70 / 167
第二部 プロローグ
第70話 その頃カイトは、アイドルと一緒
しおりを挟む
俺は宇宙船のライセンスを取得後、あちこち就職活動に回った結果、アイドルグループ、猫耳カルテットのライブキャラバン船の運転手に就職できた。
そう、俺は、運転手として就職した筈である。
なのに、やっていることは、アイドルの付き人としての下働きであった。
船の中では食事の用意に始まり、掃除に洗濯。現場では、機材の設置に、スケジュール管理。
給料が高いから良いと思っていたが、食材や日用品などの購入は俺の自腹であった。
せめてもの救いは、可愛い女の子とキャッキャウフフできることかと期待したが、それも儚い夢だった。
「なによ今日の客のノリの悪さわ!」
「本当にね。最初は一生懸命に手拍子していた女の子がいて、いい感じだったのに……」
「そうね。久しぶりにノリノリだったのにね」
ああ、今日も愚痴り大会が始まったようだ。ライブの後は毎回だ。
「二曲目が始まる前に、彼氏と帰って行ったわよ」
「くー。彼氏か。私も欲しいー」
「アイドルなんだから、彼氏を作ったら駄目でしょ」
「そこは、ほら、上手く隠れて」
「私は、貢いでくれるファンがいればいいわ」
「そんなファン、私たちにはいないじゃない」
そうだ、現実をよく見ろ、タマ。お前に貢ぐような奴は誰もいない。
「一人いたじゃない。メガネをかけた追っかけの女の子」
「あの子は、スズのファンだった子でしょ」
「そうだっけ?」
スズって誰だ? カルテットとかいうくらいだからもう一人メンバーがいたのか?
「全く、スズのくせに生意気なのよ。固定のファンを持つなんて」
「本当よね。人数が足りないから、ステージに立たせてやったのに」
「自分が、運転と私たちの世話係だってこと忘れてたんじゃない」
「それが急に辞めちゃうんだものね。理由聞いてる?」
どうやらスズという子が辞めてしまったので、俺が雇われたようだ。
「いや、知らない」
「プロデューサー、教えてくれなかったしね……」
こんな仕事じゃ、辞めたくなるのももっともだ。お前たちが虐めたんじゃないのか!
考えてみれば、俺が来た時、スズって子の部屋はなかった。つまり、俺と同じように運転席で寝起きしていたことになる。
俺は男だから我慢するけど、同じアイドルだとすると虐めだよな。
まあ、今更俺がどうこう言っても仕方がないことなのだが……。
しかし、ステージでは猫撫で声でニャンとか言ってるくせに、船の中では普通に喋っている。
全く、女は化けるというが、こうまで違うと女性不審になりそうだ。
化けるといえば、タマに至っては、猫の獣人でわなく、狐の獣人だった。魔法で猫の獣人に化けていたのだ。
もっとも、素のままでも、狐の獣人だと言われなければ、俺にはわからなかったが。
獣人同士でなければ、猫か狐を区別するのは難しいんじゃないだろうか。
確かに尻尾はタマの方がふさふさしていて、触り心地が良さそうだが、耳だけ見ていたら違いがわからない。若干細くて長いのか? 個人差の範囲な気もする。
だが、あの尻尾のふさふさは、思わずもふもふしたくなる誘惑に駆られる。
いっそのこと、握手会でなく、尻尾のもふり会にしたら人気が出るのではないだろうか。
そんなことを考えていたから、視線が尻尾にいっていたのだろう。タマが尻尾を隠すようにしてこちらを睨んできた。
「カイトのスケベ!」
「お、俺はなにもしてないだろ!」
「尻尾をいやらしい目で見てた」
「いや、別に見てないしー、たまたま、視線に入ってただけだしー」
「カイトったら、慌てちゃって。余計に怪しいわよ」
「そんなことないしっ」
「慌てるカイトは可愛いわねー」
クソ。いつもこれだ、すぐに俺のことからかいやがって。
女の子三人相手に、口ではとても勝てそうにない。
はあ、俺の受難はいつまで続くのだろう?
そういえば、セイヤたちはどうしているだろう。
こんな仕事じゃ、連絡したくても連絡できないな……。
そう、俺は、運転手として就職した筈である。
なのに、やっていることは、アイドルの付き人としての下働きであった。
船の中では食事の用意に始まり、掃除に洗濯。現場では、機材の設置に、スケジュール管理。
給料が高いから良いと思っていたが、食材や日用品などの購入は俺の自腹であった。
せめてもの救いは、可愛い女の子とキャッキャウフフできることかと期待したが、それも儚い夢だった。
「なによ今日の客のノリの悪さわ!」
「本当にね。最初は一生懸命に手拍子していた女の子がいて、いい感じだったのに……」
「そうね。久しぶりにノリノリだったのにね」
ああ、今日も愚痴り大会が始まったようだ。ライブの後は毎回だ。
「二曲目が始まる前に、彼氏と帰って行ったわよ」
「くー。彼氏か。私も欲しいー」
「アイドルなんだから、彼氏を作ったら駄目でしょ」
「そこは、ほら、上手く隠れて」
「私は、貢いでくれるファンがいればいいわ」
「そんなファン、私たちにはいないじゃない」
そうだ、現実をよく見ろ、タマ。お前に貢ぐような奴は誰もいない。
「一人いたじゃない。メガネをかけた追っかけの女の子」
「あの子は、スズのファンだった子でしょ」
「そうだっけ?」
スズって誰だ? カルテットとかいうくらいだからもう一人メンバーがいたのか?
「全く、スズのくせに生意気なのよ。固定のファンを持つなんて」
「本当よね。人数が足りないから、ステージに立たせてやったのに」
「自分が、運転と私たちの世話係だってこと忘れてたんじゃない」
「それが急に辞めちゃうんだものね。理由聞いてる?」
どうやらスズという子が辞めてしまったので、俺が雇われたようだ。
「いや、知らない」
「プロデューサー、教えてくれなかったしね……」
こんな仕事じゃ、辞めたくなるのももっともだ。お前たちが虐めたんじゃないのか!
考えてみれば、俺が来た時、スズって子の部屋はなかった。つまり、俺と同じように運転席で寝起きしていたことになる。
俺は男だから我慢するけど、同じアイドルだとすると虐めだよな。
まあ、今更俺がどうこう言っても仕方がないことなのだが……。
しかし、ステージでは猫撫で声でニャンとか言ってるくせに、船の中では普通に喋っている。
全く、女は化けるというが、こうまで違うと女性不審になりそうだ。
化けるといえば、タマに至っては、猫の獣人でわなく、狐の獣人だった。魔法で猫の獣人に化けていたのだ。
もっとも、素のままでも、狐の獣人だと言われなければ、俺にはわからなかったが。
獣人同士でなければ、猫か狐を区別するのは難しいんじゃないだろうか。
確かに尻尾はタマの方がふさふさしていて、触り心地が良さそうだが、耳だけ見ていたら違いがわからない。若干細くて長いのか? 個人差の範囲な気もする。
だが、あの尻尾のふさふさは、思わずもふもふしたくなる誘惑に駆られる。
いっそのこと、握手会でなく、尻尾のもふり会にしたら人気が出るのではないだろうか。
そんなことを考えていたから、視線が尻尾にいっていたのだろう。タマが尻尾を隠すようにしてこちらを睨んできた。
「カイトのスケベ!」
「お、俺はなにもしてないだろ!」
「尻尾をいやらしい目で見てた」
「いや、別に見てないしー、たまたま、視線に入ってただけだしー」
「カイトったら、慌てちゃって。余計に怪しいわよ」
「そんなことないしっ」
「慌てるカイトは可愛いわねー」
クソ。いつもこれだ、すぐに俺のことからかいやがって。
女の子三人相手に、口ではとても勝てそうにない。
はあ、俺の受難はいつまで続くのだろう?
そういえば、セイヤたちはどうしているだろう。
こんな仕事じゃ、連絡したくても連絡できないな……。
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福論。〜飯作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
西園寺若葉
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜
西園寺若葉
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。
4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。
そんな彼はある日、追放される。
「よっし。やっと追放だ。」
自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。
- この話はフィクションです。
- カクヨム様でも連載しています。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる