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第二章
第69話 創世の迷宮行き 王女サイド
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**********[第一王女ナターシャ視点]
「何故、妾が第一王子の代わりを務めねばならぬ」
自分が表彰されるのだから、自分が行けば良いのだ。大体、功労者は北の公爵令嬢で、第一王子は付いていっただけという話ではないか。表彰されること自体がおかしい。余程の厚顔でもない限り辞退しているところだ。
「ですが王女殿下、これは国外訪問の良い機会ですよ。北の公爵令嬢も一緒ですから、いろいろと教えていただいてはどうですか」
「なぜ妾が教えを請わねばならぬ!」
確かに公爵令嬢は優秀な様で、最近では王宮内でも一目置かれているが、それでも妾に面と向かって教えを請えと失礼であろう。
「王女殿下が気乗りしないならば仕方ありません。誰か他の人に行ってもらいましょう」
「いや、まだ行かないとは言っていない。行っても構わんが一つ条件がある」
「何でしょう?」
話を持ってきた侍女が面倒くさそうな顔をする。
「北の公爵令嬢の弟のレオンを、妾の護衛兼話し相手として連れて行く」
レオンとの繋がりを深めるのに良い機会だ。こうでもしないとなかなか会えんからな。
「レオン様ですか。ふふーん。わかりました。そのように調整いたします」
何故か侍女はニヤニヤ笑いながら出ていった。さっきまで面倒くさそうにしていたのに何だ、あれは。
創世の迷宮への出発の日、妾の馬車には、いつもの侍女と護衛の女騎士の他に、レオンが乗り込んでいた。この馬車に男の人が乗るのは大変珍しいことだ。
女三人と男一人を乗せて馬車が出発した。公爵令嬢たちは別の馬車だ。
女が三人集まると姦しいとはよく言ったもので、レオンがいることもお構いなしに女子トークが始まった。最近流行りのファッションやお気に入りのスイーツなど話題には事欠かない。特に恋愛話になると、レオンが槍玉に上がっていた。
「レオン様は、婚約者はいらっしゃらないのですか」
「いや、僕はまだいないな」
「それでは、心に決めている方とかは」
「それもいない」
「どのような女性がお好みなんですか」
「これといって特には」
「私たち三人の中では、誰が一番好みです」
「三人とも綺麗だから、決められないな」
「まあ、三人まとめてですか。男らしいですね」
「王女殿下、よかったですね。私たち三人まとめてもらっていただけるそうですよ」
「いや、僕が言ったのはそういう意味ではなくて」
「あら、王女殿下はお嫌いですか」
「そんなことはないが」
レオンが助けを求める視線をこちらに向ける。
「お前たち、いい加減にしろ、レオンが困っているだろう」
「あらやだ、二人でアイコンタクトなんかして。二人はもうそういう仲なのですね」
「何か、私たちはお邪魔なようですね」
レオンだけでなく、妾にも矛先が向いているようである。
「いい加減にしろと言っているだろう」
「ですが王女殿下、王女殿下も来年には高等学院に入学されます。それまでには婚約者候補の一人や二人いませんと」
「わかっている。それまでには決める」
高等学院入学時に、第一王子は既に婚約していたし、第二王子も婚約者候補がいた。妾にも、婚約者候補の話が何人かきている。レオンもその一人だ。
妾はちらりとレオンを盗み見る。
「アラー。ふふふふ」
「王女殿下は既に心に決めた人がおいでの様子で」
「そ、そんなのはまだいない」
思わず大声を上げてしまった。
そう、そんなのはまだいない。レオンは、北の公爵家に第三王子を支持してもらうために親しくなったのであって、それ以上でも、それ以下でもない。これは打算で恋愛感情では決してない。
創世の迷宮行きの旅は順調で、王都を出て5日目、既にエルファンド神聖王国に入っている。
「ですから、女の子は誰でも、ピンチの時に王子様に助けてもらいたいと思っているものなのですよ」
