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第一章
第10話 王都へ 8歳
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とりあえず、悪役令嬢の私が魔王になり、ヒロインたちを奴隷にする『魔王エンド』を目指すことにして四か月、私は8歳になっていた。ちなみにこの世界は、一週間が8日、一月が8週、一年が6か月だ。8が多いのは八進法の影響だろうか。
手始めに、ヒロインを見つけて、魔王エンドに辿り着くための条件を鑑定しなければならない。そのためのMPも結構たまった。5G(約2万) MP、これだけあればなんとかなるだろう。
事前の情報収集で、王都にあるランドレース商会の娘が、ヒロインである可能性があることは掴んでいる。
私は、父に王都に行ってみたいとせがんだところ、ちょうど大公令嬢の8歳の誕生パーティーが開かれる予定があり、私にも招待状が届いているとのことだった。ならば行ってみるか、ということで王都行きがすんなりと決まった。
王都までは、途中、公爵領の地方都市、伯爵領都、侯爵領都に泊まり、馬車で4日もかかった。
馬車の旅は安全そのもので、盗賊や魔物に襲われることはなかった。もっとも、屈強な護衛が前後左右を固めていたため、盗賊が出て来ても一網打尽であっただろう。
この世界には魔物がいる。しかし普段は迷宮や魔の森に棲み、外に出てくることは無い。魔物は魔素がないと生きることが出来ない。だから、魔素の濃い迷宮などから出てこないと考えられている。
王都は人口約1M(約26万)人、公爵領が約2P(約6万5千)人だからおよそ4倍になる。
王都は城壁に丸く囲まれ、東西南北に門がある。
王都は城壁の中だけで、その周りは東西2つの伯爵領になる。
私たちは当然北門から王都に入る。
門を入ると広い大通りが真っ直ぐと伸び、その先に王城がそびえ立っている。
王城は大都の中心にあり、東西南北それぞれの門から大通りが続いている。
また、王城を中心に同心円状に幹線道路が整備され、中心から官公庁街、貴族街、商店・歓楽街、住宅街に区分されている。
公爵家の別邸は貴族街北東区画、この区画では一番大きい屋敷である。
二階建てのコの字の建物は、背丈以上もある柵で囲まれている。公爵領の屋敷と比べると庭が狭いが建物自体は遜色ない大きさがある。
警備の者が守る門を抜け中に入ると、馬車から降りる私たちを玄関で使用人が待っていた。
「旦那様、お帰りなさいませ。お嬢様初めまして、別邸で執事長をしておりますスティーブと申します。何なりとお申し付けくださいませ」
「ありがとうスティーブ、イライザよ、よろしくね。それと、専属メイドのシリーよ。身の回りのことは彼女がするわ。早速で悪いけど、私の部屋はあるのかしら。あったら案内してくれる」
「かしこまりましたお嬢様、それではメイド長のメアリがご案内いたします」
「よろしくお願いしますお嬢様、メイド長を務めますメアリです。ではお部屋にご案内します」
通されたのは、二階右手奥をさらに右手に曲がった南向きの角部屋だった。
高等学院に入学すれば、この別邸から通うこととなる。この部屋が生活の拠点だ。そう考えると感慨深いものがあった。
王都に到着した翌日、私は王都見学に行くと言ってシリーと二人街に出た。父が護衛を付けようとしたが、危険なところにはいかないし、かえって目立つからと断った。本当の目的はヒロインの鑑定である。護衛がいては邪魔になる。
ランドレース商会は王都の商店街南西区画にあった。私たちが滞在する公爵家の別邸、貴族街北東区画からみると王城を挟んでちょうど反対になる。
私とシリーは王城を大きく迂回する形でランドレース商会に到着した。
ランドレース商会の印象は、モダンで明るく、入りやすい感じだった。煉瓦造りの三階建てではあるが、ガラスでできた窓を備え、入口の扉は解放されていた。
私は入り口から顔を覗かせヒロインを探すが、それらしい少女はいない。
当然か、会頭の娘とはいえ、年端のいかない少女が、仕事場でもある商会の建物にいるはずもない。会頭の自宅に行ってみた方がいいだろう。しかし私たちはその場所を知らない。どうやって聞き出したものか悩んでいると、中から老年な男性に声を掛けられた。
「何か御用ですか、お嬢様方」
「あ、いや、ここでは何を売っているのかと思って」
「食料品や生活雑貨を主に扱っていますが、ここでは小売り販売はしてないのですよ」
老年な男性は申し訳なさそうに答える。
「そうですか。奇麗な建物だったので少し興味を引かれただけですから」
「失礼ですが、どちらのご令嬢ですか。申し遅れましたが、私この商会の会頭を務めますスール=ランドレースと申します」
「これはご丁寧にありがとうございます。私は、ロレック=ノース=シュバルツの娘、イライザです。よろしくお願いしますね」
「北の公爵家のかたでしたか。よろしければ中をご覧になっていかれますか。お菓子などもお出ししますよ」
「いえ結構です。本当にただ通りすがりに興味を引かれただけですので」
「そうですか。それではまたの機会にでもおいでください。」
そう言葉を交わし、私たちは商会の前を離れた。
「シリー、後であの人の後をつけて自宅を特定して」
「私が、一人で、ですか」
「他に誰がいるの?」
「これでも私、女神なんですけど」
「私の専属メイドでもあるわよね」
「はいはい、分かりました。どうせ帰るのは暗くなってからでしょうし、日暮れごろまた来ますね」
「そうしてもらえる。それまでは一緒に王都観光にしましょう」
その後、私たちは初めての王都を満喫し、日暮れ前に私はシリーに送られ別邸に帰った。そのさい、シリーは一緒に屋敷に入ろうとしたが、尾行に行くように命令すると渋々ランドレース商会に向かったのだった。
手始めに、ヒロインを見つけて、魔王エンドに辿り着くための条件を鑑定しなければならない。そのためのMPも結構たまった。5G(約2万) MP、これだけあればなんとかなるだろう。
事前の情報収集で、王都にあるランドレース商会の娘が、ヒロインである可能性があることは掴んでいる。
私は、父に王都に行ってみたいとせがんだところ、ちょうど大公令嬢の8歳の誕生パーティーが開かれる予定があり、私にも招待状が届いているとのことだった。ならば行ってみるか、ということで王都行きがすんなりと決まった。
王都までは、途中、公爵領の地方都市、伯爵領都、侯爵領都に泊まり、馬車で4日もかかった。
馬車の旅は安全そのもので、盗賊や魔物に襲われることはなかった。もっとも、屈強な護衛が前後左右を固めていたため、盗賊が出て来ても一網打尽であっただろう。
この世界には魔物がいる。しかし普段は迷宮や魔の森に棲み、外に出てくることは無い。魔物は魔素がないと生きることが出来ない。だから、魔素の濃い迷宮などから出てこないと考えられている。
王都は人口約1M(約26万)人、公爵領が約2P(約6万5千)人だからおよそ4倍になる。
王都は城壁に丸く囲まれ、東西南北に門がある。
王都は城壁の中だけで、その周りは東西2つの伯爵領になる。
私たちは当然北門から王都に入る。
門を入ると広い大通りが真っ直ぐと伸び、その先に王城がそびえ立っている。
王城は大都の中心にあり、東西南北それぞれの門から大通りが続いている。
また、王城を中心に同心円状に幹線道路が整備され、中心から官公庁街、貴族街、商店・歓楽街、住宅街に区分されている。
公爵家の別邸は貴族街北東区画、この区画では一番大きい屋敷である。
二階建てのコの字の建物は、背丈以上もある柵で囲まれている。公爵領の屋敷と比べると庭が狭いが建物自体は遜色ない大きさがある。
警備の者が守る門を抜け中に入ると、馬車から降りる私たちを玄関で使用人が待っていた。
「旦那様、お帰りなさいませ。お嬢様初めまして、別邸で執事長をしておりますスティーブと申します。何なりとお申し付けくださいませ」
「ありがとうスティーブ、イライザよ、よろしくね。それと、専属メイドのシリーよ。身の回りのことは彼女がするわ。早速で悪いけど、私の部屋はあるのかしら。あったら案内してくれる」
「かしこまりましたお嬢様、それではメイド長のメアリがご案内いたします」
「よろしくお願いしますお嬢様、メイド長を務めますメアリです。ではお部屋にご案内します」
通されたのは、二階右手奥をさらに右手に曲がった南向きの角部屋だった。
高等学院に入学すれば、この別邸から通うこととなる。この部屋が生活の拠点だ。そう考えると感慨深いものがあった。
王都に到着した翌日、私は王都見学に行くと言ってシリーと二人街に出た。父が護衛を付けようとしたが、危険なところにはいかないし、かえって目立つからと断った。本当の目的はヒロインの鑑定である。護衛がいては邪魔になる。
ランドレース商会は王都の商店街南西区画にあった。私たちが滞在する公爵家の別邸、貴族街北東区画からみると王城を挟んでちょうど反対になる。
私とシリーは王城を大きく迂回する形でランドレース商会に到着した。
ランドレース商会の印象は、モダンで明るく、入りやすい感じだった。煉瓦造りの三階建てではあるが、ガラスでできた窓を備え、入口の扉は解放されていた。
私は入り口から顔を覗かせヒロインを探すが、それらしい少女はいない。
当然か、会頭の娘とはいえ、年端のいかない少女が、仕事場でもある商会の建物にいるはずもない。会頭の自宅に行ってみた方がいいだろう。しかし私たちはその場所を知らない。どうやって聞き出したものか悩んでいると、中から老年な男性に声を掛けられた。
「何か御用ですか、お嬢様方」
「あ、いや、ここでは何を売っているのかと思って」
「食料品や生活雑貨を主に扱っていますが、ここでは小売り販売はしてないのですよ」
老年な男性は申し訳なさそうに答える。
「そうですか。奇麗な建物だったので少し興味を引かれただけですから」
「失礼ですが、どちらのご令嬢ですか。申し遅れましたが、私この商会の会頭を務めますスール=ランドレースと申します」
「これはご丁寧にありがとうございます。私は、ロレック=ノース=シュバルツの娘、イライザです。よろしくお願いしますね」
「北の公爵家のかたでしたか。よろしければ中をご覧になっていかれますか。お菓子などもお出ししますよ」
「いえ結構です。本当にただ通りすがりに興味を引かれただけですので」
「そうですか。それではまたの機会にでもおいでください。」
そう言葉を交わし、私たちは商会の前を離れた。
「シリー、後であの人の後をつけて自宅を特定して」
「私が、一人で、ですか」
「他に誰がいるの?」
「これでも私、女神なんですけど」
「私の専属メイドでもあるわよね」
「はいはい、分かりました。どうせ帰るのは暗くなってからでしょうし、日暮れごろまた来ますね」
「そうしてもらえる。それまでは一緒に王都観光にしましょう」
その後、私たちは初めての王都を満喫し、日暮れ前に私はシリーに送られ別邸に帰った。そのさい、シリーは一緒に屋敷に入ろうとしたが、尾行に行くように命令すると渋々ランドレース商会に向かったのだった。
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