55 / 167
第一部 オメガユニット編
第55話 ガニメデ
しおりを挟む
オメガユニットの最後の一つ、ガニメデは御神体ではなかった。
そにため、聖女に聞いても今どこにあるかわからない。
現状では行方不明である。
一から探さなければならないわけだ。
「先ずは、ガニメデの名が付いた地名がないか洗い出しだな」
「そうですね、エウロパは、エウロパ湖、イオは、イオ火山になっていましたからね」
「それと、謎の球体の情報がないか、調べないとな」
「それは、セイヤ様がいらっしゃらない間に調べました」
「そういえば、俺が戻って来た時、リリスはカリストを調べていたな。何でだ?」
「いえ、セイヤ様を探す手がかりになればと調べていただけです」
「ああ、そんなこと父上も言っていたか……」
それから何日か経ったが、ガニメデという地名は見つからず、目新しい情報もなかった。
「新しい情報はなしか。大体、ガニメデはいつ頃地上に落ちたんだ?」
「大体三百年前」
「それなら、何か記録は残ってないのかな?」
「そうですね。人が住んでいる近くに落ちていれば、記録がありそうですが……」
教会の記録を捲りながら聖女が答える。
「山の奥とか、海の上だと目撃情報はないかもですね」
「海の上だとな、それこそ探すのは難しいな」
「海ですか。……。ちょっと待ってください」
聖女が教会の記録を改めて確認する。
「三百年前に、地震もないのに、村に津波が押し寄せた記録があります」
「遠くで地震があった場合、揺れを感じなくても津波が来ることはあるんだが、被害があったのは村一つだけか」
「教会の記録を見る限りではそうですね」
「なら、他に当てもないし、その村に行ってみるか」
俺たちはシャトルポッドで、三百年前に津波の被害にあった村に向かった。
村に着いて、聞き込みをすると、確かに三百年前に津波の被害があったようだが、それ以上の詳しいことはわからなかった。
「折角来たが、ガニメデに繋がる情報はなかったな」
「まあ、新鮮なお魚が食べられたから、それだけでもいいじゃない」
「確かに新鮮で美味しいですよね」
リリスが嬉しそうに笑顔を見せる。
ここのところ、根を詰めて、リリスの笑顔を見ていなかったからな。リリスの笑顔を見れただけでも良しとするか。
「見つけた」
「チハル、何を見つけたんだ?」
チハルは、タブレットのような物を見ながら、何か操作していた。
「沖合の海底にガニメデがあった」
「え、いつの間に見つけたんだ?」
「無人機を飛ばして捜索していた。チハル、できる子」
「おお、チハル、でかしたぞ。お前はできる子だ」
俺は、チハルの頭をぐりぐり撫で回す。
「村の情報は私が見つけたのに、チハルさんに全部持って行かれてしまいました」
何故か聖女が悔しがっている。
「聖女の情報のおかげだな、感謝しているよ」
「ああ、私などに、なんと勿体ないお言葉」
一応、感謝の言葉を伝えておくが、いちいち聖女の反応が面倒くさいな。
「さて、見つけたとはいえ海底だ。どうやって引き上げようか?」
「既にオメガユニットが三基あるから、トラクタービームで引き上げられる」
「そんなのできるのか?」
「これで操作する」
チハルからタブレットを渡される。
「これで、各オメガユニットの位置を移動、これでトラクタービームの強さを調整。さあ、キャプテンやってみて」
画面を見ながら操作ができるようだ。ヴァーチャルクレーンゲームといった感じだ。
「良し、任せろ、俺はこういうのは得意だ!」
俺は画面を見ながら慎重にガニメデを引き上げていく。
みんなも気になるのか画面を覗き込んでいる。
バランスを考え、慎重に引き上げた結果、ガニメデが海面に顔を出す。あと少し。
「キャプテン、上手い」
「そうだろう」
チハルに褒められて、チラリとそちらを見てしまう。
何故かチハルは浮き輪をしていた。
「チハル、その浮き輪はどうした?」
「対津波防御」
「津波が来るのか?」
「念のため」
「そうか」
「あ!」
「あっ!」
目を離した隙に、ガニメデがバランスを崩して海中に落ちてしまった。
「しまった! チハルに気を取られてしくじった」
「集中力が足りないな。はい、交代よ」
ステファが俺からタブレットを取り上げる。
「私に任せておきなさい!」
ステファは意気込んでいたが、海中の半分も引き上げたところで、ガニメデを落としてしまう。
