魔力は最強だが魔法が使えぬ残念王子の転生者、宇宙船を得てスペオペ世界で個人事業主になる。

なつきコイン

文字の大きさ
上 下
111 / 167
第二部 皇王就任編

第111話 その頃宰相ゲイルは、王宮

しおりを挟む
「いかがでしたか、チャールス殿下」
「上手く暗示はかけられたか」

 皇王候補との会談が終わり、国王の執務室に戻ると、早速、第三王子を呼び成果を確認する。

 国王が言っている暗示とは、第三王子が得意な魔法で、相手の行動をある程度誘導することができるものだ。意志の弱い者なら思うがままに操ることもできるという。

「それが、やはりステファ姉さん以外は無理でした」
「そうか。喜ばせて、気が緩んだところならいけるかもと思ったが、シールドの上からでは難しいか」
「ステファ姉さんのように何度も掛けていれば、シールドの上からでも何とかなるのですが……」

「うむ、そうじゃな。ステファは子供の頃から掛けているからな。掛かりやすさが違うか」

 ステファニアには幼少の頃から暗示が使える側仕えをつけ、こちらに従順になるよう暗示を掛けてきた。
 第三王子が暗示を使えるようになってからは、第三王子に任せていた。
 秘密は、知る者が少ない程よい。

 ステファニアは、暗示のおかげで全く王位や権力に興味を示さなくなったが、その代わり、自由奔放になり、恋愛とお金に興味を持つようになってしまった。
 お金は兎も角、恋愛に興味を持たせてしまったのは失敗だった。
 後から矯正しようとしていたところで、事件が起き、攫われてしまった。
 その後、逃げ出して行方不明になっていたが、戻って来てみれば皇王候補を連れていた。
 全く、どこで見つけて来たのか、言われたことだけをしていればいいのに、困った王女である。

「そうなりますと、シールドを外させる必要がありますな」
「若しくは、意識を朦朧とさせるかじゃが」
「睡眠薬か、香を使いますか?」
 私は薬の使用を提案する。

 薬なら、即死性の毒でなければ、シールドがあっても効果が期待できる。
 即死性の毒はシールドで弾かれてしまう。

 今の世界、シールドがあることで、ほぼ即死することはなくなった。そのため暗殺の心配も少なくなったが、それでもゼロではない。

 安全なのは、シールドがある間に過ぎない。シールドへの魔力が切れてしまえばそれまでである。
 シールドの魔力が切れるまで、飽和攻撃を続ければ相手を殺すことができる。

 だが、これは暗殺の場合は現実的ではない。攻撃をしている間に助けを呼ばれてしまう可能性があるからだ。
 長期的に微弱な毒を盛り、衰弱死させる方法もあるが、どちらにせよ暗殺を行うのは簡単なことではない。

 それに、今回は暗殺が目的ではない。
 皇王候補を暗殺してしまっては、有名人物になってしまっただけに、世間で問題になってしまう。
 それよりも、上手く操れれば、利用価値は計り知れない。

「そうだな、そのあたりは任せるが、誰にもバレないようにやってくれ」
「畏まりました」

「父上、本当に皇王様に暗示など掛けてよろしいのですか?」
「それは前にも言っただろ。皇王の好きにさせれば、お前の姉であるアマンダルタも連れ攫われてしまうぞ」
「そうでしたね……。それは絶対に阻止しないと!」

 第三王子は、大事な第一王女と二週間以上に亘って引き離されたことで、皇王候補に警戒心を持っている。
 それに、今日も、女性ばかりを三人も従えている様子を見て、「姉上を皇王様の毒牙から守らないと」と、考えていることだろう。

 第一王女がこの時期プロキオンに行かれたのは僥倖であった。
 独立の危険性を煽ってやったら、すっ飛んで行った。

 お陰で、第三王子にあることないこと吹き込むことができた。
 いつもは第一王女が警戒していて、こうはいかない。

 第一王女さえいなければ、もっと簡単に第三王子を操れたものを。

 暗示を持っていて、人を操れても、所詮まだ八歳の子供である。上手く誘導してやれば、暗示などなくとも思い通りに動いてくれる。

「姉上を守るため」にと、頑張って、皇王候補に暗示を掛けてもらうことにしよう。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生してテイマーになった僕の異世界冒険譚

ノデミチ
ファンタジー
田中六朗、18歳。 原因不明の発熱が続き、ほぼ寝たきりの生活。結果死亡。 気が付けば異世界。10歳の少年に! 女神が現れ話を聞くと、六朗は本来、この異世界ルーセリアに生まれるはずが、間違えて地球に生まれてしまったとの事。莫大な魔力を持ったが為に、地球では使う事が出来ず魔力過多で燃え尽きてしまったらしい。 お詫びの転生ということで、病気にならないチートな身体と莫大な魔力を授かり、「この世界では思う存分人生を楽しんでください」と。 寝たきりだった六朗は、ライトノベルやゲームが大好き。今、自分がその世界にいる! 勇者? 王様? 何になる? ライトノベルで好きだった「魔物使い=モンスターテイマー」をやってみよう! 六朗=ロックと名乗り、チートな身体と莫大な魔力で異世界を自由に生きる! カクヨムでも公開しました。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます

みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。 女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。 勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

西園寺わかば🌱
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

処理中です...