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第一章

第9話 エンディング鑑定2年目 7歳

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 七歳になりました。やって参りました第二回鑑定タイム。パフパフ。
 テンション上げ上げでいきますよ。
 そうでもしないと、うつ病になりそうだ。

 今回鑑定するにはこれ。
 新任講師、大手商会の孫、公爵令息、隣国の王子、の四人のハピーエンドとバッドエンドだ。
 さあ、何が出るかな。何が出るかな。らら、らら、ららララ。

『鑑定』

 新任講師。生贄、ハッピーもバッドも。
 何してくれるんだあの野郎。しかもバッドはヒロインの道連れ。
 召喚魔法の生贄にされてしまいました。当然死亡。

 大手商会の孫。ハッピー鉱山奴隷、バッド性奴隷。
 生きてる、生きてるよ。しかもバッドはヒロインも一緒に性奴隷だよ。
 でも、やだよ、我慢できないよ。

 公爵令息。ハッピーきもデブの嫁、バッド蝋人形。
 弟よ、いったい何がそうさせた。蝋付けだよ。しかもこれまたヒロインと一緒だよ。
 きもデブの方は、四肢切断されてるよ。スプラッタだよ。でも生きてるよ。
 ちょっといくら何でもどうにかしてよ。

 隣国の王子。……。
 あれ、鑑定できないよ。MP足りてないわけでもないのにどうした。
 関係性が「特に無し」だからできないのか。

 仕方がないので次。

 大公令嬢。……。
 これもできないよ。どうしたんだ。次。

 保険医。……。
 これもだめ。

 どうしたんだろう、三人ともできないなんて……。

 悩んでいるとシリーが声をかけてくる。
「三人は初期攻略キャラじゃないですから、今回は攻略できない。つまりエンディングに辿り着けないってことではないでしょうか」
 そういえば、この三人は、他のキャラを攻略した後でないと攻略できなかった。
 とりあえず、そういうことにしておこう。

 まだ二回鑑定できるMPがのこっている。大分疲れてきたけどもう少し頑張ろう。

 お友達エンド。第二王子と結婚、側室に刺されて死亡。
 旅立ちエンド。第二王子と結婚、側室に刺されて死亡。
 これって、二つとも第二王子バッドエンドと同じだよ。

 それと今回、バッドのヒロインの巻き添えパターンが多いよ。
 手抜きだよ。作成者出て来い。

 今回の結果、8分の5で死亡。生き残った3も……。ちょっと無理。

 「はー疲れた」

 残すエンドは2つ。ハーレムエンドと魔王エンドである。余り期待を持てそうにないな。


 そして、前回エンド鑑定をしてから二か月がたった。
 残り二つのエンディングを鑑定できるだけのMPもたまったので、一年を待たずに鑑定を行うことにした。対策を立てる上でも早いに越したことはないだろう。

 残すエンドはハーレムエンドと魔王エンドである。
 前回までの結果を踏まえると、今回も期待は持てないが、僅かな可能性に望みをかける。
 それにしても、今回残ったものは名前からして、悪役令嬢的には駄目臭いような……。
 それでは、笑っても泣いてもこれが最後、いきます。

『鑑定』

 ハーレムエンド。私、魔王になっていました。ヒロインとの最終決戦で負けました。剣で串刺しにされ死亡。
 魔王エンド。私、魔王になっていました。ヒロインに最終決戦で勝ちました。
 ヒロイン、攻略対象者全てを奴隷にし、侍らせていました。悪役令嬢的にはハッピーエンド?

「お嬢様やりましたね。幸せを掴めるエンドがありましたよ」
「シリー待って。魔王よ。私、魔王になるのよ。それはなしでしょ。それにエンジェルポイントはどうするの。魔王になんかなったらエンジェルポイントがなくなっちゃうわよ」
「そうですね……。エンジェルポイントの消費をできるだけ抑えてエンディングをむかえ、魔王になってからエンジェルポイントを荒稼ぎすればいいんですよ」
 シリーが訳の分からないことを言っている。

「だいたい、魔王になったらエンジェルポイントを稼げるわけがないでしょ」
「そんなことはありませんよ。魔王だって善行はできます。人から見たら魔王は悪かもしれませんが、魔族から見たら善です」
「神様的にはそれでいいの、魔王だよ」
「神様は差別しません」
「人のこと、こんなところに落としておいてよく言うわね」
「お嬢様、それでは他の選択肢にしますか。監禁、奴隷、ブタの妻、どれがいいですか」
「どれもいやです」
「わがままですね。いっそ死にますか。蝋人形なんかお勧めです」
「わかりました。わかりましたよ。もう魔王でいいです」

 こうして私、悪役令嬢は魔王エンドを目指すことになった。


 魔王エンドを目指すことに決めた数日後、珍しく父に呼ばれたのでメイドのシリーと執務室に向かう。
「シリー、私なにかまずいことしたかしら」
「最近はないかと思います」
 廊下を歩きながらシリーに尋ねてみたが、彼女にも心当たりがないようだ。

「お父様、イライザでございます」
「エリーか入れ」
 執務室に入ると、父の他に来客がいたようだ。
「まず紹介する。エリー、こちらは騎士団北部方面分団分団長のケイブリー=ローザス侯爵だ。それとご子息のケニー君だ」
 父親と同じような、金髪ツンツン頭の悪ガキがそこにいた。
「娘のイライザだ。ケニー君とは同い年になる」
「ごきげんよう、ケイブリー様、ケニー様」
 私は親子に向かってお辞儀をする。
「この子がイライザちゃんか、成る程、鋭い眼光をしている」
 ケイブリー様が私を興味深げに見る。
「すまないがエリー、私はケイブリーと二人で話しがある。その間ケニー君と遊んでいてもらえないか」
「わかりましたお父様。ではケニー様、一緒にまいりましょう」

 一緒に執務室を出たまではいいが、この後どうしたらいいか思案にくれる。
「ケニー様は何かやりたいことがございますか」
「剣術の稽古」
「では、庭の鍛錬場に行ってみましょう」

 鍛錬場といっても簡素な小屋と踏み固められた庭があるだけだ。
「お前もここで剣術の稽古をしているのか」
「私は、剣術は習っていません。ケニー様は普段から剣術の稽古をしているのですか」
「当然だ。少し見せてやろう」

 腰に下げていた木剣を抜き、素振りを始める。

「どうだ凄いだろう」
「はい、なかなか鋭い動きでした」
 褒められたことに嬉しそうにするケニー。
「よし、お前、俺の子分にしてやろう」
「なぜあなたの子分にならなければならないの」
 なにを突然言い出すのだろうか、このガキは。

「俺の父ちゃんはこの辺で一番強いんだぞ。子分も沢山だ。強いやつが親分、弱い方が子分だ」
 私はあきれ顔で言う。
「父親が強くても、あなたが強いわけではないでしょう」
「そんなことない、俺も強い」
「そうかしら、確かに同世代の子より強そうだけど、私より強いとは思えない」
「お前剣術習ったことないって言ってただろ」
「剣術だけが強さの全てではありません」
「そんなことない、剣術が一番強いんだ」
「そういうことではありません」
 鬱陶しくなって、少し睨む。
「兎に角、俺は強いんだ」

 あっ、逃げた。

 その後なぜか父親がローザス親子と現れ、私は週二回、ケニーと一緒に、ケイブリーから剣術の稽古を受けるようにといいわたされた。
 もっとも、私が習ったのは短剣術と護身術であったが。普通の剣なんてとても振れません。

 私は知らなかった。5年後ケイブリーが騎士団長に昇進することを。そして、ケニーが攻略対象者であることを。

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