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第三部 帝国編

第137話 将軍

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 帝国にあると噂されているドラゴンパーク星に行くために、情報を求めて帝国のゴルドビッチ将軍に会いに来たところ、帝国を潰す陰謀に巻き込まれることになってしまったようだ。

「セイヤは、この帝国の正式名称を知っているか?」
「帝国の名前? アンタレス帝国だったか?」

「正式名称は、アンタレスドラゴンニア帝国だ」
「ドラゴンの帝国だったのか!」

「そうだ、帝王はドラゴンだとされている」
「ほー。ドラゴンが帝王なのか。その帝王は強いのか?」
 ブルドラが興味を示して、話に加わってきた。

「それが分からん。帝王はここ数年、いや、数十年、人前に姿を見せていない。俺は、帝王がドラゴンだというのは嘘なのではないかと思っている」
「なんだ、つまらぬ」

「帝王がそんなに人前に出なくても支障がないのか?」
「帝王代理として帝王の娘だとされる竜姫が時々姿を見せる。そして、直接の政治はドラゴンの末裔だとされる四公爵が行っている」

「ドラゴンの末裔ね……。ドラゴンではないのか?」
「祖先がドラゴンだという話だ」

「それはおかしいだろ。ドラゴンと人間の間では子はできんぞ」
「そうなのか?」
 人型を取れるならできそうな気もするが、ブルドラが言っているのだかそうなのだろう。
 そうなると、その四公爵は嘘をついていることになるな。

「ドラゴンと人間の間に子供ができないというのは、どこからの情報なんだ?」
「俺様が言っているのだから間違いない。そんなことより、俺様は娘の竜姫の方が気になるぞ」
 将軍としては、重要なところなのであろうが、ブルドラにとってはどうでもいいことなのだろう。興味は既に竜姫に移っている。

「娘ということは若いのか?」
「それが、年齢がよく分からん。外見は十代後半から二十代前半くらいに見えるが、既に数十年同じ姿のままだ。普通のヒトではないことは確かだな」

 ドラゴンは長寿だからな。だが、ドラゴン以外にも、エルフとか長寿な種族はいるから、ドラゴンであるとは断定できない。

「その竜姫は、ドラゴンにはならないのか?」
「ドラゴンに戻ったところは見たことがないし、その記録もないな」
 なぜ、ドラゴンになったところを見せないのだろう? 見せた方が権力を示せると思うのだが。
 本当はドラゴンではないのか、それとも何か不都合があるのか……。

「他の王族で、ドラゴンの姿を見せた者はいないのか?」

「帝王と一緒で、他の王族もほとんど表に出てこない。唯一、竜姫だけが、時々姿を見せるだけだ。そんな状態だから、ドラゴンの姿を確認した者はいないな」
 これでは、王族がドラゴンではないと疑われても仕方がないだろう。

「その竜姫は美人か?」
 ブルドラにとっては、女のことが一番重要らしい。

「見た目はキツそうだが、美人ではあるな」
「そうか。俺様のハーレム一号だな」

「ブルドラ、何を言っている。相手がドラゴンかまだ分からないんだぞ。それに、ドラゴンだとしても、姫だぞ。相手にされるわけないだろう」
「そんなもの、俺様の強さを見せればイチコロだ」
「ハー。ブルドラはお気軽だな」
「何を言っている。ドラゴンにとっては強さが一番なのだぞ」
「まあ、そうなんだろうな」

 俺とブルドラで言い合っていると、それを見ていた将軍は疑問に思ったのだろうチハルに尋ねた。
「二人は、何を盛り上がっているんだ? ドラゴンをハーレムにするようなことを言っているが」
「ブルドラは、ドラゴン。嫁探しに来た」

「なに! あいつドラゴンなのか? ドラゴンが人に化けられるのは、本当なのか……」
「俺様は本当にドラゴンだぞ。なんなら本当の姿をここで見せてやろうか」

「ブルドラ、ここでは止めろ。いくらなんでも狭過ぎる」
 この部屋の中でドラゴンになられたら、俺たちは押し潰される。

「本当にドラゴンなのか! これはまた、とんでもない地雷を持ち込んでくれたものだ。しかし、そうなると、帝王も本当のドラゴンの可能性もあるのか。これは、計画を練り直さないと……」

 将軍は、ドラゴンが人型になれるという話を信じていなかったようだな。

「もしかして、帝王がドラゴンでないことを明るみにして、帝制を潰すつもりだったのか」
「その通りだ。ドラゴンパークの場所は、帝王しか知らないとされている。皇王のお前が聞きに行けば、帝王に面会出来るかもしれない。その時に正体を暴ければと思ったのだが」

「俺が頼んでも面会できるとは思えないがな」
「帝王は無理でも、竜姫に会える機会はある。ブルドラは見ただけで、相手がドラゴンかわかるか?」

「ああ、わかるぞ。ハーレム一号に会えるのか?」
「ブルドラ、せめて竜姫と呼ばないと嫌われるぞ」
「そうか? 名誉ある一号だぞ」
「正妻ならともかく、ハーレム一号じゃな」
「そうか、なら竜姫と呼ぼう」
 できれば様を付けてもらいたいとこだが、俺様じゃ仕方ないか。

「それで、どこで会えるのだ?」
「帝都の裁判所だ」
「裁判所? 王宮とかじゃないのか」

「外交に関わる大事な裁判があってな。それに帝王代理として竜姫が出席することになっている」
「なるほど、俺たちはその裁判を傍聴すればいいのか」

「いや、折角だ、証人として参加してもらおう」
「証人? どういうことだ。まさか、その裁判って……」
「そうだ。お前を殺そうとした男爵令嬢の裁判だよ」

「俺、急用を思い出したよ。急いでリリスの所に帰らないと。ブルドラは預けるから、そっちは適当にやってくれ」
「おいおい、確か貸しがあったよな。その貸しを返してもらおうか」

 すぐに逃げだそうと思ったが、将軍はそれを許してはくれなかった。
 シャトルレーサーのレース大会の時の借りか。確かに命を救われたからな。無碍にもできない。
 しかし、あの、男爵令嬢とは二度と関わりたくなかったんだが。

「それに、裁判が揉めているのはお前のせいでもあるんだぞ」
「裁判が揉めているのか?」

 どこに、揉めるような要素があっただろうか。一方的に男爵令嬢が悪いだろう。

「シリウスで、執事とメイドを逃しただろう」
 俺が起こした混乱のどさくさに、俺を殺そうとした実行犯の執事とメイドが逃亡したんだったな。でも、それって俺の責任か?

「その二人が帝国に戻っていてな。お前を殺すように命令したのは、男爵令嬢でなく、俺だと執事が証言している」

 執事が軍の関係者なら、軍の作戦として事件を起こしたとすれば、個人的には、罪に問えないということか。

「それと、男爵令嬢がお前を殺そうとした動機が弱いらしい。ただ、気に入らなかったから殺すでは、裁判官が納得できないようだ」

「帝国の貴族は、気に入らなかったら、殺す奴ばかりかと思ったが、そうじゃないんだな」
「流石に法治国家だから、そこまでひどくはないが、理由を付けて殺す奴はいるから気をつけろ」

 それを聞くと、益々帝都に行きたくなくなるのだが。
 将軍としては、そんな貴族どもを一掃したいのだろうな。

 まあ、借りは返しておきたいし、男爵令嬢が無罪放免になられても困る。おまけに、ドラゴンパークの場所は帝王に会わないとわからない。
 これは帝都まで行くしかないか。

 俺は、腹を括ることにした。

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