106 / 167
第二部 プロキオン星編
第106話 神楽
しおりを挟む
プロキオンに着いて五日後、神楽が行われる日が訪れた。
その間、俺はプロキオンのあちこちを視察することになった。
どこへ行っても皇王候補として、知れ渡っており、熱烈な歓迎を受けた。
まだ、国王との会談も済んでいない状態で、これからどうなるか分からないのに、ほとほと、困り果てた状況だ。
大公としては、シリウスより先に、プロキオンを視察して回ったことで、皇王がプロキオンを蔑ろにすることはないと示したかったのだろうが、逆に、シリウスの人にとっては気分が良くないだろう。
俺としても、既成事実を作られて、このまま皇王に祭り上げられるのは勘弁願いたいところだ。
そんな願いも虚しく、今日の神楽でも、俺は特別席が用意されていた。
神楽が見やすい中央の、一段高くなった席だ。
俺と大公が並んで座ることになる。
俺の横にはリリス。大公の横には第一王女が座っている。
俺の後ろにはチハルが、リリスの後ろには当然アリアが護衛も兼ねて立つことになる。
聖女とステファの席は隅の方に用意されていた。
プロキオンに来てから、聖女とステファの待遇が悪い。
嫌がらせは受けていないが、扱いが一段、いや、三段ぐらい下だ。
従者である。チハルやアリアと同じレベルの扱いになっている。
聖女は兎も角、ステファは王女であるのに。
ステファにとってはいつものことなので、気にしないと言っていたが、あからさま過ぎないだろうか。
それだけ、プロキオンではシリウスのことを毛嫌いしているということだろうか……。
そういえば、ここに来て、初めてヤガトに会った。大公の孫で、第一王女の従兄弟。プロキオン独立派の中心人物だ。
大公に紹介され、挨拶をすれば、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
俺が、来ただけで、独立派としては、大打撃だったようだ。
しばらく待つと、シャラン、シャランと鈴を鳴らしながら巫女姿の女性が三人、神楽殿の舞台裏から現れた。
三人は、タマさんが舞台の中央に、後の二人が左右に一歩下がった位置に立つと、笛と太鼓の奏でる音楽に合わせて、舞を始めた。
創世神話をなぞった舞なのだそうだが、その辺は俺にはよくわからないが、なんとも、神秘的な舞である。
アイドルの衣装で歌うタマさんもいいが、巫女装束はそれとは違った良さがある。
時々、タマさんが、シャン、シャンと鈴を打ち鳴らしている。
ネット中継も行われているようで、カメラも数台入っている。舞台脇の巨大スクリーンに別角度のタマさんが大写しにされていた。
「右側の後ろの子は、タマさんに似ていますね」
「あの子はタマの妹で、ヨーコだな。随分と練習したのだろう。タマと比べても見劣りしないな」
「へー。タマさんに妹さんがいたんですか」
「気に入ったなら、妹の方も眷属にして構わないぞ」
「いえ、そういうのは、間に合ってますから」
「そうはいうが、タマモは眷属にしてもらわねば困るぞ」
「それはわかっていますが、それも、本人の希望次第ですね」
大公とおしゃべりしている間も舞は続いている。
舞は激しさを増し、いよいよクライマックスだろうか。
タマさんが、大きく宙に舞った後、静寂が訪れる。
次の瞬間、観客から大きな拍手が沸き上がった。俺も三人に拍手を送る。
「さて、それでは行くとするか」
大公が席を立ち、舞台に向かう。
俺も仕方なく、後に続く。
大公は、舞台に上がると、控えていた三人の巫女に声をかける。
「見事な舞であった」
「ありがとうございます」
代表して、タマさんがお礼を述べる。
大公は、観客の方へ向きを変えると、大声を張り上げた。
「皆の者、今回も無事に舞を奉納することができた。
だが、今回はこれで、終わりではない。
聞き及んでいる者もおるかもしれんが、今回は、皇王候補がご隣席くださった。
特別にそのお力を今からお示しいただける」
「おーお」
観客から響めきが上がった。
その間、俺はプロキオンのあちこちを視察することになった。
どこへ行っても皇王候補として、知れ渡っており、熱烈な歓迎を受けた。
まだ、国王との会談も済んでいない状態で、これからどうなるか分からないのに、ほとほと、困り果てた状況だ。
大公としては、シリウスより先に、プロキオンを視察して回ったことで、皇王がプロキオンを蔑ろにすることはないと示したかったのだろうが、逆に、シリウスの人にとっては気分が良くないだろう。
俺としても、既成事実を作られて、このまま皇王に祭り上げられるのは勘弁願いたいところだ。
