10 / 167
第一部 宇宙船編
第10話 デルタに聞いてみた
しおりを挟む
宇宙船に一人という特殊環境の中で、何もしていないと鬱状態になってしまう。
実益も兼ねて、俺はブリッジのキャプテンシートに座り魔力を込めていく。
この魔力は、第五層にある魔導核に充填されていく。
魔導核は、特殊な魔石によって造られた装置で、通常では考えられないほどの魔力を蓄えることができ、必要な時にそれを取り出すことができる。
いうなれば、蓄電池なのだが、その出力は原子力発電所といった感じだ。
いくつも並べられた巨大な魔導核は、これだけあればうちの国ぐらい、いくつでも買えると思える程だった。
宇宙では魔導核用の魔石が簡単に手に入るのだろうか。
一時間程魔力を込め続けると、充填率は十パーセント上昇した。
満タンに充填するまでに、まだ八時間以上かかる。
魔力は大丈夫なのだが、じっと座っているのが辛い。
何か暇つぶしになることがないだろうか?
俺はデルタを呼び出し、宇宙の情勢について聞いてみることにした。
「デルタ、最新の宇宙の情勢について知りたいのだが」
『それは無理です。現在本船にある情報は、五百年前のものです』
「五百年前だって?! 何でそんなに古いんだ」
『メンテナンスが五百年間行われていません。今回、メンテナンスを行えば、最新の情報を提供できるようになります』
おいおい! 五百年も放置されていたのか。この船、ちゃんとドックまでたどり着けるのか?
「五百年も放置されていて、大丈夫なのか?」
『大丈夫でないから、緊急シークエンスが発動しています!』
あれ、なんかデルタが怒り口調、俺、怒られてる?
「すみません」
『以後、気をつけて、定期メンテナンスは必ず実行してください!』
「わかりました。今後はこのようなことがないように十分注意します」
俺は勢いに負けてデルタに謝罪した。
『わかればいいんです。わかれば。ちゃんとやってくださいよ』
随分と人間くさい喋り方をするようになったもんだ。
そうなるとこの船は、五百年以上前に作られたことになるのか。
どう考えてもうちの星で作られた物ではないよな。
「この船はどこで作られたんだ?」
『八百年前にシリウス皇国で作られました』
作られたのは五百年前どころか、八百年前かよ。古。
そんなことより、シリウス皇国って、俺の姓はシリウスなんだけど、関係あるのか?
もしかして、八百年前はセレスト皇国でなく、シリウス皇国だった。
つまり、この船は自国製なのか?
「あの、シリウス皇国ってどこにあるんだ?」
『セクション2のシリウス星系です』
「セクション?」
『この宇宙における人類の生存圏は、銀河とゲートの先にあるセクションと呼ばれる銀河から離れた飛び地からなっています。銀河はその中心エリアCとそれを取り巻くエリアN、E、S、Wの四エリア、合わせて五エリアに分かれています。そして、飛び地であるセクションは全部で八つが確認されています。因みにここはセクション4です」
え、ゲート? またわからない言葉が出てきたが、シリウス皇国とセレスト皇国は別物だということはわかった。
そして、セレストは、宇宙においても片田舎であると。
「ということは、この船は、シリウス皇国から買ったのか?」
『違います。シリウス皇国の者が当船で駆け落ちし、セレストに流れ着きました』
「それはまた、随分と壮大な駆け落ちだな」
『駆け落ちしたのは、シリウス皇国の皇女と本船の開発者だった男です。一緒に、侍女と牧師と臣下八名を連れて来ました』
これって、セレストに伝わる神話そのままじゃないか!
降り立ったのは十二柱の神。
一つの皇国と八つの大公領。
それと、一つの教会。
数はぴったり。
そうなると、俺はシリウス皇国の王族の子孫となるのか。
それで姓がシリウスなのか。
それにしても、高々八百年前の出来事が神話になっているのか。
どれだけ文明が遅れていたんだろうな……。
だがそうか、この船は移民船。いや、王族専用船だったんだな。
下手に色々考えるより、デルタに聞けば一発だったな。
しかし、この船を造った開発者か……。
王族専用船を造るにあたり、皇女の注文を聞いているうちに恋に落ちたのだろうか?
そういえば、リリスはどうして俺のことを好きなのだろう?
いや、自惚れてはいけない。俺に好きになってもらえるところなどあるわけないではないか。
リリスは誰にでも優しい。それだけだ。俺だけが特別だとは思ってはいけない。
政略結婚で婚約者に決まってしまったから、優しくしてくれているのだ。
リリスは今頃どうしているだろう。
不出来な婚約者がいなくなって、清々していたりしないだろうか。
もう帰ってくるなと思っていたりして。
駄目だ。思考がどんどん悪い方に流れていく。
話し相手が、姿が見えないデルタだけでは、気分が落ち込んでいってしまう。
実益も兼ねて、俺はブリッジのキャプテンシートに座り魔力を込めていく。
この魔力は、第五層にある魔導核に充填されていく。
魔導核は、特殊な魔石によって造られた装置で、通常では考えられないほどの魔力を蓄えることができ、必要な時にそれを取り出すことができる。
いうなれば、蓄電池なのだが、その出力は原子力発電所といった感じだ。
いくつも並べられた巨大な魔導核は、これだけあればうちの国ぐらい、いくつでも買えると思える程だった。
宇宙では魔導核用の魔石が簡単に手に入るのだろうか。
一時間程魔力を込め続けると、充填率は十パーセント上昇した。
満タンに充填するまでに、まだ八時間以上かかる。
魔力は大丈夫なのだが、じっと座っているのが辛い。
何か暇つぶしになることがないだろうか?
