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二年目、六歳
第94話 世界樹なの。
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レイニィ達は世界樹の島の港町を朝出発すると、その日は途中の街に泊まり、翌日の昼過ぎには世界樹に到着した。
「凄いの! 近づくとそびえ立つ壁にしか見えないの」
世界樹の幹の直径は約三キロメートル、高さは五百キロメートルにも及んでいる。
「レイニィ様、あちらが入り口になります」
「入り口?」
フリージィの発した単語に、レイニィは首を傾げる。
「レイニィ、世界樹は幹の中が空洞で、人々はその中で暮らしているんだ」
「木の中でなの!」
「きっと見たら驚くぞ」
レイニィ達はフリージィの言った入り口から世界樹の内部に入っていく。
そこには世界樹の内壁に、家というか建物というか、まあ、建造物が、いく層にも渡って上空まで続いていた。
なんとも壮麗なる眺めにレイニィはしばし言葉を失った。
「レイニィ様の惚けた顔なんて、大変貴重なものを見られました。それだけでも来た甲斐があったというものです」
「そうだな。初めて来た者は皆んなそうなるな」
商売で度々来ているフリージィだけでなく、エルダもここに来たことがあった。
「これ、一体何階まであるの。ピックリなの」
レイニィが復活して、捲し立てるように質問した。
「確か、十万階層だったと記憶しているが、その全てに人が住んでいるわけではないぞ」
「十万……。想像が追いつかないの」
「これで、木登りの心配をしなくていい理由がわかっていただけたでしょうか」
「階層を上がっていくための階段が整備されているからな。でも、それだけじゃないぞ。あれを見ろ」
エルダが指差す先には、遥か天上からロープで吊るされているゴンドラがいくつもあった。
「あれは、昇降機なの?」
「そうだ。よくわかったな」
「ええ、まあ。だけど、あれの動力はどうなってるの。まさか人力なの?」
この世界にあるモーターは、最近レイニィが開発した物だ。
だが、昇降機はそれ以前から設置されていたように見える。
そうなれば、動力はなんだろうとレイニィが不思議に思うのも無理もないことであった。
「あれは、人の重さで動いている」
「人の重さで、なの?」
「よく見てみろ、上にもゴンドラがあるだろう」
「ええ、確かにあるの」
「下のゴンドラと上のゴンドラがロープで繋がっているんだ。そして上に滑車があって、下のゴンドラが上がると、上のゴンドラが下がる仕組みだ」
構造は理解できるが、それでなぜ動くのかレイニィは不思議に思う。
そんなレイニィに、エルダは説明を続けた。
「それで、下のゴンドラより、上のゴンドラに人をたくさん乗せれば、人の重さでゴンドラが動くというわけだ」
「成る程、だけどそれだと、上に人がたくさんいなければならないの。上の人はどこから来るの」
「階段を上がっていくのさ」
「え?」
「レイニィ様、この昇降機ですが、降りる時は無料なのですが、登る時には有料なのです」
「お金を払えない、もしくは、払いたくない人は階段で上がって行き、降りる時は無料だから昇降機を使う。
それに、基本階段は登り専用で、降りるのは、なしだ。降りるにはゴンドラを使うと決まっている。
お陰で、お金を払えば、昇降機で楽して登れるということさ」
「よく考えられてるの」
レイニィは感心しながら、昇り降りする昇降機を眺めるのだった。
「レイニィ様は出来るだけ上まで行かれるのですよね。私は商売がありますので、残念ながらご一緒出来ませんので、二十日後までに戻って来ていただけるようお願いしたいのですが、よろしいでしょうか」
「それだけ登れば十分じゃないか」
「二十日なの。わかったの」
「それで、今日は、どうなさいますか? 今日は登らないのであれば、私どもが泊まる宿に部屋は用意してありますが」
「今日は馬車に揺られて疲れたの。登るのは明日からにするの」
「そうですか、それでしたら宿にご案内しますね。宿は四層になりますから、あのゴンドラで行きましょう」
「わーい。初ゴンドラなの」
レイニィ達はお金を払ってゴンドラで四層まで登り、その日は宿に泊まったのだった。
「凄いの! 近づくとそびえ立つ壁にしか見えないの」
世界樹の幹の直径は約三キロメートル、高さは五百キロメートルにも及んでいる。
「レイニィ様、あちらが入り口になります」
「入り口?」
フリージィの発した単語に、レイニィは首を傾げる。
「レイニィ、世界樹は幹の中が空洞で、人々はその中で暮らしているんだ」
「木の中でなの!」
「きっと見たら驚くぞ」
レイニィ達はフリージィの言った入り口から世界樹の内部に入っていく。
そこには世界樹の内壁に、家というか建物というか、まあ、建造物が、いく層にも渡って上空まで続いていた。
なんとも壮麗なる眺めにレイニィはしばし言葉を失った。
「レイニィ様の惚けた顔なんて、大変貴重なものを見られました。それだけでも来た甲斐があったというものです」
「そうだな。初めて来た者は皆んなそうなるな」
商売で度々来ているフリージィだけでなく、エルダもここに来たことがあった。
「これ、一体何階まであるの。ピックリなの」
レイニィが復活して、捲し立てるように質問した。
「確か、十万階層だったと記憶しているが、その全てに人が住んでいるわけではないぞ」
「十万……。想像が追いつかないの」
「これで、木登りの心配をしなくていい理由がわかっていただけたでしょうか」
「階層を上がっていくための階段が整備されているからな。でも、それだけじゃないぞ。あれを見ろ」
エルダが指差す先には、遥か天上からロープで吊るされているゴンドラがいくつもあった。
「あれは、昇降機なの?」
「そうだ。よくわかったな」
「ええ、まあ。だけど、あれの動力はどうなってるの。まさか人力なの?」
この世界にあるモーターは、最近レイニィが開発した物だ。
だが、昇降機はそれ以前から設置されていたように見える。
そうなれば、動力はなんだろうとレイニィが不思議に思うのも無理もないことであった。
「あれは、人の重さで動いている」
「人の重さで、なの?」
「よく見てみろ、上にもゴンドラがあるだろう」
「ええ、確かにあるの」
「下のゴンドラと上のゴンドラがロープで繋がっているんだ。そして上に滑車があって、下のゴンドラが上がると、上のゴンドラが下がる仕組みだ」
構造は理解できるが、それでなぜ動くのかレイニィは不思議に思う。
そんなレイニィに、エルダは説明を続けた。
「それで、下のゴンドラより、上のゴンドラに人をたくさん乗せれば、人の重さでゴンドラが動くというわけだ」
「成る程、だけどそれだと、上に人がたくさんいなければならないの。上の人はどこから来るの」
「階段を上がっていくのさ」
「え?」
「レイニィ様、この昇降機ですが、降りる時は無料なのですが、登る時には有料なのです」
「お金を払えない、もしくは、払いたくない人は階段で上がって行き、降りる時は無料だから昇降機を使う。
それに、基本階段は登り専用で、降りるのは、なしだ。降りるにはゴンドラを使うと決まっている。
お陰で、お金を払えば、昇降機で楽して登れるということさ」
「よく考えられてるの」
レイニィは感心しながら、昇り降りする昇降機を眺めるのだった。
「レイニィ様は出来るだけ上まで行かれるのですよね。私は商売がありますので、残念ながらご一緒出来ませんので、二十日後までに戻って来ていただけるようお願いしたいのですが、よろしいでしょうか」
「それだけ登れば十分じゃないか」
「二十日なの。わかったの」
「それで、今日は、どうなさいますか? 今日は登らないのであれば、私どもが泊まる宿に部屋は用意してありますが」
「今日は馬車に揺られて疲れたの。登るのは明日からにするの」
「そうですか、それでしたら宿にご案内しますね。宿は四層になりますから、あのゴンドラで行きましょう」
「わーい。初ゴンドラなの」
レイニィ達はお金を払ってゴンドラで四層まで登り、その日は宿に泊まったのだった。
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