魔力は最強だが魔法が使えぬ残念王子の転生者、宇宙船を得てスペオペ世界で個人事業主になる。

なつきコイン

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第三部 ドラゴン編

第122話 ドラゴン戦

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 ドラゴンが寝ている隙に、角を奪ってしまおうと考えているうちに、ドラゴンが目覚めてしまった。
 ドラゴンはこちらに気づいたようだ。

『俺様に何か用か?』

 ドラゴンって喋れたのか。いや、喋っているというよりは、これはテレパシー、念話か。
 でもこれなら、交渉が可能か。

「俺はセイヤと言います。お名前を伺っても」
『名前か。暫く使っていなかったが、そうだな……、俺様はブルードラゴンだから、ブルドラとでも呼んでくれ』
「そうですか、ではブルドラさん。角を分けてもらうわけにはいかないでしょうか」
『なんだ、喧嘩を売りに来たのか。それなら相手になってやろう』
「いや、喧嘩を売る気はないのですが」
『角を奪いに来たのだろう。ならそういうことだ。ではいくぞ』

 ドラゴンにとって、角を寄越せは、喧嘩をしようと同義語らしい。

 ドラゴンは大口を開けると冷凍ブレスを吐いてきた。
 冷気の塊がシャトルポッドを襲うが、シールドに弾かれる。

『ほー。あれを弾くか』
「キャプテン、こちらからも攻撃の許可を」
「ブレスをシールドで防げるなら、死なない程度に攻撃してもかまわないだろう」
「了解。シャトルポッドのビーム砲で応戦する」

 チハルが、ドラゴンに向けてシャトルポッドのビーム砲を発射するが、すんでのところで避けられた。
「巨体の割に動きが素早いな」
「ビーム砲を避けるなんて、普通では考えられない」

 確かに、ビーム砲は発射して仕舞えば、到達まで一瞬だ。発射してから避けたのでは到底間に合わない。
 ということは、発射の予備動作を見て避けているのか?
 ビーム砲発射の瞬間、シャトルポッドの動きが止まってしまうのだろう。その僅かな隙を見逃さないとは、信じられないほどの観察眼だ。
 そうなると、シャトルポッドからのビーム砲だけでは、攻撃を当てるのは難しいかもしれない。

『俺様最強!』

 ドラゴンの回し蹴りならぬ、回し尻尾攻撃がシャトルポッドに炸裂する。
 シールドがあるおかげで、壊れはしないが、弾みで遠くへ飛ばされる。

『なかなか頑丈だな』

「距離も取れたことだし、ここは一旦このまま引くか?」
「一度も攻撃が当たらないのが癪に障る」
 シールドがあるので負けることはないが、このまま戦っても、攻撃が当たらないのではこちらに勝ち目がない。

「ちょっと、追いかけて来るわよ」
 ドラゴンは、背中の翼を広げて飛び立ち、こちらに向かって来る。
 このまま見逃してはくれないようだ。

「チハル、上だ。上に逃げろ!」
「了解」

『逃げられると思うな』

 シャトルポッドはどんどん高度を上げていくが、ドラゴンもそれについて追いかけて来る。
 やがて、宇宙空間に到達する。

「ドラゴンって、宇宙空間でも生きられるのか?」
「種類によるんじゃないかしら」

 宇宙空間まで行けば逃げられると思ったが、甘かったか。
 そういえば、バッタも宇宙空間に生息しているんだったな。

 だが、宇宙空間まで出て仕舞えばやりようがある。

「チハル、オメガユニットは」
「抜かりはない。網を張って待機している」
「流石はチハル。準備がいいな」

「え、オメガユニットで攻撃したら、流石に死んじゃうわよ」
「大丈夫、攻撃はしない」
 チハルは、攻撃をする気はないようだ。

「オメガユニットには、攻撃以外にも使い道がある」
「ゲートを作ること?異次元に落としちゃったら意味ないじゃない」

「それじゃない。トラクタービーム」
「なるほど、まさに網を張っているわけね」
「さあ、うまく掛かってくれればいいが」

「キャプテン、目標地点通過」
「よし、どうだ」

 シャトルポッドを追って来たドラゴンが、オメガユニット四基から放たれたトラクタービームの網に引っかかる。

『なんだこれは?』
 ドラゴンはもがくが、トラクタービームからは抜け出すことはできない。

「悪いな。宇宙船を牽引するためのビームだ。簡単には逃げられないぞ」
『なに? 宇宙船! そういえば、ここは宇宙空間ではないか。いつの間にこの星の技術はここまで進んだのだ。もしかして、お前らエイリアンか?』

「いや、俺はこの星生まれだが、ステファはエイリアンといえるか?」
「失礼しちゃうわね。他の星から来たけど、エイリアンじゃないわよ」

『エイリアンでないとしても、他の星から来たのか! なら、ワープできる宇宙船もあるのか?』
「あるが、それがどうした?」

『あるのか! それならお前ら生かしておいてやるからその宇宙船を寄越せ』
「寄越せだと。捕まった状態で随分態度がデカイじゃないか」

『フン。こんな縛、本気になれば。グヌヌヌ。ハッ!』
「なんだと、トラクタービームを断ち切っただと」

『どうだ、俺様が本気を出せばこんなもんだ。はぁ、はぁ』
「随分と疲れているようだがな」

『うるさい! 兎に角、その宇宙船を寄越すか、俺様を他のドラゴンがいる星に連れて行ってくれ』
「連れて行けといわれても、宇宙船に乗れないだろう。その大きさじゃ」
『それなら心配ない。俺様は人型に変異できる』

 ドラゴンは見る間に人型に姿を変えたのであった。

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