俺はデルタを呼び出し、宇宙の情勢について聞いてみることにした。
「デルタ、最新の宇宙の情勢について知りたいのだが」
『それは無理です。現在本船にある情報は、五百年前のものです』
「五百年前だって?! 何でそんなに古いんだ」
『メンテナンスが五百年間行われていません。今回、メンテナンスを行えば、最新の情報を提供できるようになります』
おいおい! 五百年も放置されていたのか。この船、ちゃんとドックまでたどり着けるのか?
「五百年も放置されていて、大丈夫なのか?」
『大丈夫でないから、緊急シークエンスが発動しています!』
あれ、なんかデルタが怒り口調、俺、怒られてる?
「すみません」
『以後、気をつけて、定期メンテナンスは必ず実行してください!』
「わかりました。今後はこのようなことがないように十分注意します」
俺は勢いに負けてデルタに謝罪した。
『わかればいいんです。わかれば。ちゃんとやってくださいよ』
随分と人間くさい喋り方をするようになったもんだ。
そうなるとこの船は、五百年以上前に作られたことになるのか。
どう考えてもうちの星で作られた物ではないよな。
「この船はどこで作られたんだ?」
『八百年前にシリウス皇国で作られました』
作られたのは五百年前どころか、八百年前かよ。古。
そんなことより、シリウス皇国って、俺の姓はシリウスなんだけど、関係あるのか?
もしかして、八百年前はセレスト皇国でなく、シリウス皇国だった。
つまり、この船は自国製なのか?
「あの、シリウス皇国ってどこにあるんだ?」
『セクション2のシリウス星系です』
「セクション?」
『この宇宙における人類の生存圏は、銀河とゲートの先にあるセクションと呼ばれる銀河から離れた飛び地からなっています。銀河はその中心エリアCとそれを取り巻くエリアN、E、S、Wの四エリア、合わせて五エリアに分かれています。そして、飛び地であるセクションは全部で八つが確認されています。因みにここはセクション4です」
え、ゲート? またわからない言葉が出てきたが、シリウス皇国とセレスト皇国は別物だということはわかった。
そして、セレストは、宇宙においても片田舎であると。
「ということは、この船は、シリウス皇国から買ったのか?」
『違います。シリウス皇国の者が当船で駆け落ちし、セレストに流れ着きました』
「それはまた、随分と壮大な駆け落ちだな」
『駆け落ちしたのは、シリウス皇国の皇女と本船の開発者だった男です。一緒に、侍女と牧師と臣下八名を連れて来ました』
これって、セレストに伝わる神話そのままじゃないか!
降り立ったのは十二柱の神。
一つの皇国と八つの大公領。
それと、一つの教会。
数はぴったり。
そうなると、俺はシリウス皇国の王族の子孫となるのか。
それで姓がシリウスなのか。
それにしても、高々八百年前の出来事が神話になっているのか。
どれだけ文明が遅れていたんだろうな……。
だがそうか、この船は移民船。いや、王族専用船だったんだな。
下手に色々考えるより、デルタに聞けば一発だったな。
しかし、この船を造った開発者か……。
王族専用船を造るにあたり、皇女の注文を聞いているうちに恋に落ちたのだろうか?
そういえば、リリスはどうして俺のことを好きなのだろう?
いや、自惚れてはいけない。俺に好きになってもらえるところなどあるわけないではないか。
リリスは誰にでも優しい。それだけだ。俺だけが特別だとは思ってはいけない。
政略結婚で婚約者に決まってしまったから、優しくしてくれているのだ。
リリスは今頃どうしているだろう。
不出来な婚約者がいなくなって、清々していたりしないだろうか。
もう帰ってくるなと思っていたりして。
駄目だ。思考がどんどん悪い方に流れていく。
話し相手が、姿が見えないデルタだけでは、気分が落ち込んでいってしまう。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
気まぐれ女神に本気でキャラメイクされました
ハチミツ
ファンタジー
転生して平凡な人生を送ろうと思ったら、気まぐれな女神に本気でキャラメイクされちゃってました。
鈴木柑奈はごく普通の会社員として、ごく普通の幸せを望んでいた。
毎日を真面目に、懸命に生きて、将来は普通の幸せを手に入れるはずだった。
しかし暴漢に襲われて、志半ばでその命を落としてしまう。
死後の世界で、柑奈は引きこもりの女神から、「私の分身と共に世界を見てきて欲しい」と頼まれる。
柑奈は未練を果たすため、異世界で「普通の人生を送って、普通に幸せになる」ことを目指して転生する。
しかし転生後の姿は、女神が本気を出してつくりあげた、異世界を騒がせるほどの美少女だった。
女神から与えられたその容姿と能力のせいで、柑奈は次々と普通とはかけ離れたトラブルに巻き込まる。
それでも柑奈は、普通の人生を目指して一応精一杯あがいてみた。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
ちーとにゃんこの異世界日記
譚音アルン
ファンタジー
「吾輩は猫である」
神様の手違いで事故死してしまった元女子大生の主人公は異世界へと転生した。しかし、お詫びとして神より授かったのは絶大な力と二足歩行の猫の外見。喋れば神の呪いかもしれない自動変換されてしまう『にゃ〜語』に嘆きつつも、愛苦しいケット・シーとして生まれ変わったニャンコ=コネコの笑いあり、涙あり? ふるもっふあり!! の冒険活劇が今始まる――。
※2014-08-06より小説家になろうで掲載済。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる