上 下
3 / 167
第一部 プロローグ

第3話 起動

しおりを挟む
 俺が父上に命令されて宝物庫の整理をしていると、婚約者のリリスがいつもの様に侍女を連れてやって来た。

「セイヤ様がお部屋の外に出られるなんて珍しいですね。どうかされたのですか?」
 リリスは、痩せれば可愛らしいであろう顔を、心配そうにさせて尋ねてきた。

「なに、父上から宝物庫の整理を頼まれてやっていただけだ」
「そうですか。国王陛下の勅命を熟しているところなのですね。素晴らしいです」
 リリスは嬉しそうに俺を褒め称える。

「それ程のことでもないさ」
 褒められて、気分を良くした俺は胸を張る。

 そんな俺に、リリスの侍女アリアの冷たい視線が突き刺さる。
「そんな仕事は下働きのすることなんだよ。リリス様に褒められたからといって、いい気になってんじゃねえ」と、言いたげなのが、その表情からはっきり読み取れる。

 アリアは、リリスの専属の侍女で、護衛もこなす。
 ショートヘアーの栗色の髪で、キリリとした美人である。
 スタイルも、ボン、キュ、ボン、と抜群で、ボン、タプ、ボン、のリリスとは大違いだ。

「ところで、これは何ですか?」
 リリスが謎の球体を見て尋ねてきた。

「それが何かわからないんだ。宝物庫に入っていたから大事な物ではあるのだろうけど……」
「そうですか。でもこれだと、どっちが上だか下だかもわかりませんね」
「うーん、そう言われれば、これが正しい向きだかわからないな」

 俺は球の周りを改めて見て回る。
 継ぎ目の様子は、開きそうな部分が下になっている。

「もしかしたら、この部分が開くかもしれない。転がしてみよう」
 俺は兵士に言って、一緒に球を転がす。
 見た感じは運動会の大玉転がしだ。

 継ぎ目部分が見えるように転がして、継ぎ目部分を丹念に調べる。

「ん? このスイッチみたいなのは何だ」
 俺はそれを押してみた。

 ガチャ!

「ひぃー」
 球体から音がして、警備の兵士が身構える。

「リリス様」
 アリアが透かさずリリスを背中に庇う。

 ガチャン! ガチャガチャガチャ。

 球体の下の方から金属の脚が四本出てきて、球体を固定する。

 プシュー。ウィーン。

 球体の継ぎ目部分が、跳ね上げ扉のように、上方に開いた。
 驚いたが、爆発する危険はないようだ。
 俺は開いた口から中を覗き込む。

「殿下、危険ですよ!」
「セイヤ様、危険な真似はおやめください」
「大丈夫、大丈夫」
「リリス様は近付いてはなりません!」

 兵士とリリスが止めるように言うが、俺は構わず中を確認する。
 アリアはリリスが近付かないように、リリスを押さえている。

 中には座席が三席、前に一つ、後に二つ並んでいた。
「定員三名だな」

 正面にはハンドルやレバーがあり、まるで飛行機のコックピットのようである。

「これは飛行艇か、何かか?」

 俺は中に入って座席に座ってみる。

「さて、メインスイッチはどれかな?」

 俺はそれっぽいスイッチを押してみた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福論。〜飯作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

西園寺若葉
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺若葉
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

処理中です...