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第一部 プロローグ
第2話 謎の球体
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引き篭り王子の俺は、「部屋に引き篭ってないで少しは働け」という国王陛下の命令で、宝物庫の整理に来ていた。
王家の宝物庫といっても、所詮は片田舎の国である。
中に入ってみたがたいした物はない。
宝物庫というより物置に過ぎない。
それでも警備の兵士がいるのは貴重な魔道具もあるからだ。
昔の王族は今よりも魔力が強く、魔法技術も進んでいた。
それが、代を重ねるごとに魔力は衰え、魔法技術は失われていったようだ。
なので、魔道具の中には今では再現できない物がある。
壊れればそれっきりだ。
俺は、魔道具を壊さないように、慎重に片付けをすることにしたのだが。
「何だ、この丸いのは?」
宝物庫の真ん中に、二メートル位の球体がドーンと鎮座していた。
「片付けの邪魔だな。おーい! ちょっと手伝ってくれ!」
俺は外で警備している兵士を呼んだ。
「なんですか殿下? 私の仕事は警備ですから、片付けは手伝いませんよ」
「そう言わずに、このでかいのを外に出すだけでも手伝ってくれよ」
「仕方ないですね。これだけですからね」
二人で力を合わせて球体を外に出す。
といっても、兵士が魔法で持ち上げて、俺が手で押す感じだ。
「なんですかねこれ?」
「なんだろうな?」
外に出した球体の周りを、二人で見て回る。
金属製で所々継ぎ目があり、近未来的だ。
「美術品というよりは魔道具ですかね」
「魔道具か……。これだけ大きければ、俺が魔力を込めても壊れないんじゃないか」
「あっ! 殿下、駄目ですよ」
「まあ、いいから、いいから」
俺は、兵士が止めるのも聞かずに、球体に魔力を込める。
俺の手の甲に痣が浮かび上がる。
いや、痣というより紋章と言った方がかっこいいな。
この紋章は、記録によると過去には王族の者に度々現れていた。
だが、現在紋章が出るのは、王族の中でも俺だけだ。
これも、俺が先祖返りだと言われる理由だ。
一頻り魔力を込めたが、爆発する様子はない。
「うーむ。魔道具ではなかったのかな」
「ほっ。危ない真似はやめてください殿下、魔道具でなかったからよかったですが、魔道具なら爆発したかもしれないんですよ」
「爆発しなかったから大丈夫だ」
「結果から言えばそうですが、もし何かあれば、いつもいらっしゃる婚約者に心配をかけますよ」
「うむ、そうだな。リリスに心配かけるのはまずいな……」
こんな引き篭りでも一応王族である。幼い時から婚約者が決まっている。
「そういえば、今日は婚約者のブタ公女はいらっしゃらないのですか?」
「お前な。ブータニア大公家のリリスメリヤ公女だ。変な略し方をするんじゃない。不敬罪で処罰するぞ!」
「すみません。つい、口が滑りました」
婚約者のリリスは、ブータニア大公領の公女だ。
一応、セレスト皇国の一領となっているが、自治権が認められていて、経済力からすれば向こうのほうが遥かに上だ。
セレスト皇国が農地しかない片田舎なのに対して、ブータニア大公領は鉱山を有し、そこから採掘される鉱石により、大いに潤っている。
だから、本来であれば、こんな引き篭りの第三王子より良い縁談があって当然なのであるが、いかんせん見た目が……。さっき兵士が言った通りなのである。
出会った当初、五歳位の頃はそんなことはなかったのに、今の容姿はポッチャリを通り越して、ボッテリしている。
それでも性格はとても優しいよい娘で、引き篭りの俺にも笑顔を向けて優しく甘やかしてくれる。
これで、痩せていれば申し分ないのだが、彼女は、他人に甘く、自分にも甘い。おまけに、甘い物が大好きで、ダイエットなんてまったく考えていなのだ。
「セイヤ様~。こんな所にいらっしゃったのですか。お部屋にいらっしゃらないので探してしまいました~」
噂をすれば何とやらだ。王宮の方から、腰近くまであるブロンドのロングヘアーを揺らしながら、リリスが侍女を連れてやって来た。
王家の宝物庫といっても、所詮は片田舎の国である。
中に入ってみたがたいした物はない。
宝物庫というより物置に過ぎない。
それでも警備の兵士がいるのは貴重な魔道具もあるからだ。
昔の王族は今よりも魔力が強く、魔法技術も進んでいた。
それが、代を重ねるごとに魔力は衰え、魔法技術は失われていったようだ。
なので、魔道具の中には今では再現できない物がある。
壊れればそれっきりだ。
俺は、魔道具を壊さないように、慎重に片付けをすることにしたのだが。
「何だ、この丸いのは?」
宝物庫の真ん中に、二メートル位の球体がドーンと鎮座していた。
「片付けの邪魔だな。おーい! ちょっと手伝ってくれ!」
俺は外で警備している兵士を呼んだ。
「なんですか殿下? 私の仕事は警備ですから、片付けは手伝いませんよ」
「そう言わずに、このでかいのを外に出すだけでも手伝ってくれよ」
「仕方ないですね。これだけですからね」
二人で力を合わせて球体を外に出す。
といっても、兵士が魔法で持ち上げて、俺が手で押す感じだ。
「なんですかねこれ?」
「なんだろうな?」
外に出した球体の周りを、二人で見て回る。
金属製で所々継ぎ目があり、近未来的だ。
「美術品というよりは魔道具ですかね」
「魔道具か……。これだけ大きければ、俺が魔力を込めても壊れないんじゃないか」
「あっ! 殿下、駄目ですよ」
「まあ、いいから、いいから」
俺は、兵士が止めるのも聞かずに、球体に魔力を込める。
俺の手の甲に痣が浮かび上がる。
いや、痣というより紋章と言った方がかっこいいな。
この紋章は、記録によると過去には王族の者に度々現れていた。
だが、現在紋章が出るのは、王族の中でも俺だけだ。
これも、俺が先祖返りだと言われる理由だ。
一頻り魔力を込めたが、爆発する様子はない。
「うーむ。魔道具ではなかったのかな」
「ほっ。危ない真似はやめてください殿下、魔道具でなかったからよかったですが、魔道具なら爆発したかもしれないんですよ」
「爆発しなかったから大丈夫だ」
「結果から言えばそうですが、もし何かあれば、いつもいらっしゃる婚約者に心配をかけますよ」
「うむ、そうだな。リリスに心配かけるのはまずいな……」
こんな引き篭りでも一応王族である。幼い時から婚約者が決まっている。
「そういえば、今日は婚約者のブタ公女はいらっしゃらないのですか?」
「お前な。ブータニア大公家のリリスメリヤ公女だ。変な略し方をするんじゃない。不敬罪で処罰するぞ!」
「すみません。つい、口が滑りました」
婚約者のリリスは、ブータニア大公領の公女だ。
一応、セレスト皇国の一領となっているが、自治権が認められていて、経済力からすれば向こうのほうが遥かに上だ。
セレスト皇国が農地しかない片田舎なのに対して、ブータニア大公領は鉱山を有し、そこから採掘される鉱石により、大いに潤っている。
だから、本来であれば、こんな引き篭りの第三王子より良い縁談があって当然なのであるが、いかんせん見た目が……。さっき兵士が言った通りなのである。
出会った当初、五歳位の頃はそんなことはなかったのに、今の容姿はポッチャリを通り越して、ボッテリしている。
それでも性格はとても優しいよい娘で、引き篭りの俺にも笑顔を向けて優しく甘やかしてくれる。
これで、痩せていれば申し分ないのだが、彼女は、他人に甘く、自分にも甘い。おまけに、甘い物が大好きで、ダイエットなんてまったく考えていなのだ。
「セイヤ様~。こんな所にいらっしゃったのですか。お部屋にいらっしゃらないので探してしまいました~」
噂をすれば何とやらだ。王宮の方から、腰近くまであるブロンドのロングヘアーを揺らしながら、リリスが侍女を連れてやって来た。
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