがこの人たちの実力とも取れるわけだけど、それでもこの先もっと危険な場面に出くわすだろうし、早いとこ集中してほしい気がするんだけど・・・。

 (ディランたちも気づいてるはずだけどなんで集中するように言わないのかな?)

 (言いづらいことなんじゃない?)

 確かに男女関係のことに口を挟むのは難しいことだけど、それでも危険な場所にいるんだからそこはぐっとこらえてって思うんだけどな。

 聞いてみようかな?

 (余計なお世話だと思うけどな~。)

 美景は反対らしいけど止めはしないのでとりあえずルーナにポートとメイリーンさんのことについて聞いてみた。

 「どうしましたか?」

 『ポートとメイリーンさんにもっと集中するように言ったほうがいいのでは?』

 私が差し出した紙に書かれた文章を読んで少し考えるルーナ。

 そして私たちが入った鞄を少し持ち上げ、抱え込むようにすると小声で答えてくれた。

 「ポートは一度メイリーンにプロポーズをしたのですが、メイリーンがその時にかなり動揺して思ってもいないことをズバズバと言いまくってしまい、そのせいでポートはメイリーンに対してかなり怒ったらしいのです。」

 なんと!

 まさか結婚の申し出までしてたの!?

 あのポートが!?

 それでメイリーンさんが断るだけじゃなくて悪口まで吐いちゃったってことかな?

 それでポートはいつも不機嫌になっていると。

 でも、メイリーンさんはどちらかというとポートが気になってしょうがないみたいに見えるけど・・・なんで?

 「それで、ここからが口を出しづらいところなのですが。実はメイリーンはポートをむしろ好ましく思っていたらしく、しかし急に向こうからプロポーズしてきたことに気が動転して自分の気持ちと真逆のことを言ってしまったらしいのです。」

 そ、それは・・・なんだかポートかわいそうだな。

 「今では水と油のように弾きあっているように見えますが、実はポートもまだメイリーンのことが好きらしいので、水面下では両思いとなっているのです。」

 (うえ?それってつまりどういうこと?)

 (つまり二人とも好き同士なんだけど、過去のことが原因で互いに本音を言えずに反発しあっているような態度をとってしまうってことなんじゃない?)

 なんか青春してるな~。

 前世の私の100倍は青春してるよ。

 (せめて50倍じゃない?)

 (50歩100歩って言葉を知らない美景さんじゃないでしょう?)

 「そして、このことについては私たちも全て把握しており、ゆえにどう注意したものか頭を悩ませているのです。幸い最低限の注意をはらい、いざとなれば問題なく連携してくれるので問題ないと言えば問題ないのですが。」

 なるほどね~。

 みんなはこのことに知っているし、いざとなればちゃんとしてくれるからいまいち踏み込んで口出しにくいと。

 まあ長い間一緒にいるみんなが大丈夫だと思ってるならそれで良いのかな?

 (やっぱり余計なお世話だったでしょ?)

 美景のドヤ顔が眼に浮かぶようだ。

 とりあえずスルーして、再度ポートとメイリーンさんを見る。

 確かにポートもメイリーンさんの方を一切見ないのは意固地になっていると捉えることもできるし、メイリーンさんはポートを見る時ちょっとしょんぼりしているというか熱っぽいというか女の子というか。

 ここがライトや魔法の光がなかったら何も見えないような真っ暗お化け屋敷みたいな場所じゃなくて学校の廊下とかだったら、きっと青春漫画の1ページに見えたことだろう。

 美男美女だしね。

 そんな二人の甘酸っぱい態度をほのぼのと観賞していると、またモンスターがやってきた。 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたので暗殺される前に国を出ます。

なつめ猫
ファンタジー
公爵家令嬢のアリーシャは、我儘で傲慢な妹のアンネに婚約者であるカイル王太子を寝取られ学院卒業パーティの席で婚約破棄されてしまう。 そして失意の内に王都を去ったアリーシャは行方不明になってしまう。 そんなアリーシャをラッセル王国は、総力を挙げて捜索するが何の成果も得られずに頓挫してしまうのであった。 彼女――、アリーシャには王国の重鎮しか知らない才能があった。 それは、世界でも稀な大魔導士と、世界で唯一の聖女としての力が備わっていた事であった。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

余命半年のはずが?異世界生活始めます

ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明… 不運が重なり、途方に暮れていると… 確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。

処理中です...