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第2章

連合

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 「お?なんか変な奴が近づいてるな。」

 街の外壁付近にある林の中。そこに居を構える一人の青年が、庭に置いたベンチに腰を掛け、コーヒーに近い飲み物であるルーノアを飲んでいたとき、不思議な気配を帯びた何かがこの街に近づいてきている気配を察知した。

 青年はルーノアを入れた木造のコップをベンチの正面に設置してある円形の机に置き、静かに立ち上がった。

 「変な奴?もしかして仲間?」

 青年の正面のベンチで寛いでいた少女が眠たい目をこすりながら問う。

 「いや、どうだろうな。人の気配って感じじゃないし。でも俺らに近い感じがする。俺も初めて感じる気配だ。」

 青年は来ている黒い革服のポケットから通信機を取り出し、魔力を込める。

 「こちら、ショープ東門担当の赤木直人。至急、ギルマスに報告があるんだが、取り次いでもらえるか?」

 『承りました。少々お待ちください。』

 通信機の向こう側にいる通信交換係の女性が丁寧に対応した後、しばらくして違う通信機とつながる合図を鳴らす。

 『こちら、アース連合本部のギルドマスター・ジョー=フォスターだ。どうした直人。また女でも連れ込んだのか?』

 「俺がいつ女を連れ込んだよ。前例があるようなこと言ってんじゃねえ。」

 通信相手はジョーに代わり、いつも通りの軽口をたたきあう二人。

 「今日はいつもみたいに気楽な話をしようってわけじゃないんだ。真面目に聞いてくれ。」

 『俺がいつも真面目じゃないみたいな言い方してんじゃねーよ。で?何があった?』

 軽い冗談を挟みつつさっさと本題に入ろうとする直人は、ジョーもその気になったところでさっき感じた気配について説明した。

 『ほう。なるほどな。それはイレギュラーかもしれん。こっちも多方面からまれにそういった報告を少なからず受けている。ただまだ接触はできずにいるもんだから真相を解明できないでいたところだ。』

 「そんなに報告が上がってるんなら一人くらい捕まらないのか?」

 『向こうがよほど警戒しているのか、そもそももう死んでるのか。いずれにせよ捕まらないってことはなにかそういう要因があるってことだ。』

 ジョーはため息交じりにそう言った。

 人は出せるだけ出している。しかしその出せる人数もそれほど多くない上に、主要メンバーは各都市に配置しているおかげで割いている人材はそれほど優秀なものではない。

 ゆえに手詰まりの感が否めないところであった。

 「なら、こっちに近づいている奴はほっとけないよな。」

 『ああ。だが向こうも向こうの事情がある。それに本当に仲間なのかどうかもわからない。すぐに接触せず、様子を見つつ行動してくれ。』

 「了解だ。報告は以上だ。」

 『そうか。くれぐれも問題行動は避けろよ。』

 「わかってるよ。」

 直人は通信を終了して通信機をポケットにしまう。

 「しかし、遅れてきた転生者ですか。各地でもちらほらとみられるようになっているということは、また何かよからぬことが起こっていると見たほうがいいでしょうね。」

 少女は小さく伸びをして眠気を覚まさせると、ベンチから立ち上がって近くにあった木に向かって歩き出す。

 「確かにな。あれから20年。もうすっかり平和になっちまったが、ここにきてまた雲が出てきやがったか。アリア。今日の晩飯は?」

 直人はアリアとは反対に家の玄関のほうに向かいながら聞いてみる。

 直後に動物の叫び声が聞こえ、すぐにそれはこと切れた。

 「ウサギのシチューにしようかと思います。最近トラとか狼みたいな肉食獣の肉ばかりだったのでちょうどよかったです。」

 アリアはその端正な顔に赤い雫したたらせて、ウサギのような魔物をその手にるんるんと家に戻っていった。

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