魔眼の転生悪役令嬢は魔王エンドを目指す だめ神メイドと乙ゲー逆攻略

なつきコイン

文字の大きさ
上 下
32 / 80
第一章

第31話 婚約 14歳

しおりを挟む
 その後もレアカードの売り上げは順調で、販売を始めて一年近く、創世の迷宮に遠征するには十分な資金が貯まった。
 その間、エリクサーの開発は頓挫したままだった。ただ調合の腕前はかなり上がった。
 魔術回路については、かなり研究が進み、既存の魔法を組み合わせた、オリジナルの魔法を作れるレベルとなってきた。
 体力に関しては、地道な訓練と、時々は、ギルドの討伐依頼をこなし、短剣だけでなく、レイピアを使いこなせるようになった。
 年齢も14歳となり、そろそろ創世の迷宮に出発かと考えていた時、再び父に呼び出されたのであった。

「お父様、何か御用でしょうか」
 私は、シリーとともに父の執務室に来ている。
「まあ、お前も座れ」
 父に勧められるままソファーに腰を下ろす。
 正面には父と、珍しいことに母も一緒に座っている。何事だろう。思い当たる節がない。

「王宮より使いが参った。第一王子とお前の婚約が決まったそうだ。早々に王宮に出頭せよとのことだ」
 あれ、私、逮捕されるの。何か、そんな悪いことしたかしら。コンニャクの刑ってどんな刑よ。まだ、そんなに悪役令嬢ぽいことしてないのに、学院に入学する前に捕まってしまうなんて、思いもしなかったわ。

「エリー、大丈夫? ちゃんと聞こえてる」
 母が心配してこちらを覗いている。

「お嬢様、出頭といっても逮捕されるわけではありませんよ」
 シリーが小声で耳打ちする。
 あ、出頭といっても逮捕されるわけではないのね。ただ王宮に来いと。でもなんで?

「エリー、もう一度言うぞ、お前の婚約が決まった。相手は第一王子だ」
「私の婚約が決まった? 決まった? 私、初耳なのですけれど」
「初めて話すからな」
 お父様、初めて話すからなって、それはないでしょ。私の婚約なのでしょ、決定する前に予め相談してくださいよ。

「婚約者候補、とかではなく、婚約者なのですか?」
「そうだ、婚約者だ。候補ではなく、決定だ」
「なぜ、予め教えていただけなかったのですか」
「エリー、私たちもさっき初めて知ったのよ」
 母も困惑している様子だ。ということは王宮で勝手に決めたことなのか。そんなことあるだろうか?
 シナリオ通りなら私は第二王子と婚約するはずだ。だから、この話が第二王子との婚約ならそれほど驚くことはない。だが相手は第一王子だ。誰が第一王子との婚約を勧めたのだろう。

「お前こそ、第一王子と何か約束したのではないのか」
「いえ、そんなことはないはずですが」

「第一王子とお会いしたことはないの?」
「第一王子とですか。でしたら、一年前に国王に謁見した時にお会いしました」

「謁見の間で顔を合わせただけか」
「いえ、書庫のようなところで、二人だけで」

「二人だけで会っていたのか」
「その時何を話したの」
「確か、友達になっていただけませんか。と。それと、聖剣とか魔剣の話を少し」

「お前からお願いしたのか。そうか、それでか」
 これって、私のせいで第一王子との婚約が決まったの? 第二王子とは婚約したくなかったから、その点はよかったのだけど。
「ですが、殿下は私には全く興味がなかったようですが」

「私には、か」
「エリー、男ゴコロとはわからないものよ」

「それにしても、急に決まったと言われても困ります」
「あまり乗り気でないようだけれど、だれか他に好きな人でもいるの?」
「いませんけれど」
 第一王子とは聖剣のこともありお近付きになりたかったけど、婚約者になりたかったわけではない。
 それに、第一王子のバッドエンドでは、第二王子の婚約者だった悪役令嬢がなぜか第一王子と結婚していて、最終的には精神病で自殺している。
 これって、その流れに近いのではないだろうか。ならば第一王子との婚約は避けたいところなのだが。

「どのみち、王宮からの正式の使者だ。私でも断れん。ある意味、自分で蒔いた種だ、諦めろ」
「そうですか……」
 とても断れそうにない。聖剣のためとはいえ、第一王子に近づいたのは失敗だったか。まさかこんなことになるなんて。

「明後日にはここを出て王都に向かう。準備して置け。ああ、暫くは戻れないだろうからそのつもりでな」
「暫くですか。どれくらいです」

「場合によっては、一生ここへは戻れん。暫くは、王都別邸で暮らしてもらうことになるだろう」
「そうですか、わかりました」

 私は、茫然自失のまま執務室をでる。

「おめでとうございます。お嬢様」
「ああ。ありがとうシリー」
「まさか、お嬢様が第一王子の誑し込みに成功するとは思いませんでした。御見それしました」
「酷い言われようね」

「先ほどから、あまり嬉しそうではありませんが」
「そうね、あまり嬉しくはないわね。なんだか第一王子のバッドエンドの流れになってるような気がして」
「そうですか? 私には聖剣を手に入れられる可能性が高くなって、魔王エンドに近づいたように思えますが」
「そうかもしれないわね」
 シリーの考えもあながち間違いではない。もともとそのつもりで第一王子に近づいただから。ようは、魔王エンドにもっていけばいいのである。だが、なぜだか腑に落ちない。


 翌日は、出発の準備と、暫く戻れそうにないので、知り合いへの挨拶や、身辺整理にあてた。
 そして二日後、王都に向け屋敷を出発、もう戻れないかもしれないと思うと、こみ上げてくるものがあった。
 今回は、シリーとリココだけでなく、父と母も一緒である。母が一緒なのは初めてである。弟のレオンを、一人残していくことになってしまったが、大丈夫だろうか、心配である。

 王都に到着したのはそれから四日後、一年ぶりの王都別邸である。予定より、二年近く早い引っ越しとなった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無限の精霊コンダクター

アキナヌカ
ファンタジー
リードは兄たちから虐げられていた、それはリードが無能だったからだ。ここでいう無能とは精霊との契約が出来ない者のことをいった、リードは無能でもいいと思って十五歳になったら貴族の家を出て行くつもりだった。だがそれよりも早くリードを良く思っていないウィスタム家の人間たちは、彼を深い山の中の穴の中に突き落として捨てた。捨てられたリードにはそのおかげで前世を思い出し、また彼には信じられないことが起こっていくのだった。

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

処理中です...