そんな願いも虚しく、今日の神楽でも、俺は特別席が用意されていた。
神楽が見やすい中央の、一段高くなった席だ。
俺と大公が並んで座ることになる。
俺の横にはリリス。大公の横には第一王女が座っている。
俺の後ろにはチハルが、リリスの後ろには当然アリアが護衛も兼ねて立つことになる。
聖女とステファの席は隅の方に用意されていた。
プロキオンに来てから、聖女とステファの待遇が悪い。
嫌がらせは受けていないが、扱いが一段、いや、三段ぐらい下だ。
従者である。チハルやアリアと同じレベルの扱いになっている。
聖女は兎も角、ステファは王女であるのに。
ステファにとってはいつものことなので、気にしないと言っていたが、あからさま過ぎないだろうか。
それだけ、プロキオンではシリウスのことを毛嫌いしているということだろうか……。
そういえば、ここに来て、初めてヤガトに会った。大公の孫で、第一王女の従兄弟。プロキオン独立派の中心人物だ。
大公に紹介され、挨拶をすれば、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
俺が、来ただけで、独立派としては、大打撃だったようだ。
しばらく待つと、シャラン、シャランと鈴を鳴らしながら巫女姿の女性が三人、神楽殿の舞台裏から現れた。
三人は、タマさんが舞台の中央に、後の二人が左右に一歩下がった位置に立つと、笛と太鼓の奏でる音楽に合わせて、舞を始めた。
創世神話をなぞった舞なのだそうだが、その辺は俺にはよくわからないが、なんとも、神秘的な舞である。
アイドルの衣装で歌うタマさんもいいが、巫女装束はそれとは違った良さがある。
時々、タマさんが、シャン、シャンと鈴を打ち鳴らしている。
ネット中継も行われているようで、カメラも数台入っている。舞台脇の巨大スクリーンに別角度のタマさんが大写しにされていた。
「右側の後ろの子は、タマさんに似ていますね」
「あの子はタマの妹で、ヨーコだな。随分と練習したのだろう。タマと比べても見劣りしないな」
「へー。タマさんに妹さんがいたんですか」
「気に入ったなら、妹の方も眷属にして構わないぞ」
「いえ、そういうのは、間に合ってますから」
「そうはいうが、タマモは眷属にしてもらわねば困るぞ」
「それはわかっていますが、それも、本人の希望次第ですね」
大公とおしゃべりしている間も舞は続いている。
舞は激しさを増し、いよいよクライマックスだろうか。
タマさんが、大きく宙に舞った後、静寂が訪れる。
次の瞬間、観客から大きな拍手が沸き上がった。俺も三人に拍手を送る。
「さて、それでは行くとするか」
大公が席を立ち、舞台に向かう。
俺も仕方なく、後に続く。
大公は、舞台に上がると、控えていた三人の巫女に声をかける。
「見事な舞であった」
「ありがとうございます」
代表して、タマさんがお礼を述べる。
大公は、観客の方へ向きを変えると、大声を張り上げた。
「皆の者、今回も無事に舞を奉納することができた。
だが、今回はこれで、終わりではない。
聞き及んでいる者もおるかもしれんが、今回は、皇王候補がご隣席くださった。
特別にそのお力を今からお示しいただける」
「おーお」
観客から響めきが上がった。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
雪月夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?
伽羅
ファンタジー
転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。
このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。
自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。
そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。
このまま下町でスローライフを送れるのか?
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
西園寺わかば🌱
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。

お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる