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第1章
お説教タイム・・・
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「魔法を使うスライムなんて初めて見たぜ。」
「威力はそれほどでもないが、大した魔法だ。こっちに吹っ飛んできた時はさっきと同じようにしてより威力を高めた魔法だった。あれなら俺も怪我くらいはするかもな。」
おうっとディランさんそれはマジですか?
あの破壊力抜群に見える射出を受けて怪我程度で済むと?
やっぱりこの世界の人は耐久力が桁外れなのだろうか。
でも確かにディランは目にもとまらぬスピードで岩に激突しても無傷どころか意識を失うこともなかったほどの頑丈さだったから、私たちの魔法の直撃を受けても少し傷つけるくらいしかできないかも。
「ライム。その魔法はいったいどこで覚えたのですか?それにその形態。魔力はどれほどあるのですか?魔法理論は?属性は?最大火力は?調整の幅は?応用は効きますか?先ほどの魔法の反動は?構成は?」
前回と同じくルーナが質問攻めにしてきたが、やはり教える手段がないのでまたもなすが儘になる私たち。
それを見るに見かねたディランがまたも制してくれる。
それでいったん落ち着いたルーナは再度私たちに向き直ると、今度は少しキッとした表情で私たちをにらむ。
「魔法のことはひとまず置いておくとして。ライム。なぜ野営地点の外に出ていたのですか?それもあんなに遠くに。私は昨日も一昨日も言っていましたよね?外は危険なので出ないようにと。あなたの様子を見る限り、今日が初めてということでもないようですね。ということは私たちが寝ている間ずっと隠れて外に出ていたということになります。どうして外に出て行ったのですか?」
すごく怒ってらっしゃる。あの私たちを抱きしめては頬を緩めていたルーナが激怒していらっしゃる!
私たちはガクブルしながらルーナの睨みに恐怖していた。
するとルーナはすごく寂しいような悲しいような表情をしながら私たちを抱きしめた。
「あまり心配させないでください。あなたは私たちの仲間です。そして友人です。私は家族とさえ思っています。」
その言葉を聞いて、不意に心が温かくなった。
ルーナは、出会ってまだ3日ほどしかたっていない、それもスライムである私たちを家族と言ってくれた。それだけで何を伝えようとしているのかがうっすらと分かってしまった。
「そんなあなたが危険な目にあっているかもと頭をよぎるとどれほど心配になるか。あなたにはわかりますか?これまでモンスターとして生きてきたのかもしれません。一匹で生きてきていたのかもしれません。だから誰かが心配しているなんて夢にも思わなかったのかもしれません。」
ルーナの抱きかかえる力に熱がこもり、こみ上げてくる感情が伝わってくるようだった。
ちょうど、美景と私が意識の中で喧嘩をしていた時のように。
けれどルーナとはそこまでつながっていない。長く付き合っていたわけでもない。
なのになぜだかルーナの気持ちが痛いほどに、苦しいほどに、悲しいほどに伝わってきた。
「けれど、今はあなたを心配する人がいる。あなたが傷つけばつらい人がいる。あなたが死ねば悲しむ人がいる。そのことをわかってください。」
私たちを抱きしめる腕の力がほんの少しずつ緩んでいく。
しかし今度は私たちがルーナをひしと掴む。
ユミルンのその小さい手で、しかし懸命に掴み、胸に顔をうずめる。
人の温もり。それは前世でさえもこれほどまでに感じなかった。
この世界よりも平和で、両親がちゃんといて、周りに友人もいて、自分たちを見てくれる先生や先輩もいて。
そんな多くの人に囲まれていたあの時でさえ感じることのなかったほどの温かさを、出会ってまだ数日の人から感じるなんて。
あの浜辺を発つ時に挙げた理由。その中には人と触れ合いたいというものもあった。
