上 下
15 / 167
第一部 ドック編

第15話 ロストプラネット

しおりを挟む
 ピットのおっさんにアシスタントの購入を勧められたが、俺はお金を持っていなかった。

「金がないだ! 王族だろう?」
「それが、先程も言ったように片田舎でして。ギャラクティ貨なんて見たこともありません」

「おいおい、片田舎っていってもほどがあるぞ。どの辺だ」
「どの辺と言われても……、ここからワープ4で十日ということ以外、全くわかりません」

「ワープ4で十日の所って、そこまで片田舎じゃねえじゃねえか。だが、セレスト皇国なんて聞いたことねえぞ? もしかして、ロストプラネットなのか!」

「ロストプラネット?」
「戦争などでその星の文明が衰退してしまったり、航路が超新星爆発で使えなくなったり、理由は様々だがな、航宙管理局の航路から外れてしまって、記録が抹消されてしまった星のことだ」

「もしかするとそうかもしれませんね。この場合、航宙管理局に届けた方がいいんですか?」
「それは考え所だな。他の星と対等にやっていけるだけの何かが有ればそれもいいが、そうでないなら占領されるだけだぞ!」

「やはりそうなりますか……」
 先程、帝国とシリウス皇国の話を聞いたばかりだ。なんとなく、そんな気はしていた。

「航宙管理局に届けるのは、同盟を組めるような星を見つけてからの方がいいだろうな」
「そうですね。そうします」

「俺もこのことは他で話さないようにするから心配するな」
「そうしてもらえると助かります」

「だが、そうなるとお前さん1Gも持ってないんだな」
「そうですね」

「じゃあ、これから十日間どうするんだ?」
「船で寝起きするつもりですが」

「メンテナンス中は乗り組員でも乗船禁止だぞ」
「え、じゃあ俺はどこに寝ればいいんです? それに食事は?」

「それを俺が聞いたんだがな」
 おっさんが呆れている。

 ここで、俺はとんでもないことに思い至った。
「あれ、もしかして、メンテナンスの費用もかかるのですか?」
 日頃お金を使うことがないから、完全にすっぽ抜けていた。

「それは心配ない。お前さんの船はクワトロ無制限に入っているからな」
「クワトロ無制限?」

「対人、対物、本体が壊れた場合の無制限補償だけでなく、メンテナンスも無制限に補償される保険の制度だ。千年満期だから、後二百年は気にしなくても大丈夫だ」
 千年満期とか、どれだけだよ。宇宙の標準がよくわからん。

「そうですか、それは一安心なのですが、お金の問題をどうにかしないと今夜寝る場所に困ります」
「もう借金するしかねえな」

 借金か。できればしたくないのだが。
「借金するにしても、身元がわからない俺にお金を貸してくれる所があるでしょか」
「それは大丈夫だ。宇宙船を担保にすれば、どこでも喜んで貸してくれるぞ。ついでに、宿代だけでなく、こいつの購入資金とライセンスを取るための講習料も借りた方がいいぞ」

「宇宙船を担保にですか。仕方ないですね。アシスタントも必要なのでしょうからその分も借ります」
「そうか、アシスタントも購入でいいんだな?」
「はい」

「お買い上げありがとう。キャプテン」
「ああ、これからよろしくな、チハル」

 結局俺はアシスタントのチハルを購入することにした。

「それで、どこでお金が借りられるんです?」
「どこでもいいならギャラクシー銀行がお奨めだな。お前さんカードも持ってないんだろう」

「持ってないですね」
「カードがないと支払いできないぞ」
「そうなんですか?」

「心配だな。お前さん、常識がなさすぎるぞ。街に出るときにはアシスタントを連れて行け」
 ドックの中に街があるのか。これも常識か?

「船内以外でもアシスタントは使えるのですか?」
「普通は船内で使うものだが、お前さんより遥かに常識がある」
「外でもキャプテンの役に立てる」
 何か馬鹿にされている気もするが、宇宙での常識がないのは事実だし、チハルは可愛いからいいか。

「わかった、じゃあチハルを連れて行こう。まずは銀行かな」
「この書類を持っていけ。宇宙船を担保にするための書類だ」
「それではキャプテン、ギャラクシー銀行に案内する」

 俺はおっさんから書類を受け取ると、チハルに案内されて銀行に向かった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