「ピンチの時助けるのは護衛の役目だろう。職務放棄するつもりか」
「いえ、王女殿下、そういいことではなくて、ですね」
あいも変わらず私たちはお喋りに夢中だ。
その時、急に外が慌ただしくなり、護衛隊の叫び声が聞こえた。
「襲撃だ」
レオンと侍女が妾の両側を固め、護衛の女騎士が馬車の窓から様子を伺う。
「まずいですね。敵の人数がこちらの倍以上います。しかもかなりの手練れのようです。ただの賊ではありませんね」
「姉さんたちの馬車はどうなっています」
「そちらには目もくれず、こちらに集中していますね。このままでは取り囲まれるのも時間の問題です」
「何とかならんのか」
「ご命令とあれば、私の命と引き換えに血路を開きますが。その場合、レオン様が王女殿下を連れてお逃げください」
「いや、僕が足止めしよう」
レオンが立ち上がると馬車の扉に手をかけた。
「待って、こんな平原の真ん中で逃げるのは難しい。一旦降参して逃げる機会を伺うとしよう」
程なくして、馬車は完全に取り囲まれてしまった。
「抵抗は無意味だ。大人しく出てこい。そうすれば手荒な真似はしない」
「わかったわ。ですが王女殿下に手を出すようであれば、その時は黙っていないわよ」
「お前たちは人質だ。向こうが言う事を聞けば手出しはしない」
襲撃者は公爵令嬢の載っている前の馬車を顎で示す。
私たちは打合せ通り大人しく馬車を降りた。
「そこの男、こっちにこい」
襲撃者はレオンを連れて行った。
「ちょっと、話が違うじゃない」
「向こうの馬車のやつらが言う事を聞けば何もしない」
私たちが捕まってしまったため、公爵令嬢たちも抵抗することなく投降したようだ。
レオンも無事に帰ってきた。
「レオン、無事か、怪我はないか」
「大丈夫です。しかし、悔しいです。僕たちが人質になっていなければ、姉さんたちだけなら逃げられたかも知れないのに」
レオンは悔しさに、拳を固めていた。
その後私たちは襲撃者が用意した護送用の馬車に乗せられ、運ばれることとなった。公爵令嬢たちとは別の馬車だ。
私は縛られていないが、レオン達三人は縛られている。
公爵令嬢たちは別の馬車なので様子が分からないが、当然、縛られているだろう。逃げ出すにしても、向こうの様子が分からないのは都合が悪い。この先一緒になる機会があるだろうか。
「姉さん」
どうしたら逃げられるか考えを巡らせていると、不意にレオンが何か呟いた。
「どうかしましたかレオン」
「いえ、何でもありません、ナターシャ殿下」
その後、レオンは何か考え込んでいるようだ。一体何を考えているのだろう。妾は知らぬうちにレオンを見つめていた。
レオンが顔を上げこちらをみつめた。思わず見つめ合ってしまう。
「王女殿下、こんな時に申し訳ありませんが、いや、こんな時だからこそお願いします」
「何です。レオン。以前、レオンのためなら何でもすると約束したではないか。それに王女ではなくナターシャと呼べとも」
「では、ナターシャ、僕のものになってくれ」
「ななななんです。それは」
いきなり、こんな時にプロポーズなのか。確かに妾もレオンのことを憎からず思っていたが、いきなりすぎだろう。それに時と場所を考えてほしい。もっとロマンチックな場面がいくらでもあるだろう。いや、これはロマンチックな場面なのか、ピンチのお姫様を救い出す王子なのか。
「言葉道理だ、ナターシャに僕の所有物になってほしいんだ」
「所有物って」
ガーン。何故いきなりもの扱い。まさかこんな人だとは思わなかった。女をものとしか見ていない最低の人間だわ。妾のときめきを返せ。
「所有物になってくれれば、僕は君をここから命に代えても救い出そう」
そう、これは取引なのだな。救ってやるから自分のものになれ。最低だ。でもそっちがその気なら、こっちにも考えがある。最初からこちらも打算で近付いたのだ。この身を投げ打ってでも、と考えていたのだ。それを貫くのみだ。
「……一つだけ条件がある」
「何ですか」
「レオンの所有物になる代わりに、第三王子を支持してもらえるか」
