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第一章
第22話 塩とバカンス
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塩を確保するための方針が決まった二日後には、無事公爵領都の屋敷に帰り着き、次の日は準備に当て、四日後の今日は、既に南国の無人島にいた。
「本当に一瞬だわね」
「凄いですね。転移の魔法」
「凄いでしょ」
私とリココが感動すると、シリーが鼻高々といった感じだ。その態度が癪に障るがこれほど便利なものはない。女神様さまだ。
「早速準備を始めましょう。リココ、荷物を出して」
「はい、イライザお嬢様」
リココが収納魔法で次々と荷物を取り出す。
「お嬢様の水着はこちらになります」
既に、えんじ色のビキニに着替えたシリーが、荷物の中から水着を渡してくる。こいつ、いつの間に着替えたんだ。さてはメイド服の下に水着を着てきたな。
「シリーさんなんて格好なんですか。下着姿じゃないですか」
まあ、こちらの世界ではビキニなんて普通の下着以上に破廉恥だろうからリココの反応も無理もない。
「普通に水着ですが。リココさんのはこちらです」
シリーの水着を見て驚いているリココにも、シリーは用意しておいた水着を渡す。
「こ、これは、おへそが丸出しじゃないですか。こんなの恥ずかしくて着れません」
リココの水着は、メイド服をミニスカにし、さらにセパレートにして、お腹が出る感じとなっていた。
「リココさん、他に人はいませんから大丈夫ですよ」
まあ、普通なら恥ずかしいだろうが、ここは無人島、他に人が来ることはないからリココにも心配せずに楽しんでもらいたい。それよりもだ。
「シリー、私のこれはなんだ」
「普通にスクール水着ですがなにか?」
シリーが、私に用意した水着はスクール水着だった。しかも胸に「イライザ」と書かれた白い布が縫い付けてある、紺色の旧スクであった。誰得だ、おい!
「バカンス気分台無しだろう」
それでもなんとか気持ちを立て直し、十分に南国の海を満喫した。
バカンス気分をそこそこ味わったので、そろそろ塩の製造を始めることにする。
「二人とも、塩の製造を始めるから集まってくれるかな」
シリーとリココを前に塩の作り方を説明する。
「まず、たらいに海水を汲んで、『発火』魔法で水を蒸発させ、残った塩をこの樽に入れる。簡単でしょ。リココはこのカードを使って。MPが切れたら、これ飲んでね」
リココにも『発火』のカードとMPポーションを渡し、三人で作業に取り掛かる。
しばらく作業を行なったが、結果はあまり芳しくない。
「お嬢様、暑すぎます」
ついにリココが根をあげた。なぜかシリーは涼しい顔をしているが、女神は熱さを感じないのだろうか。
あたりは、蒸発させた水蒸気でサウナ状態である。
できた塩の量も三人合わせて、両手で山盛りになる程度で、樽を一杯にするには何日かかるかわからない。もっともシリーはほとんどサボっていて役にたっていなかったが。
とにかく、『発火』魔法で水を蒸発させるのは効率が悪すぎる。
「これでは効率が悪すぎるわ。何か良い方法はないかしら」
手持ちの魔法カードは、『風刃』『発光』『発火』『躁風』『水流』『洗浄』『凍結』それと昨日作成した、リココの魔道具から得た『瞬雷』と、弟のレオンを鑑定して得た『岩石生成』である。
なお、『風刃』については、薄い魔法顔料を使い、最大魔力許容量を小さくしたものに作り替えた。これにシリーの支援魔法で耐久力を上げれば、普段は普通に使えるが、私の所有物でなくなった時点、つまり、盗まれたたり失くしたときに、シリーの支援魔法が無効となり、他の者が使おうとしても魔力回路が焼き切れて使用できなくなる。
どうすれば効率的に塩を作れるか、カードを前に、三人で検討を行った。三人寄れば文殊の知恵である。結果、こうなった。
リココが『水流』で海水を霧状に噴きあげる。
それに私が、右手に『発火』左手に『躁風』を持ち、熱風を作り出し吹きかける。
結晶化して砂浜に落ちた塩を、シリーが集め『洗浄』を使って塩と砂を選り分ける。
熱いのに変わりがないが、効率はかなり上がって、その日、樽に半分くらいの塩を作ることができた。
「これなら、後三回来れば樽二つ分を確保できるわね」
「疲れました。もうへとへとです」
「今日はもう帰って休みましょう。シリー、お願い」
「承知しました。では、『転移』」
屋敷に戻ると浴室の前で、ちょうど薬草園から戻ってきた弟のレオンと出くわした。
「姉さん、どこに行っていたの、随分と焼けたね」
「ええ、ちょっと海まで塩を取りに」
「なにその冗談。大体、塩を取りに行くなら山でしょ」
「え、塩って山で取れるの?」
「当たり前じゃないか。山で岩塩を掘ってくるのが普通だよ」
「岩塩。……岩。もしかして、レオンは魔法で塩を出せるの」
「そんなの簡単だよ。ほら」
レオンは拳大の塩の塊を作り出します。
「岩塩はあまりMPがかからないんだ。金は無理だけれど、塩が欲しかったら言ってよ。いくらでも出してあげる。ただ、魔法で出した塩は、あまり美味しくないけどね」
そう言って浴室に入っていった。
がーん。『岩石生成』で塩を作れたとは。
次の日、私たちは、『岩石生成』の魔法カードを使って樽二つ分の塩を確保することができたのだった。