「次、私が、いいですか?」
次はリリスが挑戦するようだ。
リリスは悪戦苦闘していたが、殆ど引き上げられずに諦めて、タブレットを聖女に渡した。
「神の御心のままに」
聖女は割と上手く引き上げたが、海面にでたところで、滑り落ちてしまった。
「おー。ジーザス!」
聖女にあるまじき嘆き方だな。
聖女からタブレットを受け取ったのはアリアだった。
俺が、アリアもやるのか、という視線で見れば。
アリアは「当然やりますけど、何か?」と言いたそうな視線を返してきた。
アリアはリリスとどっこいどっこいだった。流石主従関係、似た者同士、といったところだ。
「みんな、なってない」
チハルがアリアからタブレットを受け取る。
「このゲームはこうする」
あれー。チハルさん。今ゲームって言いませんでしたか。
確かに、ゲームみたいに楽しんだけど。それを言っちゃいますかー。
チハルはタブレットを巧みに操ると、ガニメデを海中から引き上げ、そのまま、トラクタービームで衛星軌道まで引き上げてしまった。
「ざっとこんなもん」
チハルが珍しくドヤ顔だ。
「次は負けないわよ!」
「私も頑張ります!」
「ステファにリリス、次はないから」
完全にゲームと勘違いしてないか。
「えっ! リベンジの機会はないのですか?」
アリア、お前もか。
「どうでしょう、わざと一つ地上に落としてみては?」
聖女、お前、なんてこと言うんだ。
他の三人から期待の眼差しを向けられてしまう。
「なに、馬鹿なこと言ってるんだ。さあ、さっさと撤収するぞ!」
「はーい」
四人が明らかに落胆していたが、そんなことできるわけないだろう。
しかし、少し可哀想なので、船の工作室でクレーンゲームを作ってやることにした。
そにため、聖女に聞いても今どこにあるかわからない。
現状では行方不明である。
一から探さなければならないわけだ。
「先ずは、ガニメデの名が付いた地名がないか洗い出しだな」
「そうですね、エウロパは、エウロパ湖、イオは、イオ火山になっていましたからね」
「それと、謎の球体の情報がないか、調べないとな」
「それは、セイヤ様がいらっしゃらない間に調べました」
「そういえば、俺が戻って来た時、リリスはカリストを調べていたな。何でだ?」
「いえ、セイヤ様を探す手がかりになればと調べていただけです」
「ああ、そんなこと父上も言っていたか……」
それから何日か経ったが、ガニメデという地名は見つからず、目新しい情報もなかった。
「新しい情報はなしか。大体、ガニメデはいつ頃地上に落ちたんだ?」
「大体三百年前」
「それなら、何か記録は残ってないのかな?」
「そうですね。人が住んでいる近くに落ちていれば、記録がありそうですが……」
教会の記録を捲りながら聖女が答える。
「山の奥とか、海の上だと目撃情報はないかもですね」
「海の上だとな、それこそ探すのは難しいな」
「海ですか。……。ちょっと待ってください」
聖女が教会の記録を改めて確認する。
「三百年前に、地震もないのに、村に津波が押し寄せた記録があります」
「遠くで地震があった場合、揺れを感じなくても津波が来ることはあるんだが、被害があったのは村一つだけか」
「教会の記録を見る限りではそうですね」
「なら、他に当てもないし、その村に行ってみるか」
俺たちはシャトルポッドで、三百年前に津波の被害にあった村に向かった。
村に着いて、聞き込みをすると、確かに三百年前に津波の被害があったようだが、それ以上の詳しいことはわからなかった。
「折角来たが、ガニメデに繋がる情報はなかったな」
「まあ、新鮮なお魚が食べられたから、それだけでもいいじゃない」
「確かに新鮮で美味しいですよね」
リリスが嬉しそうに笑顔を見せる。
ここのところ、根を詰めて、リリスの笑顔を見ていなかったからな。リリスの笑顔を見れただけでも良しとするか。
「見つけた」
「チハル、何を見つけたんだ?」
チハルは、タブレットのような物を見ながら、何か操作していた。
「沖合の海底にガニメデがあった」
「え、いつの間に見つけたんだ?」
「無人機を飛ばして捜索していた。チハル、できる子」
「おお、チハル、でかしたぞ。お前はできる子だ」
俺は、チハルの頭をぐりぐり撫で回す。
「村の情報は私が見つけたのに、チハルさんに全部持って行かれてしまいました」
何故か聖女が悔しがっている。
「聖女の情報のおかげだな、感謝しているよ」
「ああ、私などに、なんと勿体ないお言葉」
一応、感謝の言葉を伝えておくが、いちいち聖女の反応が面倒くさいな。
「さて、見つけたとはいえ海底だ。どうやって引き上げようか?」
「既にオメガユニットが三基あるから、トラクタービームで引き上げられる」
「そんなのできるのか?」
「これで操作する」
チハルからタブレットを渡される。
「これで、各オメガユニットの位置を移動、これでトラクタービームの強さを調整。さあ、キャプテンやってみて」
画面を見ながら操作ができるようだ。ヴァーチャルクレーンゲームといった感じだ。
「良し、任せろ、俺はこういうのは得意だ!」
俺は画面を見ながら慎重にガニメデを引き上げていく。
みんなも気になるのか画面を覗き込んでいる。
バランスを考え、慎重に引き上げた結果、ガニメデが海面に顔を出す。あと少し。
「キャプテン、上手い」
「そうだろう」
チハルに褒められて、チラリとそちらを見てしまう。
何故かチハルは浮き輪をしていた。
「チハル、その浮き輪はどうした?」
「対津波防御」
「津波が来るのか?」
「念のため」
「そうか」
「あ!」
「あっ!」
目を離した隙に、ガニメデがバランスを崩して海中に落ちてしまった。
「しまった! チハルに気を取られてしくじった」
「集中力が足りないな。はい、交代よ」
ステファが俺からタブレットを取り上げる。
「私に任せておきなさい!」
ステファは意気込んでいたが、海中の半分も引き上げたところで、ガニメデを落としてしまう。
「次、私が、いいですか?」
次はリリスが挑戦するようだ。
リリスは悪戦苦闘していたが、殆ど引き上げられずに諦めて、タブレットを聖女に渡した。
「神の御心のままに」
聖女は割と上手く引き上げたが、海面にでたところで、滑り落ちてしまった。
「おー。ジーザス!」
聖女にあるまじき嘆き方だな。
聖女からタブレットを受け取ったのはアリアだった。
俺が、アリアもやるのか、という視線で見れば。
アリアは「当然やりますけど、何か?」と言いたそうな視線を返してきた。
アリアはリリスとどっこいどっこいだった。流石主従関係、似た者同士、といったところだ。
「みんな、なってない」
チハルがアリアからタブレットを受け取る。
「このゲームはこうする」
あれー。チハルさん。今ゲームって言いませんでしたか。
確かに、ゲームみたいに楽しんだけど。それを言っちゃいますかー。
チハルはタブレットを巧みに操ると、ガニメデを海中から引き上げ、そのまま、トラクタービームで衛星軌道まで引き上げてしまった。
「ざっとこんなもん」
チハルが珍しくドヤ顔だ。
「次は負けないわよ!」
「私も頑張ります!」
「ステファにリリス、次はないから」
完全にゲームと勘違いしてないか。
「えっ! リベンジの機会はないのですか?」
アリア、お前もか。
「どうでしょう、わざと一つ地上に落としてみては?」
聖女、お前、なんてこと言うんだ。
他の三人から期待の眼差しを向けられてしまう。
「なに、馬鹿なこと言ってるんだ。さあ、さっさと撤収するぞ!」
「はーい」
四人が明らかに落胆していたが、そんなことできるわけないだろう。
しかし、少し可哀想なので、船の工作室でクレーンゲームを作ってやることにした。
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜
西園寺若葉
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。
4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。
そんな彼はある日、追放される。
「よっし。やっと追放だ。」
自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。
- この話はフィクションです。
- カクヨム様でも連載しています。
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福論。〜飯作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
西園寺若葉
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる