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第一部 オメガユニット編
第48話 対決
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リリスにステファとチハルを紹介したら、何を誤解したかリリスを怒らせてしまった。
俺は懸命に弁解し、何とか二人のことをリリスにわかってもらおうとしたが、なにぶん説明が難しい。リリスに全く理解してもらえない。
チハルを買ったのは事実であるし、ステファが王女であることを話していいのかわからない。
全くもって困った状態だ。
その状態に、拍車をかけて混乱させる者がいた。
「おい、残念王子! 貴様、可愛い女の子を二人もはべらせやがって、リリスメリヤ嬢という婚約者がいながら、不誠実にも程があるぞ。今すぐ婚約を解消して、彼女を自由にしろ。そうすれば、彼女も心置きなく私と婚約できるだろう」
パラスク公国のハイネス王子だ。なぜ彼がここにいるのだろう?
そして、どうしてリリスと婚約する話をしている? あんなにリリスのことを毛嫌いしていたじゃないか。
「ついでにそちらの二人も私が面倒見てやるから、貴様はいつものように引き篭もっていろ!」
俺のことを不誠実だと言って置いて、自分はいいのか? 言っていることがめちゃくちゃだ。
こういう輩は相手にしないのが一番だ。無視、無視。
「リリスに理解してもらいたいけど、今ここで全てを話すわけにはいかないんだ。それをわかって欲しい」
「どうして、私に全てを話してくださらないのですか?」
「それはいずれ話すから……」
「おい、私を無視するな! 大体貴様のような残念王子は、リリスメリヤ嬢に相応しくないんだよ。彼女に相応しいのは私のように優秀な人間だ!」
「セイヤ様、ハイネス王子に好き勝手に言わせて置いていいのですか? セイヤ様は、そこらにいる人間には足元にも及ばない素晴らしい力をお持ちの筈。ここは一つ、その格の違いを見せつけてやるべきです」
「なんだと、残念王子に力なんてあるわけないだろう。魔法は使えないし、引き篭もっていて、剣の修行もしていない。やりあえば、俺だって五秒で勝てるぞ!」
「何を馬鹿なことを言ってるのですか、五秒で地べたを舐めるのはあなたの方です。ハイネス王子!」
俺がリリスに弁解している傍で、何故か、ハイネス王子と聖女が言い合いを始めた。
しかも、聖女によると俺には素晴らしい力があるらしい。が、そんなものは無い!
「わかった、なら相手になってやる!」
「いいでしょう。かかってきなさい!」
ハイネス王子と聖女が戦うのか……。聖女は戦えるのか?
「ということで、セイヤ様、けちょんけちょんにしちゃってください!」
「えっ? 俺がやるの。そんなの無理」
「わかっています。天界に行って、特別な力を手にして来たのですよね。隠しておく必要はないのですよ」
あれ、聖女の言ってるのは魔導拳銃のことか。よく知っているな?
そうだ、折角だからここで使ってみよう。
「わかったよ。やればいいんだろう。ハイネス王子、武器は何を使ってもいいのか?」
「残念王子に扱える武器があるのか? まあ、使えるなら何を使ってもいいぞ!」
「それじゃあ、好きに使わせてもらうよ」
「そうだ、ただやり合っただけでは面白くありませんから何か掛けましょう」
聖女がまた、とんでもないことを言い出した。
「そうですね。ハイネス王子が勝った場合、リリスお姉さまとセイヤ様の婚約の白紙撤回なんてどうでしょう」
「リリスメリヤ嬢が自由になるのだな。私はそれでいい」
「ちょっとララサ、何を勝手に!」
「お姉さま。先程からセイヤ様とお姉さまの話を聞いていれば、お姉さまはセイヤ様のことを信じられないご様子」
「そんなことはありません。私はセイヤ様を信じています。ただ……」
「なら、何故揉めているのですか。この際ですから、一度婚約を白紙に戻して、ゆっくり考え直してみてはいかがですか?
その後、改めてセイヤ様と婚約し直すか、他の方を選ばれるかはお姉さま次第です」
「そんな、私はセイヤ様から離れたくありません!」
「リリス、少し落ち着こうか。俺もリリスとは離れたくないよ。ようは俺が勝てば問題ないだろう」
「セイヤ様!」
「そうですね。セイヤ様が勝った場合ですが……、掛けを言い出したのは私ですから、私が賞品になりましょう。セイヤ様が勝った場合は、私はセイヤ様のものです」
「ララサ、セイヤ様のものになるってどういうことよ!」
「私はセイヤ様を信じていますからね。身も心も捧げる準備はできています」
「セイヤ様の婚約者は私よ!」
「セイヤ様を信じられない婚約者など要りません!」
あれ? 聖女はいつから俺に気があったんだ?
「キャプテン、もてもて」
「いやあー。聖女のあれは、もてもてと少し違うような……」
気があるというよりは、信仰しているという感じだ。
「聖女、俺が勝った場合に賞品はいらないよ。リリスが今まで通り、そばにいてくれるならそれでいい」
「そんな、遠慮なさらずともよろしいのですよ。どうしても、お姉さまを手放したくないなら。お姉さまが正妻、私が妾でも一向に構いません」
「ララサ。あなたね」
「いや、遠慮しておくよ」
「そうですか、残念です……」
「話はついたか、なら始めようか!」
ハイネス王子は待ちきれないようだ。
「そうですね。アリアさん。審判を頼めるかしら?」
「畏まりました。では、両者前へ。勝敗は私が判断させていただきます。相手を殺すような攻撃は禁止しますが、聖女様がいらっしゃるので、怪我程度なら治していただけるでしょう。遠慮なくやってください」
まあ、威力の設定は意識を失う程度でいいかな。
「それでは、準備はよろしいですか。始めてください」
ハイネス王子は杖を構えて魔法の詠唱を始めた。
俺は腰のホルスターから魔導拳銃の抜くと、狙いを定めて引き金を引いた。
バン!
風魔法がハイネス王子に当たり、三メートル程後ろに吹っ飛んだ。
成る程、意識を失う程度の設定でこの威力か。
打ちどころが悪いと死ぬ可能性もあるな。
ハイネス王子は意識を失って起きてこない。
勝敗の判定はどうなった?
審判のアリアを見ると呆然としている。
リリスも同様だ。
聖女は目をキラキラさせて、こちらを拝んでいる。
ステファは大丈夫だろうかとハイネス王子の様子を気にしている。
チハルは親指を立てて拳を突き出した。
「アリア、判定は!」
「あっ。勝者セイヤ王子!」
「聖女、ハイネス王子を診てやってくれ」
「はい。セイヤ様。仰せのままに」
聖女は完全に俺のことを神格化しているな。
「セイヤ様、その武器は?」
「魔導拳銃。天界で買ってきた」
「そうですか……」
どうもまだ、リリスとの間に気まずい空気が流れている。どうしたものだろうか。
「ねえ、セイヤ」
「どうしたステファ?」
「リリスメリヤさんを宇宙船に連れて行って、全てを話したらどうかしら」
「そうだな……」
「実際に見れば、話も理解できるだろうし。私のことも話して構わないわよ」
「そうか。悪いな。じゃあそうさせてもらおう」
俺はリリスと向き合って手を取った。
「リリス、全てを話すよ。そして、全てを見せるから、ついて来て欲しい」
「わかりました。どこまでもついて行きます」
そして、俺はリリスの手を引いてシャトルポッドに乗せる。
当然のように、チハルとステファも乗り込んでくる。
シャトルポッドは三人乗りだ。
「ステファとチハルは、ここで待っていてくれないか?」
「え? 置いてきぼりなの。少し心配なんだけど……」
「膝の上に乗せればいい」
チハルがとんでもないことを言う。
「膝の上って、リリスを俺の膝の上にか?」
「恥ずかしいわ。私、重くないかしら?」
「リリスなら重さを感じないさ」
「ちょっと待って下さい! そんなことは私が許しません。第一、お嬢様が行くなら私も行きます」
アリアから待ったがかかった。アリアはリリスの護衛も兼ねているから当然だ。
「まさか、天界に行かれるのですか? でしたら私もぜひ連れて行ってください!」
聖女も連れて行って欲しいらしい。縋りつかれてしまった。
聖女を連れて行っても大丈夫だろうか?
神などいないと知ることになり、苦しむことにならなければいいのだが……。
いやむしろ、俺が普通の人間だとわかってもらった方が、今後のためか。
結局、シャトルポッドをもう一機リモートで呼び寄せ、俺とリリスとアリアの三人、ステファとチハルと聖女の三人の二機で宇宙船に向かうことになった。
俺は懸命に弁解し、何とか二人のことをリリスにわかってもらおうとしたが、なにぶん説明が難しい。リリスに全く理解してもらえない。
チハルを買ったのは事実であるし、ステファが王女であることを話していいのかわからない。
全くもって困った状態だ。
その状態に、拍車をかけて混乱させる者がいた。
「おい、残念王子! 貴様、可愛い女の子を二人もはべらせやがって、リリスメリヤ嬢という婚約者がいながら、不誠実にも程があるぞ。今すぐ婚約を解消して、彼女を自由にしろ。そうすれば、彼女も心置きなく私と婚約できるだろう」
パラスク公国のハイネス王子だ。なぜ彼がここにいるのだろう?
そして、どうしてリリスと婚約する話をしている? あんなにリリスのことを毛嫌いしていたじゃないか。
「ついでにそちらの二人も私が面倒見てやるから、貴様はいつものように引き篭もっていろ!」
俺のことを不誠実だと言って置いて、自分はいいのか? 言っていることがめちゃくちゃだ。
こういう輩は相手にしないのが一番だ。無視、無視。
「リリスに理解してもらいたいけど、今ここで全てを話すわけにはいかないんだ。それをわかって欲しい」
「どうして、私に全てを話してくださらないのですか?」
「それはいずれ話すから……」
「おい、私を無視するな! 大体貴様のような残念王子は、リリスメリヤ嬢に相応しくないんだよ。彼女に相応しいのは私のように優秀な人間だ!」
「セイヤ様、ハイネス王子に好き勝手に言わせて置いていいのですか? セイヤ様は、そこらにいる人間には足元にも及ばない素晴らしい力をお持ちの筈。ここは一つ、その格の違いを見せつけてやるべきです」
「なんだと、残念王子に力なんてあるわけないだろう。魔法は使えないし、引き篭もっていて、剣の修行もしていない。やりあえば、俺だって五秒で勝てるぞ!」
「何を馬鹿なことを言ってるのですか、五秒で地べたを舐めるのはあなたの方です。ハイネス王子!」
俺がリリスに弁解している傍で、何故か、ハイネス王子と聖女が言い合いを始めた。
しかも、聖女によると俺には素晴らしい力があるらしい。が、そんなものは無い!
「わかった、なら相手になってやる!」
「いいでしょう。かかってきなさい!」
ハイネス王子と聖女が戦うのか……。聖女は戦えるのか?
「ということで、セイヤ様、けちょんけちょんにしちゃってください!」
「えっ? 俺がやるの。そんなの無理」
「わかっています。天界に行って、特別な力を手にして来たのですよね。隠しておく必要はないのですよ」
あれ、聖女の言ってるのは魔導拳銃のことか。よく知っているな?
そうだ、折角だからここで使ってみよう。
「わかったよ。やればいいんだろう。ハイネス王子、武器は何を使ってもいいのか?」
「残念王子に扱える武器があるのか? まあ、使えるなら何を使ってもいいぞ!」
「それじゃあ、好きに使わせてもらうよ」
「そうだ、ただやり合っただけでは面白くありませんから何か掛けましょう」
聖女がまた、とんでもないことを言い出した。
「そうですね。ハイネス王子が勝った場合、リリスお姉さまとセイヤ様の婚約の白紙撤回なんてどうでしょう」
「リリスメリヤ嬢が自由になるのだな。私はそれでいい」
「ちょっとララサ、何を勝手に!」
「お姉さま。先程からセイヤ様とお姉さまの話を聞いていれば、お姉さまはセイヤ様のことを信じられないご様子」
「そんなことはありません。私はセイヤ様を信じています。ただ……」
「なら、何故揉めているのですか。この際ですから、一度婚約を白紙に戻して、ゆっくり考え直してみてはいかがですか?
その後、改めてセイヤ様と婚約し直すか、他の方を選ばれるかはお姉さま次第です」
「そんな、私はセイヤ様から離れたくありません!」
「リリス、少し落ち着こうか。俺もリリスとは離れたくないよ。ようは俺が勝てば問題ないだろう」
「セイヤ様!」
「そうですね。セイヤ様が勝った場合ですが……、掛けを言い出したのは私ですから、私が賞品になりましょう。セイヤ様が勝った場合は、私はセイヤ様のものです」
「ララサ、セイヤ様のものになるってどういうことよ!」
「私はセイヤ様を信じていますからね。身も心も捧げる準備はできています」
「セイヤ様の婚約者は私よ!」
「セイヤ様を信じられない婚約者など要りません!」
あれ? 聖女はいつから俺に気があったんだ?
「キャプテン、もてもて」
「いやあー。聖女のあれは、もてもてと少し違うような……」
気があるというよりは、信仰しているという感じだ。
「聖女、俺が勝った場合に賞品はいらないよ。リリスが今まで通り、そばにいてくれるならそれでいい」
「そんな、遠慮なさらずともよろしいのですよ。どうしても、お姉さまを手放したくないなら。お姉さまが正妻、私が妾でも一向に構いません」
「ララサ。あなたね」
「いや、遠慮しておくよ」
「そうですか、残念です……」
「話はついたか、なら始めようか!」
ハイネス王子は待ちきれないようだ。
「そうですね。アリアさん。審判を頼めるかしら?」
「畏まりました。では、両者前へ。勝敗は私が判断させていただきます。相手を殺すような攻撃は禁止しますが、聖女様がいらっしゃるので、怪我程度なら治していただけるでしょう。遠慮なくやってください」
まあ、威力の設定は意識を失う程度でいいかな。
「それでは、準備はよろしいですか。始めてください」
ハイネス王子は杖を構えて魔法の詠唱を始めた。
俺は腰のホルスターから魔導拳銃の抜くと、狙いを定めて引き金を引いた。
バン!
風魔法がハイネス王子に当たり、三メートル程後ろに吹っ飛んだ。
成る程、意識を失う程度の設定でこの威力か。
打ちどころが悪いと死ぬ可能性もあるな。
ハイネス王子は意識を失って起きてこない。
勝敗の判定はどうなった?
審判のアリアを見ると呆然としている。
リリスも同様だ。
聖女は目をキラキラさせて、こちらを拝んでいる。
ステファは大丈夫だろうかとハイネス王子の様子を気にしている。
チハルは親指を立てて拳を突き出した。
「アリア、判定は!」
「あっ。勝者セイヤ王子!」
「聖女、ハイネス王子を診てやってくれ」
「はい。セイヤ様。仰せのままに」
聖女は完全に俺のことを神格化しているな。
「セイヤ様、その武器は?」
「魔導拳銃。天界で買ってきた」
「そうですか……」
どうもまだ、リリスとの間に気まずい空気が流れている。どうしたものだろうか。
「ねえ、セイヤ」
「どうしたステファ?」
「リリスメリヤさんを宇宙船に連れて行って、全てを話したらどうかしら」
「そうだな……」
「実際に見れば、話も理解できるだろうし。私のことも話して構わないわよ」
「そうか。悪いな。じゃあそうさせてもらおう」
俺はリリスと向き合って手を取った。
「リリス、全てを話すよ。そして、全てを見せるから、ついて来て欲しい」
「わかりました。どこまでもついて行きます」
そして、俺はリリスの手を引いてシャトルポッドに乗せる。
当然のように、チハルとステファも乗り込んでくる。
シャトルポッドは三人乗りだ。
「ステファとチハルは、ここで待っていてくれないか?」
「え? 置いてきぼりなの。少し心配なんだけど……」
「膝の上に乗せればいい」
チハルがとんでもないことを言う。
「膝の上って、リリスを俺の膝の上にか?」
「恥ずかしいわ。私、重くないかしら?」
「リリスなら重さを感じないさ」
「ちょっと待って下さい! そんなことは私が許しません。第一、お嬢様が行くなら私も行きます」
アリアから待ったがかかった。アリアはリリスの護衛も兼ねているから当然だ。
「まさか、天界に行かれるのですか? でしたら私もぜひ連れて行ってください!」
聖女も連れて行って欲しいらしい。縋りつかれてしまった。
聖女を連れて行っても大丈夫だろうか?
神などいないと知ることになり、苦しむことにならなければいいのだが……。
いやむしろ、俺が普通の人間だとわかってもらった方が、今後のためか。
結局、シャトルポッドをもう一機リモートで呼び寄せ、俺とリリスとアリアの三人、ステファとチハルと聖女の三人の二機で宇宙船に向かうことになった。
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