Select Life Online~最後にゲームをはじめた出遅れ組

瑞多美音
SF
 福引の景品が発売分最後のパッケージであると運営が認め話題になっているVRMMOゲームをたまたま手に入れた少女は……  「はあ、農業って結構重労働なんだ……筋力が足りないからなかなか進まないよー」※ STRにポイントを振れば解決することを思いつきません、根性で頑張ります。  「なんか、はじまりの街なのに外のモンスター強すぎだよね?めっちゃ、死に戻るんだけど……わたし弱すぎ?」※ここははじまりの街ではありません。  「裁縫かぁ。布……あ、畑で綿を育てて布を作ろう!」※布を売っていることを知りません。布から用意するものと思い込んでいます。  リアルラックが高いのに自分はついてないと思っている高山由莉奈(たかやまゆりな)。ついていないなーと言いつつ、ゲームのことを知らないままのんびり楽しくマイペースに過ごしていきます。  そのうち、STRにポイントを振れば解決することや布のこと、自身がどの街にいるか知り大変驚きますが、それでもマイペースは変わらず……どこかで話題になるかも?しれないそんな少女の物語です。  出遅れ組と言っていますが主人公はまったく気にしていません。      ○*○*○*○*○*○*○*○*○*○*○  ※VRMMO物ですが、作者はゲーム物執筆初心者です。つたない文章ではありますが広いお心で読んで頂けたら幸いです。  ※1話約2000〜3000字程度です。時々長かったり短い話もあるかもしれません。

Solomon's Gate

坂森大我
SF
 人類が宇宙に拠点を設けてから既に千年が経過していた。地球の衛星軌道上から始まった宇宙開発も火星圏、木星圏を経て今や土星圏にまで及んでいる。  ミハル・エアハルトは木星圏に住む十八歳の専門学校生。彼女の学び舎はセントグラード航宙士学校といい、その名の通りパイロットとなるための学校である。  実技は常に学年トップの成績であったものの、ミハルは最終学年になっても就職活動すらしていなかった。なぜなら彼女は航宙機への興味を失っていたからだ。しかし、強要された航宙機レースへの参加を境にミハルの人生が一変していく。レースにより思い出した。幼き日に覚えた感情。誰よりも航宙機が好きだったことを。  ミハルがパイロットとして歩む決意をした一方で、太陽系は思わぬ事態に発展していた。  主要な宙域となるはずだった土星が突如として消失してしまったのだ。加えて消失痕にはワームホールが出現し、異なる銀河との接続を果たしてしまう。  ワームホールの出現まではまだ看過できた人類。しかし、調査を進めるにつれ望みもしない事実が明らかとなっていく。人類は選択を迫られることになった。  人類にとって最悪のシナリオが現実味を帯びていく。星系の情勢とは少しの接点もなかったミハルだが、巨大な暗雲はいとも容易く彼女を飲み込んでいった。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

トランスファー “空間とか異次元とかってそんなに簡単なんですか?”

ajakaty
SF
 香坂奏多(こうさかかなた)は、地方理系大学を卒業後、中堅企業に就職して2年目の24歳。休日の趣味といえば、読書に“ぼっちキャンプ”を少々嗜む程度の地味な男....  そんな....多少の悲しい生い立ちを除けば、ごく普通の青年が遭遇した超自然現象「次元連結」  同窓会に出席した帰り道、天文学的確率で発生した「次元連結」に遭遇した彼は....“平行世界の地球”に迷い込む!  そこは剣と魔法、数多の異種族、異形の魔物が溢れる、奏多が居た世界とは“異なる世界線をたどった”地球だった....  “次元間の移動”で発現した空間転移スキル「トランスファー」と....  “神様(=次元の管理者)”が、お供に付けてくれたフクロウ型改造モバイルフォン『異次元生存サポートガジェット』のミネルヴァを相棒に....  彼は異次元世界を駆ける...自身の生存と帰還を懸けて!!!

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

断罪された公爵令嬢に手を差し伸べたのは、私の婚約者でした

カレイ
恋愛
 子爵令嬢に陥れられ第二王子から婚約破棄を告げられたアンジェリカ公爵令嬢。第二王子が断罪しようとするも、証拠を突きつけて見事彼女の冤罪を晴らす男が現れた。男は公爵令嬢に跪き…… 「この機会絶対に逃しません。ずっと前から貴方をお慕いしていましたんです。私と婚約して下さい!」     ええっ!あなた私の婚約者ですよね!?

処理中です...