現在所持している魔法カード:『風刃』『発光』『発火』『躁風』『水流』『洗浄』『凍結』『瞬雷』『岩石生成』
「本当に一瞬だわね」
「凄いですね。転移の魔法」
「凄いでしょ」
私とリココが感動すると、シリーが鼻高々といった感じだ。その態度が癪に障るがこれほど便利なものはない。女神様さまだ。
「早速準備を始めましょう。リココ、荷物を出して」
「はい、イライザお嬢様」
リココが収納魔法で次々と荷物を取り出す。
「お嬢様の水着はこちらになります」
既に、えんじ色のビキニに着替えたシリーが、荷物の中から水着を渡してくる。こいつ、いつの間に着替えたんだ。さてはメイド服の下に水着を着てきたな。
「シリーさんなんて格好なんですか。下着姿じゃないですか」
まあ、こちらの世界ではビキニなんて普通の下着以上に破廉恥だろうからリココの反応も無理もない。
「普通に水着ですが。リココさんのはこちらです」
シリーの水着を見て驚いているリココにも、シリーは用意しておいた水着を渡す。
「こ、これは、おへそが丸出しじゃないですか。こんなの恥ずかしくて着れません」
リココの水着は、メイド服をミニスカにし、さらにセパレートにして、お腹が出る感じとなっていた。
「リココさん、他に人はいませんから大丈夫ですよ」
まあ、普通なら恥ずかしいだろうが、ここは無人島、他に人が来ることはないからリココにも心配せずに楽しんでもらいたい。それよりもだ。
「シリー、私のこれはなんだ」
「普通にスクール水着ですがなにか?」
シリーが、私に用意した水着はスクール水着だった。しかも胸に「イライザ」と書かれた白い布が縫い付けてある、紺色の旧スクであった。誰得だ、おい!
「バカンス気分台無しだろう」
それでもなんとか気持ちを立て直し、十分に南国の海を満喫した。
バカンス気分をそこそこ味わったので、そろそろ塩の製造を始めることにする。
「二人とも、塩の製造を始めるから集まってくれるかな」
シリーとリココを前に塩の作り方を説明する。
「まず、たらいに海水を汲んで、『発火』魔法で水を蒸発させ、残った塩をこの樽に入れる。簡単でしょ。リココはこのカードを使って。MPが切れたら、これ飲んでね」
リココにも『発火』のカードとMPポーションを渡し、三人で作業に取り掛かる。
しばらく作業を行なったが、結果はあまり芳しくない。
「お嬢様、暑すぎます」
ついにリココが根をあげた。なぜかシリーは涼しい顔をしているが、女神は熱さを感じないのだろうか。
あたりは、蒸発させた水蒸気でサウナ状態である。
できた塩の量も三人合わせて、両手で山盛りになる程度で、樽を一杯にするには何日かかるかわからない。もっともシリーはほとんどサボっていて役にたっていなかったが。
とにかく、『発火』魔法で水を蒸発させるのは効率が悪すぎる。
「これでは効率が悪すぎるわ。何か良い方法はないかしら」
手持ちの魔法カードは、『風刃』『発光』『発火』『躁風』『水流』『洗浄』『凍結』それと昨日作成した、リココの魔道具から得た『瞬雷』と、弟のレオンを鑑定して得た『岩石生成』である。
なお、『風刃』については、薄い魔法顔料を使い、最大魔力許容量を小さくしたものに作り替えた。これにシリーの支援魔法で耐久力を上げれば、普段は普通に使えるが、私の所有物でなくなった時点、つまり、盗まれたたり失くしたときに、シリーの支援魔法が無効となり、他の者が使おうとしても魔力回路が焼き切れて使用できなくなる。
どうすれば効率的に塩を作れるか、カードを前に、三人で検討を行った。三人寄れば文殊の知恵である。結果、こうなった。
リココが『水流』で海水を霧状に噴きあげる。
それに私が、右手に『発火』左手に『躁風』を持ち、熱風を作り出し吹きかける。
結晶化して砂浜に落ちた塩を、シリーが集め『洗浄』を使って塩と砂を選り分ける。
熱いのに変わりがないが、効率はかなり上がって、その日、樽に半分くらいの塩を作ることができた。
「これなら、後三回来れば樽二つ分を確保できるわね」
「疲れました。もうへとへとです」
「今日はもう帰って休みましょう。シリー、お願い」
「承知しました。では、『転移』」
屋敷に戻ると浴室の前で、ちょうど薬草園から戻ってきた弟のレオンと出くわした。
「姉さん、どこに行っていたの、随分と焼けたね」
「ええ、ちょっと海まで塩を取りに」
「なにその冗談。大体、塩を取りに行くなら山でしょ」
「え、塩って山で取れるの?」
「当たり前じゃないか。山で岩塩を掘ってくるのが普通だよ」
「岩塩。……岩。もしかして、レオンは魔法で塩を出せるの」
「そんなの簡単だよ。ほら」
レオンは拳大の塩の塊を作り出します。
「岩塩はあまりMPがかからないんだ。金は無理だけれど、塩が欲しかったら言ってよ。いくらでも出してあげる。ただ、魔法で出した塩は、あまり美味しくないけどね」
そう言って浴室に入っていった。
がーん。『岩石生成』で塩を作れたとは。
次の日、私たちは、『岩石生成』の魔法カードを使って樽二つ分の塩を確保することができたのだった。
現在所持している魔法カード:『風刃』『発光』『発火』『躁風』『水流』『洗浄』『凍結』『瞬雷』『岩石生成』
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