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第三部 帝国編

第148話 帝王

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 どうやら、ドラゴンの住まいは、崖に作った洞窟のようだ。

 帝王に会うために、セキドラに連れられてやってきたのは、切り立った崖の壁面に、無数に穴が開けられている場所だった。

 穴は、奥に続く洞窟になっていて、その洞窟の一つに帝王がいるのだろう。

 案の定セキドラは俺たちを一番上の洞窟に案内した。

「お父様、お母様」
 竜姫が待ちきれずに走り出した。

『竜姫! どうしてここに?』
『無事だったのですね。よかったわ』

「お父様、お母様!」

 涙の再会になるかと思ったが、そうはならなかった。

「なんで二人とも裸なのですか! 特にお母様、女性として、恥ずかしくないのですか!!」
『そういわれてもね。ここにはドラゴンしかいないし。あれ、そちらのお方は?』

「竜姫様の依頼で助けに来た、セイヤといいます」
「キャー! セイヤ様、なんでお母様の裸を見てるんですか!!!」

 竜姫の平手打ちが、俺の頬に炸裂した。
 流石はドラゴン。人型でもヒトを遥かに超えるパワーだ。
 シールドがあるのにも関わらず、俺は洞窟の壁まで叩き飛ばされた。
 シールドのおかげで無傷だったが、シールドがなければただでは済まなかっただろう。

「キャプテン、大丈夫?」
 チハルが心配して、様子を見に来た。

『大丈夫ですか?』
 竜姫の母親のドラゴンもこちらを気にしている。

「お母様! 心配などしていないで早く人型になって!」

 竜姫の俺の扱いが酷すぎる。

 竜姫にせっつかれて、帝王と王妃が人型に姿を変える。

「先程は娘が大変失礼した」
「怪我はしていませんし、気にしないでください」

「うむ、そうか。して、セイヤといったか? 娘の依頼で助けに来てくれたそうだが」
「はい、M4要塞を持ってきていますので、全員でこの星を出られると思いますが」

「M4要塞をの……。ちなみに、娘に依頼されたのはどこまでだ?」
「皆様をこの星から助け出すまでですね。まあ、実際にはゲートを抜けないことには、現状と変わらないでしょうから、助け出したといえないかもしれませんので、ゲートを抜けるまででしょうか」

 そう、ゲートを抜けるまでだ。その先、帝都に戻ろうとも、ドラゴンパーク星に行こうとも、好きにすればいい。

「その先は好きにしろということか。では、報酬は帝国を支配することではないのだな?」
「そんな面倒なことは、ごめん被ります!」

「お父様、セイヤ様は皇王です」
「なに、本物の皇王なのか? つまり、帝国を支配したいなら、わざわざ我らを助けなくても、直接捻り潰した方が面倒がないということだな?」

 いや、そんなこと言ってないけど。

「依頼の報酬は、ドラゴンパーク星の場所を教えてもらうことなのですが」
「ドラゴンパーク星の場所だと、それを知ってどうする?!」

「うちの星のドラゴンが、嫁を探してまして。そのために、ドラゴンパーク星に連れて行こうかと」
「うむ、そうか。ドラゴンパーク星か……。確かに我らは、ドラゴンパーク星から帝都に移り住んだのだが、困ったの……。ドラゴンパーク星の場所を覚えておらん!」

 ブルドラといい、帝王といい、ドラゴンは記憶力がないのか。
 折角ここまで来たのに、全くの無駄骨か。

「そうですか……」
「いや、待て!」

 いや、そんなに慌てなくても大丈夫ですよ。依頼の報酬がもらえそうもないからといって、このまま置き去りにして帰ったりしませんから。

「場所は覚えていないが、ドラゴンパーク星について記した資料が帝都の王宮にあったはずだ」
「帝都の王宮ですか……」

 そうなると、帝王には、帝都の王宮に戻ってもらわなければ困ることになる。
 帝王はこれからどうするつもりでいるのだろう?

「そうだ。だから帝都に戻ったら報酬を渡す。それまで待ってもらいたい」
「それは構いませんが……」

 帝王は、はなから帝都に戻るつもりだったようだな。だがそれは、公爵と一戦交えることになるだろう。話し合いでは済まないよな?
 できれば、関わりたくないのだが、ドラゴンパーク星の場所を知るためには、帝王に勝ってもらわないと困る。
 それに、M4要塞のこともあるな。帝王が実権を取り戻せば、問題にならないだろうが。今のままだと、要塞強奪の犯罪者にされかねない。

「ところで、その嫁を探しているドラゴンは一緒ではないのか?」
「それでしたら、帝国軍が攻めてこないように、ゲートの出口で迎え撃っています。ですので、できれば早く戻りたいのですが」

「なんだと! それを先に言わんか! 加勢に行くぞ、すぐに出発だ!!」

 それからは早かった。
 フォーマルハウトをドラゴン達が一斉に飛び立ち、衛生軌道上のM4要塞に乗り込んでいった。

 この様子をステファが見たら、きっと大喜びをしたことだろう。

 俺たちもM4要塞に乗り込むと、待っていたティアに指示を出す。

「ティア、全員が乗り込み次第、ゲートに向けて出発する」
「既に出発の準備はできています。ドラゴンの乗り込みも、まもなく終了します」
「よし、終了次第出発してくれ」
「畏まりました」

「チハル、ハルクとブルドラは大丈夫か?」
「ハルクは問題ない。ブルドラは、満身創痍」
「満身創痍って、なにやってるんだ? とにかくできるだけ急ごう!」
「了解」

 俺たちは最高速度で、ゲートに向かうことにした。

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