けれどもそれはただ寂しさを紛らわせたかったというだけのものだった。
しかしそれは、本当はそれだけじゃないということに今気づいた。
前世でも得られなかったものを、この突拍子もない今世に求めていたのだ。
スライムになってしまった私たち。人からかけ離れ、もはや温度を感じることもなく、声を発することもできなくなった私たち。
それでも今まで感じたことのないほど心地よく、温かいものを感じ、今まで上げたことのないほど大きな泣き声を、心の中で、知らず知らずのうちにあげていたのだった。
ルーナを掴んで離さず、ルーナもそんな私のことを察して抱えなおしてしばらくたった。
いつの間にか周りにもレナとディランとポートが、ルーナが抱える私を囲んで微笑みを浮かべていた。
「まあ、家族とまでは言わないが、俺も仲間だとは思っている。友人とまではいかないが、やっぱり何かあれば心配もするだろうしな。」
「そうそう。それに隠し事されたのも地味にショックだよなー。俺たちそんなに信用ならない?」
「まだ出会って間もないけど、ライムちゃんは一緒にご飯を食べた仲間だからね。ほら、同じ釜の飯を食べた仲っていうじゃない。」
ディランは照れながらそう言い、ポートは肩をすくめてそんなことを言い、レナは私たちをなでながらそう言ってくれた。
顔を上げてみんなを見る。そして私たちは、ユミルンの口を開いて、力の限りを振り絞り、訓練の成果を見せようとした。
「あ・・り・・・が・・と・・う。」
すごくたどたどしく、そして奇妙な声が発せられた。
いろいろ考えて、今ここで生まれて初めて人に話す言葉は、感謝の言葉だった。
その一言は多くの意味を含む。
怒ってくれてありがとう。心配してくれてありがとう。家族と言ってくれてありがとう。ご飯を作ってくれてありがとう。
そして、出会ってくれてありがとう。
もしも彼らに出会わなければ、もしかしたらモンスターに食べられていたかもしれない。ほかの冒険者に倒されていたかもしれない。
そう考えると、彼らと出会えたことはとても幸運だったと感じた
結果。感謝の言葉しか出てこなかった。
私の声を聞いて驚いた4人は、けれどそれよりもうれしさが勝ったのだろうか。
私たちの頭をなでたり、ほほをつついたりする違いはあるけれど、みんな総じて、笑顔だった。
「威力はそれほどでもないが、大した魔法だ。こっちに吹っ飛んできた時はさっきと同じようにしてより威力を高めた魔法だった。あれなら俺も怪我くらいはするかもな。」
おうっとディランさんそれはマジですか?
あの破壊力抜群に見える射出を受けて怪我程度で済むと?
やっぱりこの世界の人は耐久力が桁外れなのだろうか。
でも確かにディランは目にもとまらぬスピードで岩に激突しても無傷どころか意識を失うこともなかったほどの頑丈さだったから、私たちの魔法の直撃を受けても少し傷つけるくらいしかできないかも。
「ライム。その魔法はいったいどこで覚えたのですか?それにその形態。魔力はどれほどあるのですか?魔法理論は?属性は?最大火力は?調整の幅は?応用は効きますか?先ほどの魔法の反動は?構成は?」
前回と同じくルーナが質問攻めにしてきたが、やはり教える手段がないのでまたもなすが儘になる私たち。
それを見るに見かねたディランがまたも制してくれる。
それでいったん落ち着いたルーナは再度私たちに向き直ると、今度は少しキッとした表情で私たちをにらむ。
「魔法のことはひとまず置いておくとして。ライム。なぜ野営地点の外に出ていたのですか?それもあんなに遠くに。私は昨日も一昨日も言っていましたよね?外は危険なので出ないようにと。あなたの様子を見る限り、今日が初めてということでもないようですね。ということは私たちが寝ている間ずっと隠れて外に出ていたということになります。どうして外に出て行ったのですか?」
すごく怒ってらっしゃる。あの私たちを抱きしめては頬を緩めていたルーナが激怒していらっしゃる!
