魔力は最強だが魔法が使えぬ残念王子の転生者、宇宙船を得てスペオペ世界で個人事業主になる。

なつきコイン

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第三部 帝国編

第158話 昔々園長は、遊星ドラゴンパーク

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「大変です! 園長!」
「どうした、そんなに慌てて? また、ドラゴン同士の喧嘩か?」

 俺様は、ここ、遊星ドラゴンパークの園長、最高責任者だ。
 遊星ドラゴンパークは、自然の中でドラゴンとの触れ合いを楽しめるテーマパークだ。
 星全体が広大な森林に覆われていて、そこでドラゴンたちが昔ながらの生活を送っている。
 ヒトが来て楽しむだけでなく、少なくなったドラゴンの保護も兼ねている。

「この遊星の進行方向に、新しいゲートを発見しました!」
「なんだと、新しいゲートだと! でかした! その情報を航宙管理局に売ればかなりの金になるぞ」

「それが、それどころではありません!」
「それどころではない?」

「このまま進むと、この遊星はゲートに飲み込まれてしまいます」
「そんな馬鹿な。その軌道計算は間違いないのか!」

「残念ながら、間違いありません!」

 遊星ドラゴンパークは、惑星でありながら、一つの星系に捉われず、さまざまな星系を渡り歩く、変わり種の星であった。
 そうなってしまった原因が、核廃棄物の爆発なのか、暗黒星に引きずられているからなのかはわかっていない。
 一説には、重力でなく魔力に引っ張られているのではないか、という説もある。

 原因は兎も角、様々な星系を渡り歩くことにより、テーマパークに常に新しい客を呼び込めるという、利点があった。
 その一方で、大きな問題点もあった。それは、惑星の進路を自分たちで決められないということだ。

 ドラゴンの魔力を持ってしても、惑星の軌道を変更することはできなかった。

「遊星がゲートに飲み込まれるまでに、どの程度猶予がある?」
「一年ちょうどになります」

「そうか、急いでドラゴン全員の退避を進めよう」
「みんな、住みなれたこの遊星を離れてくれるでしょうか?」

「俺様だって、この遊星を離れたくないが、ゲートに飲み込まれれば、ドラゴンといえ無事ではすまないだろう。生き残るためには、この遊星を離れるしかない」
「そうですね。私は脱出計画を作成します」

「俺様は、みんなに説明してくることにしよう」

 それからの一年は、大忙しの一年だった。
 移民船を用意して、受け入れ先を探し、そこに移住させる。中には脱出を拒む者もいて、説得が大変だった。

「これで、全員のドラゴンが脱出しましたね」
「ああ、慌ただしい一年だった……」

「それじゃあ、私たちも退避しましょう」
「そうだな、お前はもう行ってくれ。俺様はここに残る」

「何を言ってるんです、園長?!」
「俺様はここに残って、遊星ドラゴンパークの最後を見届けるよ」

「それなら私も一緒に」
「いや、ヒトの俺様はもうすぐ寿命だ。それに比べて、お前はまだ若い。それに、貴重なドラゴンだ。これからはお前が、仲間のドラゴンを守り、そして、ヒトとドラゴンの掛橋になってくれ」

「園長……」
「なに、もしかしたら、シールドが効いているうちに、反対側のゲートから出られるかもしれない。そうなれば、また、遊星ドラゴンパークを始められる」

「……。そうですね。いっそ今度は、戦闘アトラクションにしてはどうですか?」
「うむ、そうだな。なら、名前はドラゴン帝国にしなければならんな」

「ドラゴン帝国ですか。いいですね」
「名残惜しいが、もう時間だ。お前はもう行け」

「園長……」
「後のことは任せたぞ。しかりやれ!」

「わかりました。では、お達者で、今までありがとうございました」

 アシスタントをしていたドラゴンが、遊星を離れてさほどせず、遊星ドラゴンパークはゲートに飲まれた。

 とりあえず、ゲートの中に入っても、シールドが有れば大丈夫なようだ。
 だが、シールドを張る魔力は、無限にあるわけではない。
 今は、ドラゴンたちが満タンに充填していったから問題ないが、いつかは魔力も切れる。

 それまでにゲートの出口にたどり着くのは不可能だろう。

 そうなれば、この遊星ドラゴンパークは崩れ去り、俺様もここで死ぬことになるだろう。

「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ!」

 俺様は咳き込み、口から血を吐く。
 どうやら、シールドより先に俺の命が尽きるようだ。

 俺様の身体は既に限界を超えていた。身体強化の魔法を使っても、ドラゴン同士の喧嘩の仲裁に入るのは無理があった。
 あいつら、手加減というのを知らなすぎる。

 何度も、ドラゴンブレスを受けた結果、医者から一年前に余命半年と言われていた。それなのに、既に一年生き延びている。あのヤブ医者め!
 だが、それも限界のようだ。

 生前に良いことをすれば、転生できると聞いたことがある……。
 俺様がドラゴンを保護していたことが、良いことだったなら転生できるだろうか?

 転生するとしたら、今度は、最強になりたいものだな……。

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