「承知した。第三王子を支持しよう」
「分かった。今から妾は、レオンの所有物だ」
妾はレオンに深々と頭を下げた。
これでいいのだ。これで北の公爵家は第三王子派だ。王族の娘たるもの政略結婚は当然のことだ。それがどんな不幸な結婚であっても。扱いが奴隷以下の所有物であったとしても、だ。
「王女殿下のご決断に感謝します」
突然目の前に公爵令嬢が現れ、妾に礼をとった。
「イライザ嬢! どこから?」
「転移してきました。ここから、王女殿下たちを連れて、転移して逃げます。シリーお願い」
「畏まりました」
妾たちは転移魔法で襲撃者の馬車から逃げのびたのだった。
転移先はどこかの屋敷のホールのようだ。
「ここは、どこです?」
「北の公爵家の屋敷です」
「そんな長距離をこの人数で跳んだのか」
妾は驚いて目を丸くする。
その後、騒ぎを聞きつけた北の公爵が駆けつけ、イライザ嬢と問答を始めた。そして、イライザ嬢は再び転移して消えてしまった。
「ナターシャ殿下、この度はとんでもないことに巻き込んでしまい、申し開きの余地もありません」
「うむ、構わん。無事に脱出できたしな。それより、詳しい事情を説明してもらうぞ。こっちらもいろいろあったのでな、話しておきたいこともある」
「分かりました。では、こちらに」
その後、場所を移し、公爵から、転移魔法の秘密を聞いた。レオンの発言が誤解だったと説明を受けたが、妾は王族として一度約束したことを簡単に反故にはできないと言い張り、レオンを婚約者とし、公爵家からの第三王子の支持を得た。
婚約者になってもレオンとの関係はそのままだ。妾がレオンの所有物である。そうしないと、妾たちはエルファンド神聖王国に戻れなくなってしまう。
エルファンド神聖王国に行ったはずの王女が、北の公爵領から帰ってきたら、大問題になってしまう。
とはいえ、数日はこの屋敷でゆっくりさせてもらおう。創世の迷宮へは、馬車が着いてから転移すればそれで充分であろう。その間、婚約者のレオンともゆっくり話ができるだろう。
いろいろ誤解があったから、そういった時間も大切であろう。
「何故、妾が第一王子の代わりを務めねばならぬ」
自分が表彰されるのだから、自分が行けば良いのだ。大体、功労者は北の公爵令嬢で、第一王子は付いていっただけという話ではないか。表彰されること自体がおかしい。余程の厚顔でもない限り辞退しているところだ。
「ですが王女殿下、これは国外訪問の良い機会ですよ。北の公爵令嬢も一緒ですから、いろいろと教えていただいてはどうですか」
「なぜ妾が教えを請わねばならぬ!」
確かに公爵令嬢は優秀な様で、最近では王宮内でも一目置かれているが、それでも妾に面と向かって教えを請えと失礼であろう。
「王女殿下が気乗りしないならば仕方ありません。誰か他の人に行ってもらいましょう」
「いや、まだ行かないとは言っていない。行っても構わんが一つ条件がある」
「何でしょう?」
話を持ってきた侍女が面倒くさそうな顔をする。
「北の公爵令嬢の弟のレオンを、妾の護衛兼話し相手として連れて行く」
レオンとの繋がりを深めるのに良い機会だ。こうでもしないとなかなか会えんからな。
「レオン様ですか。ふふーん。わかりました。そのように調整いたします」
何故か侍女はニヤニヤ笑いながら出ていった。さっきまで面倒くさそうにしていたのに何だ、あれは。
創世の迷宮への出発の日、妾の馬車には、いつもの侍女と護衛の女騎士の他に、レオンが乗り込んでいた。この馬車に男の人が乗るのは大変珍しいことだ。
女三人と男一人を乗せて馬車が出発した。公爵令嬢たちは別の馬車だ。
女が三人集まると姦しいとはよく言ったもので、レオンがいることもお構いなしに女子トークが始まった。最近流行りのファッションやお気に入りのスイーツなど話題には事欠かない。特に恋愛話になると、レオンが槍玉に上がっていた。
「レオン様は、婚約者はいらっしゃらないのですか」
「いや、僕はまだいないな」
「それでは、心に決めている方とかは」
「それもいない」
「どのような女性がお好みなんですか」
「これといって特には」
「私たち三人の中では、誰が一番好みです」
「三人とも綺麗だから、決められないな」
「まあ、三人まとめてですか。男らしいですね」
「王女殿下、よかったですね。私たち三人まとめてもらっていただけるそうですよ」
「いや、僕が言ったのはそういう意味ではなくて」
「あら、王女殿下はお嫌いですか」
「そんなことはないが」
レオンが助けを求める視線をこちらに向ける。
「お前たち、いい加減にしろ、レオンが困っているだろう」
「あらやだ、二人でアイコンタクトなんかして。二人はもうそういう仲なのですね」
「何か、私たちはお邪魔なようですね」
レオンだけでなく、妾にも矛先が向いているようである。
「いい加減にしろと言っているだろう」
「ですが王女殿下、王女殿下も来年には高等学院に入学されます。それまでには婚約者候補の一人や二人いませんと」
「わかっている。それまでには決める」
高等学院入学時に、第一王子は既に婚約していたし、第二王子も婚約者候補がいた。妾にも、婚約者候補の話が何人かきている。レオンもその一人だ。
妾はちらりとレオンを盗み見る。
「アラー。ふふふふ」
「王女殿下は既に心に決めた人がおいでの様子で」
「そ、そんなのはまだいない」
思わず大声を上げてしまった。
そう、そんなのはまだいない。レオンは、北の公爵家に第三王子を支持してもらうために親しくなったのであって、それ以上でも、それ以下でもない。これは打算で恋愛感情では決してない。
創世の迷宮行きの旅は順調で、王都を出て5日目、既にエルファンド神聖王国に入っている。
「ですから、女の子は誰でも、ピンチの時に王子様に助けてもらいたいと思っているものなのですよ」
「ピンチの時助けるのは護衛の役目だろう。職務放棄するつもりか」
「いえ、王女殿下、そういいことではなくて、ですね」
あいも変わらず私たちはお喋りに夢中だ。
その時、急に外が慌ただしくなり、護衛隊の叫び声が聞こえた。
「襲撃だ」
レオンと侍女が妾の両側を固め、護衛の女騎士が馬車の窓から様子を伺う。
「まずいですね。敵の人数がこちらの倍以上います。しかもかなりの手練れのようです。ただの賊ではありませんね」
「姉さんたちの馬車はどうなっています」
「そちらには目もくれず、こちらに集中していますね。このままでは取り囲まれるのも時間の問題です」
「何とかならんのか」
「ご命令とあれば、私の命と引き換えに血路を開きますが。その場合、レオン様が王女殿下を連れてお逃げください」
「いや、僕が足止めしよう」
レオンが立ち上がると馬車の扉に手をかけた。
「待って、こんな平原の真ん中で逃げるのは難しい。一旦降参して逃げる機会を伺うとしよう」
程なくして、馬車は完全に取り囲まれてしまった。
「抵抗は無意味だ。大人しく出てこい。そうすれば手荒な真似はしない」
「わかったわ。ですが王女殿下に手を出すようであれば、その時は黙っていないわよ」
「お前たちは人質だ。向こうが言う事を聞けば手出しはしない」
襲撃者は公爵令嬢の載っている前の馬車を顎で示す。
私たちは打合せ通り大人しく馬車を降りた。
「そこの男、こっちにこい」
襲撃者はレオンを連れて行った。
「ちょっと、話が違うじゃない」
「向こうの馬車のやつらが言う事を聞けば何もしない」
私たちが捕まってしまったため、公爵令嬢たちも抵抗することなく投降したようだ。
レオンも無事に帰ってきた。
「レオン、無事か、怪我はないか」
「大丈夫です。しかし、悔しいです。僕たちが人質になっていなければ、姉さんたちだけなら逃げられたかも知れないのに」
レオンは悔しさに、拳を固めていた。
その後私たちは襲撃者が用意した護送用の馬車に乗せられ、運ばれることとなった。公爵令嬢たちとは別の馬車だ。
私は縛られていないが、レオン達三人は縛られている。
公爵令嬢たちは別の馬車なので様子が分からないが、当然、縛られているだろう。逃げ出すにしても、向こうの様子が分からないのは都合が悪い。この先一緒になる機会があるだろうか。
「姉さん」
どうしたら逃げられるか考えを巡らせていると、不意にレオンが何か呟いた。
「どうかしましたかレオン」
「いえ、何でもありません、ナターシャ殿下」
その後、レオンは何か考え込んでいるようだ。一体何を考えているのだろう。妾は知らぬうちにレオンを見つめていた。
レオンが顔を上げこちらをみつめた。思わず見つめ合ってしまう。
「王女殿下、こんな時に申し訳ありませんが、いや、こんな時だからこそお願いします」
「何です。レオン。以前、レオンのためなら何でもすると約束したではないか。それに王女ではなくナターシャと呼べとも」
「では、ナターシャ、僕のものになってくれ」
「ななななんです。それは」
いきなり、こんな時にプロポーズなのか。確かに妾もレオンのことを憎からず思っていたが、いきなりすぎだろう。それに時と場所を考えてほしい。もっとロマンチックな場面がいくらでもあるだろう。いや、これはロマンチックな場面なのか、ピンチのお姫様を救い出す王子なのか。
「言葉道理だ、ナターシャに僕の所有物になってほしいんだ」
「所有物って」
ガーン。何故いきなりもの扱い。まさかこんな人だとは思わなかった。女をものとしか見ていない最低の人間だわ。妾のときめきを返せ。
「所有物になってくれれば、僕は君をここから命に代えても救い出そう」
そう、これは取引なのだな。救ってやるから自分のものになれ。最低だ。でもそっちがその気なら、こっちにも考えがある。最初からこちらも打算で近付いたのだ。この身を投げ打ってでも、と考えていたのだ。それを貫くのみだ。
「……一つだけ条件がある」
「何ですか」
「レオンの所有物になる代わりに、第三王子を支持してもらえるか」
「承知した。第三王子を支持しよう」
「分かった。今から妾は、レオンの所有物だ」
妾はレオンに深々と頭を下げた。
これでいいのだ。これで北の公爵家は第三王子派だ。王族の娘たるもの政略結婚は当然のことだ。それがどんな不幸な結婚であっても。扱いが奴隷以下の所有物であったとしても、だ。
「王女殿下のご決断に感謝します」
突然目の前に公爵令嬢が現れ、妾に礼をとった。
「イライザ嬢! どこから?」
「転移してきました。ここから、王女殿下たちを連れて、転移して逃げます。シリーお願い」
「畏まりました」
妾たちは転移魔法で襲撃者の馬車から逃げのびたのだった。
転移先はどこかの屋敷のホールのようだ。
「ここは、どこです?」
「北の公爵家の屋敷です」
「そんな長距離をこの人数で跳んだのか」
妾は驚いて目を丸くする。
その後、騒ぎを聞きつけた北の公爵が駆けつけ、イライザ嬢と問答を始めた。そして、イライザ嬢は再び転移して消えてしまった。
「ナターシャ殿下、この度はとんでもないことに巻き込んでしまい、申し開きの余地もありません」
「うむ、構わん。無事に脱出できたしな。それより、詳しい事情を説明してもらうぞ。こっちらもいろいろあったのでな、話しておきたいこともある」
「分かりました。では、こちらに」
その後、場所を移し、公爵から、転移魔法の秘密を聞いた。レオンの発言が誤解だったと説明を受けたが、妾は王族として一度約束したことを簡単に反故にはできないと言い張り、レオンを婚約者とし、公爵家からの第三王子の支持を得た。
婚約者になってもレオンとの関係はそのままだ。妾がレオンの所有物である。そうしないと、妾たちはエルファンド神聖王国に戻れなくなってしまう。
エルファンド神聖王国に行ったはずの王女が、北の公爵領から帰ってきたら、大問題になってしまう。
とはいえ、数日はこの屋敷でゆっくりさせてもらおう。創世の迷宮へは、馬車が着いてから転移すればそれで充分であろう。その間、婚約者のレオンともゆっくり話ができるだろう。
いろいろ誤解があったから、そういった時間も大切であろう。
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