私たちはガクブルしながらルーナの睨みに恐怖していた。
するとルーナはすごく寂しいような悲しいような表情をしながら私たちを抱きしめた。
「あまり心配させないでください。あなたは私たちの仲間です。そして友人です。私は家族とさえ思っています。」
その言葉を聞いて、不意に心が温かくなった。
ルーナは、出会ってまだ3日ほどしかたっていない、それもスライムである私たちを家族と言ってくれた。それだけで何を伝えようとしているのかがうっすらと分かってしまった。
「そんなあなたが危険な目にあっているかもと頭をよぎるとどれほど心配になるか。あなたにはわかりますか?これまでモンスターとして生きてきたのかもしれません。一匹で生きてきていたのかもしれません。だから誰かが心配しているなんて夢にも思わなかったのかもしれません。」
ルーナの抱きかかえる力に熱がこもり、こみ上げてくる感情が伝わってくるようだった。
ちょうど、美景と私が意識の中で喧嘩をしていた時のように。
けれどルーナとはそこまでつながっていない。長く付き合っていたわけでもない。
なのになぜだかルーナの気持ちが痛いほどに、苦しいほどに、悲しいほどに伝わってきた。
「けれど、今はあなたを心配する人がいる。あなたが傷つけばつらい人がいる。あなたが死ねば悲しむ人がいる。そのことをわかってください。」
私たちを抱きしめる腕の力がほんの少しずつ緩んでいく。
しかし今度は私たちがルーナをひしと掴む。
ユミルンのその小さい手で、しかし懸命に掴み、胸に顔をうずめる。
人の温もり。それは前世でさえもこれほどまでに感じなかった。
この世界よりも平和で、両親がちゃんといて、周りに友人もいて、自分たちを見てくれる先生や先輩もいて。
そんな多くの人に囲まれていたあの時でさえ感じることのなかったほどの温かさを、出会ってまだ数日の人から感じるなんて。
あの浜辺を発つ時に挙げた理由。その中には人と触れ合いたいというものもあった。
けれどもそれはただ寂しさを紛らわせたかったというだけのものだった。
しかしそれは、本当はそれだけじゃないということに今気づいた。
前世でも得られなかったものを、この突拍子もない今世に求めていたのだ。
スライムになってしまった私たち。人からかけ離れ、もはや温度を感じることもなく、声を発することもできなくなった私たち。
それでも今まで感じたことのないほど心地よく、温かいものを感じ、今まで上げたことのないほど大きな泣き声を、心の中で、知らず知らずのうちにあげていたのだった。
ルーナを掴んで離さず、ルーナもそんな私のことを察して抱えなおしてしばらくたった。
いつの間にか周りにもレナとディランとポートが、ルーナが抱える私を囲んで微笑みを浮かべていた。
「まあ、家族とまでは言わないが、俺も仲間だとは思っている。友人とまではいかないが、やっぱり何かあれば心配もするだろうしな。」
「そうそう。それに隠し事されたのも地味にショックだよなー。俺たちそんなに信用ならない?」
「まだ出会って間もないけど、ライムちゃんは一緒にご飯を食べた仲間だからね。ほら、同じ釜の飯を食べた仲っていうじゃない。」
ディランは照れながらそう言い、ポートは肩をすくめてそんなことを言い、レナは私たちをなでながらそう言ってくれた。
顔を上げてみんなを見る。そして私たちは、ユミルンの口を開いて、力の限りを振り絞り、訓練の成果を見せようとした。
「あ・・り・・・が・・と・・う。」
すごくたどたどしく、そして奇妙な声が発せられた。
いろいろ考えて、今ここで生まれて初めて人に話す言葉は、感謝の言葉だった。
その一言は多くの意味を含む。
怒ってくれてありがとう。心配してくれてありがとう。家族と言ってくれてありがとう。ご飯を作ってくれてありがとう。
そして、出会ってくれてありがとう。
もしも彼らに出会わなければ、もしかしたらモンスターに食べられていたかもしれない。ほかの冒険者に倒されていたかもしれない。
そう考えると、彼らと出会えたことはとても幸運だったと感じた
結果。感謝の言葉しか出てこなかった。
私の声を聞いて驚いた4人は、けれどそれよりもうれしさが勝ったのだろうか。
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