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第二章
第75話 イーサク王子の帰還
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**********[神聖王国第一王子イーサク視点]
「国王陛下。イーサク王子が戻られました」
私は係りの者に連れられ国王の執務室に入る。
「何、もう戻ったのか。シルキーは今し方出たばかりだぞ」
「シルキーがどうかしたのですか?」
「おお、イーサク。戻ったか」
「予定を早めて創世の迷宮から今戻りました」
「途中シルキーとは会わなかったか」
「いえ」
「そうか、途中ですれ違ってしまったか。実はお前を呼び戻すためにシルキーを代わりに行かせたばかりなのだ」
「そうでしたか。それは間が悪かったですね」
「それで、お前は現在起きている問題をどこまで把握している」
「大体のことは把握しているつもりです。自分の身体に変化があったことでもありますし」
「やはりお前にも変化があったのか」
「はい。一般人と変わらなくなりました」
「そうか、それでシューサクも交えて話し合いの場を持ちたいのだが」
「父上、その前にいろいろと報告しなければならないことがあります」
「そうだな、隣国の王女たちのこともあったな」
「まず、隣国の王女たちですが、国内が混乱していることを理由に、予定を繰り上げ、表彰式を前倒しでおこない、自国に帰っていただきました」
「そうか、相手はそれで納得していたか」
「はい、いろいろと交渉した結果、襲撃についても問題にしないということで帰られました」
王女殿下はこれ以上厄介ごとに巻き込まれるのは懲り懲りと言った顔だったが、公爵令嬢は目的のものが得られたとニコニコ顔で帰っていった。
「何、襲撃の件も収めてきたのか。いったいどんな交渉をした」
「それは、簡単に言うと、今回の襲撃で死傷した者への見舞い金をこちらが出す。エルフ原理主義同盟の資産をニコラス=アウラン子爵と北の公爵令嬢との共有資産とする。それと、今回の創世の迷宮攻略で得た物を私と北の公爵令嬢とで共同所有する。の三点です」
「ん? 補償の相手は王女でなく、北の公爵令嬢なのか」
「見舞金以外はそうです。今回帝国軍から王女を助け出したのも、ニコラスを同盟から助けたのも公爵令嬢です。創世の迷宮の攻略も彼女がいなければ不可能でした。ですので、後ろの二つは補償というより褒賞ですね」
「そうか。あちらがそれでいいならそれで進めることにしよう。正直、エルフ原理主義同盟と帝国軍による襲撃の後始末については頭を抱えていたのだ。死傷者への補償と同盟の資産没収で済んで何よりだ。帝国軍については何も言ってこなかったのだな」
「それなのですが、どうも公爵令嬢たちは我々が帝国軍を見つけられないと踏んでいるようです。王女を帝国軍から救い出したことも考えると、あちらはこちら以上に帝国軍の情報を掴んでいるのかも知れません」
「うむ。その辺は今後の交渉次第か。兎に角、我が国内で帝国軍に勝手にされては困るからの」
「それと重要な報告があります。北の公爵令嬢の協力で創世の迷宮を完全攻略しました」
「ああ、それで迷宮で得た物を二人で共同所有するのだな」
「それで構いませんか?」
「もともと迷宮で得た物は、それを得た者の所有になる決まりだ、二人で得たのなら二人で納得のいく分け方をすれば良い。まして、共同所有なら問題なかろう」
「ありがとうございます」
「礼を言うほど莫大な財宝が出たのか。いや、共同所有ということは貴重なアイテムか」
「そうですね。今回迷宮で得た物はこちらになります」
私は創世の書の写しを父に示す。勿論本物は公爵令嬢が持って帰った。
「ほー。古い書物か。何が書いてある」
「中をお見せしてもよろしいですが、内容は秘密にしていただけますか」
「そんな秘密にしなければならない内容なのか」
「そうですね。今この内容が世間に知れ渡るとまずいかも知れません。百年後なら公開しても大丈夫です」
「そうか、わかった。秘密にしよう。見せてみろ」
「どうぞ」
父は創世の書を受け取るとゆっくりと表紙を開いた。そして、確認するようにゆっくりと読み進める。最後の頁まで読み終わるとゆっくりと本を閉じ溜息を吐いた。
「はー。今起きていることは神の意思なのだな」
私はゆっくり頷いた。
**********[神聖王国第四王女シルキー視点]
私が創世の迷宮に着くと、そこには誰もいませんでした。
イーサクお兄様は勿論、隣国の王女も、公爵令嬢も、ニコラス子爵の姿もありませんでした。
場所は創世の迷宮で間違いありません。
「シルキー王女殿下、近くの者に聞いてきたところ、イーサク王子殿下とニコラス子爵は王都に、隣国の王女一行は隣国に帰られたようです」
「そんな。お兄様とすれ違ってしまったの」
「どうもそのようです」
「表彰式はどうなったのです」
「イーサク王子殿下が取り仕切って、予定を早めて行ったようです」
「それで、王女一行も帰られてしまったのですね」
「そのようです」
「そうすると困ったことになりました。お父様から託されたこの親書、どういたしましょう」
「一度王都に戻られて、国王陛下と相談されてはいかがでしょう」
「そうしたいところなのですが、シューサクお兄様を差し置いて得たこの使命を、何の成果も出せず王都に帰るのは心苦しいのです。それに、国の命運を左右する重要な親書、早く渡した方が良いに決まっています」
「でしたら、隣国の王女一行を追いかけるほかありません。急げば国境を超える前に追いつけるでしょう」
「そうですね。では急いで追いかけましょう」
結局、その日は隣国の王女一行に追いつくことは出来ませんでした。それどころか、王女一行の足跡を掴むことすらできなかったのです。こちらに来るときに襲撃されたそうですから、警戒して隠密行動をとっているのかもしれません。
厄介なことになりました。兎に角、急いで捜索して見つけ出さねばなりません。何としてもこの親書を届けるのです。
**********[北の公爵邸、イライザとナターシャ王女の会話]
「ナターシャ王女殿下。王都に転移するのは一週間後でいいですか」
「そうね。それまでこの北の公爵邸でレオンとゆっくりさせてもらうわ」
「はいはい。どうぞご自由に」
「国王陛下。イーサク王子が戻られました」
私は係りの者に連れられ国王の執務室に入る。
「何、もう戻ったのか。シルキーは今し方出たばかりだぞ」
「シルキーがどうかしたのですか?」
「おお、イーサク。戻ったか」
「予定を早めて創世の迷宮から今戻りました」
「途中シルキーとは会わなかったか」
「いえ」
「そうか、途中ですれ違ってしまったか。実はお前を呼び戻すためにシルキーを代わりに行かせたばかりなのだ」
「そうでしたか。それは間が悪かったですね」
「それで、お前は現在起きている問題をどこまで把握している」
「大体のことは把握しているつもりです。自分の身体に変化があったことでもありますし」
「やはりお前にも変化があったのか」
「はい。一般人と変わらなくなりました」
「そうか、それでシューサクも交えて話し合いの場を持ちたいのだが」
「父上、その前にいろいろと報告しなければならないことがあります」
「そうだな、隣国の王女たちのこともあったな」
「まず、隣国の王女たちですが、国内が混乱していることを理由に、予定を繰り上げ、表彰式を前倒しでおこない、自国に帰っていただきました」
「そうか、相手はそれで納得していたか」
「はい、いろいろと交渉した結果、襲撃についても問題にしないということで帰られました」
王女殿下はこれ以上厄介ごとに巻き込まれるのは懲り懲りと言った顔だったが、公爵令嬢は目的のものが得られたとニコニコ顔で帰っていった。
「何、襲撃の件も収めてきたのか。いったいどんな交渉をした」
「それは、簡単に言うと、今回の襲撃で死傷した者への見舞い金をこちらが出す。エルフ原理主義同盟の資産をニコラス=アウラン子爵と北の公爵令嬢との共有資産とする。それと、今回の創世の迷宮攻略で得た物を私と北の公爵令嬢とで共同所有する。の三点です」
「ん? 補償の相手は王女でなく、北の公爵令嬢なのか」
「見舞金以外はそうです。今回帝国軍から王女を助け出したのも、ニコラスを同盟から助けたのも公爵令嬢です。創世の迷宮の攻略も彼女がいなければ不可能でした。ですので、後ろの二つは補償というより褒賞ですね」
「そうか。あちらがそれでいいならそれで進めることにしよう。正直、エルフ原理主義同盟と帝国軍による襲撃の後始末については頭を抱えていたのだ。死傷者への補償と同盟の資産没収で済んで何よりだ。帝国軍については何も言ってこなかったのだな」
「それなのですが、どうも公爵令嬢たちは我々が帝国軍を見つけられないと踏んでいるようです。王女を帝国軍から救い出したことも考えると、あちらはこちら以上に帝国軍の情報を掴んでいるのかも知れません」
「うむ。その辺は今後の交渉次第か。兎に角、我が国内で帝国軍に勝手にされては困るからの」
「それと重要な報告があります。北の公爵令嬢の協力で創世の迷宮を完全攻略しました」
「ああ、それで迷宮で得た物を二人で共同所有するのだな」
「それで構いませんか?」
「もともと迷宮で得た物は、それを得た者の所有になる決まりだ、二人で得たのなら二人で納得のいく分け方をすれば良い。まして、共同所有なら問題なかろう」
「ありがとうございます」
「礼を言うほど莫大な財宝が出たのか。いや、共同所有ということは貴重なアイテムか」
「そうですね。今回迷宮で得た物はこちらになります」
私は創世の書の写しを父に示す。勿論本物は公爵令嬢が持って帰った。
「ほー。古い書物か。何が書いてある」
「中をお見せしてもよろしいですが、内容は秘密にしていただけますか」
「そんな秘密にしなければならない内容なのか」
「そうですね。今この内容が世間に知れ渡るとまずいかも知れません。百年後なら公開しても大丈夫です」
「そうか、わかった。秘密にしよう。見せてみろ」
「どうぞ」
父は創世の書を受け取るとゆっくりと表紙を開いた。そして、確認するようにゆっくりと読み進める。最後の頁まで読み終わるとゆっくりと本を閉じ溜息を吐いた。
「はー。今起きていることは神の意思なのだな」
私はゆっくり頷いた。
**********[神聖王国第四王女シルキー視点]
私が創世の迷宮に着くと、そこには誰もいませんでした。
イーサクお兄様は勿論、隣国の王女も、公爵令嬢も、ニコラス子爵の姿もありませんでした。
場所は創世の迷宮で間違いありません。
「シルキー王女殿下、近くの者に聞いてきたところ、イーサク王子殿下とニコラス子爵は王都に、隣国の王女一行は隣国に帰られたようです」
「そんな。お兄様とすれ違ってしまったの」
「どうもそのようです」
「表彰式はどうなったのです」
「イーサク王子殿下が取り仕切って、予定を早めて行ったようです」
「それで、王女一行も帰られてしまったのですね」
「そのようです」
「そうすると困ったことになりました。お父様から託されたこの親書、どういたしましょう」
「一度王都に戻られて、国王陛下と相談されてはいかがでしょう」
「そうしたいところなのですが、シューサクお兄様を差し置いて得たこの使命を、何の成果も出せず王都に帰るのは心苦しいのです。それに、国の命運を左右する重要な親書、早く渡した方が良いに決まっています」
「でしたら、隣国の王女一行を追いかけるほかありません。急げば国境を超える前に追いつけるでしょう」
「そうですね。では急いで追いかけましょう」
結局、その日は隣国の王女一行に追いつくことは出来ませんでした。それどころか、王女一行の足跡を掴むことすらできなかったのです。こちらに来るときに襲撃されたそうですから、警戒して隠密行動をとっているのかもしれません。
厄介なことになりました。兎に角、急いで捜索して見つけ出さねばなりません。何としてもこの親書を届けるのです。
**********[北の公爵邸、イライザとナターシャ王女の会話]
「ナターシャ王女殿下。王都に転移するのは一週間後でいいですか」
「そうね。それまでこの北の公爵邸でレオンとゆっくりさせてもらうわ」
「はいはい。どうぞご自由に」
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