68 / 104
一年目、五歳
第68話 一年経ったの。
しおりを挟む
春が来て、レイニィは六歳になった。
教会で仮職(プレジョブ)が『大魔術師』と決まり、前世の記憶が戻ってから一年になる。
そして今日は、家族が揃ってレイニィの誕生日をお祝いしていた。
みんなからお祝いの言葉を贈られるレイニィは、その場の雰囲気に反して、浮かない顔をしていた。
それは、レイニィがある決意を持ってこの場に臨んだからである。
「レイニィ。余り嬉しそうに見えないけどどうかしたの?」
レイニィの様子に堪りかねたミスティが声を掛ける。
「お姉ちゃん……。実はみんなに聞いて欲しいことがあるの。いえ、あります」
「どうしたんだレイニィ、急に改まって?」
父親のゲイルが急に態度を改めた様子にレイニィのことが心配になる。
「実は、家族のみんなに話してないことがあるの」
「家族だからといって、全てを話さなければならないものではないだろう。秘密があってもいいんだぞレイニィ」
「クール兄さんの言う通りだぞ、俺なんかこの間、応接室の壺を割ってしまったけど、誰にも秘密にしているからな」
「ドライ。やっぱりお前が壊したのか。まあ、父さんたちにはバレバレだったがな」
「え、そんな。うまく隠したつもりだったのに!」
「お兄ちゃんたち。ありがとうなの。いえ、ありがとう。でも、私はみんなにここで話しておかないと、心のそこから喜べないんです」
「そう。なら、話してごらんなさい。お母さん、レイニィのことならどんなことでも受け入れてあげるから」
「ありがとう、お母様。実は、私は異世界からの転生者で、異世界の、前世の記憶があるの」
「成る程、それで色々変な物を思い付くのね。納得だわ」
「ほう。それは凄いな。異世界とはどんな生活をしていたんだ。後で詳しく教えてくれ」
「異世界にも強い奴はいたか? やっぱり剣が主流なのか? 何か変わった武器はなかったか?」
「ドライ、レイニィに武器の話を聞いてもわからんだろ」
「そんな事わからんだろ。前世では武器に詳しかったかもしれない」
「いや、それはないだろう。前世の記憶があるのに、そんな話出てきた事ないだろう。出てくるのは天気の話ばかりで」
「それもそうだな」
「お姉ちゃんも、お兄ちゃんたちも、それでいいの? 私に前世の記憶があっても妹だと思ってくれるの?」
「当たり前じゃない」
「当然だろ!」
「何か問題があるのか?」
「レイニィ、異世界からの転生者だとは驚いたが、誰しもが輪廻転生を繰り返すものなのだよ。自分だけが別だと考える必要はないんだ」
「そうよ。レイニィは私が産んだ娘であることは間違いないのだから」
「お父様、お母様。私、この家に生まれてよかったよ」
「レイニィ様よかったですね」
「ありがとう。スノウィ」
「そうか、レイニィの知識は異世界の知識なのか。これからが益々楽しみになったぞ」
「先生、悪いことに使ったら駄目ですからね」
「わかってるって」
「しかし、なぜレイニィには前世の記憶があったんだろうな?」
「それは、女神様の加護として授かったから」
「ああ、授かった加護はそれだったのか」
「それだけじゃなかったけどね」
「それだけじゃない?」
「うん。他にも二つ授かったよ」
「なに、女神様の加護を複数授かったのか!」
「あなた、そんなことあるのですか?」
「いや、私は初めて聞いた」
「私も聞いたことがないな」
「まあ、天使の様に可愛いレイニィなら当然ね」
レイニィの予想に反し、女神様の加護を複数授かった事の方が、大騒ぎになったのだった。
レイニィは、転生前の記憶が戻って以来、背負い続けた肩の荷をやった下ろすことができ、晴れやかな気持ちで六歳の誕生日を迎えることができたのだった。
教会で仮職(プレジョブ)が『大魔術師』と決まり、前世の記憶が戻ってから一年になる。
そして今日は、家族が揃ってレイニィの誕生日をお祝いしていた。
みんなからお祝いの言葉を贈られるレイニィは、その場の雰囲気に反して、浮かない顔をしていた。
それは、レイニィがある決意を持ってこの場に臨んだからである。
「レイニィ。余り嬉しそうに見えないけどどうかしたの?」
レイニィの様子に堪りかねたミスティが声を掛ける。
「お姉ちゃん……。実はみんなに聞いて欲しいことがあるの。いえ、あります」
「どうしたんだレイニィ、急に改まって?」
父親のゲイルが急に態度を改めた様子にレイニィのことが心配になる。
「実は、家族のみんなに話してないことがあるの」
「家族だからといって、全てを話さなければならないものではないだろう。秘密があってもいいんだぞレイニィ」
「クール兄さんの言う通りだぞ、俺なんかこの間、応接室の壺を割ってしまったけど、誰にも秘密にしているからな」
「ドライ。やっぱりお前が壊したのか。まあ、父さんたちにはバレバレだったがな」
「え、そんな。うまく隠したつもりだったのに!」
「お兄ちゃんたち。ありがとうなの。いえ、ありがとう。でも、私はみんなにここで話しておかないと、心のそこから喜べないんです」
「そう。なら、話してごらんなさい。お母さん、レイニィのことならどんなことでも受け入れてあげるから」
「ありがとう、お母様。実は、私は異世界からの転生者で、異世界の、前世の記憶があるの」
「成る程、それで色々変な物を思い付くのね。納得だわ」
「ほう。それは凄いな。異世界とはどんな生活をしていたんだ。後で詳しく教えてくれ」
「異世界にも強い奴はいたか? やっぱり剣が主流なのか? 何か変わった武器はなかったか?」
「ドライ、レイニィに武器の話を聞いてもわからんだろ」
「そんな事わからんだろ。前世では武器に詳しかったかもしれない」
「いや、それはないだろう。前世の記憶があるのに、そんな話出てきた事ないだろう。出てくるのは天気の話ばかりで」
「それもそうだな」
「お姉ちゃんも、お兄ちゃんたちも、それでいいの? 私に前世の記憶があっても妹だと思ってくれるの?」
「当たり前じゃない」
「当然だろ!」
「何か問題があるのか?」
「レイニィ、異世界からの転生者だとは驚いたが、誰しもが輪廻転生を繰り返すものなのだよ。自分だけが別だと考える必要はないんだ」
「そうよ。レイニィは私が産んだ娘であることは間違いないのだから」
「お父様、お母様。私、この家に生まれてよかったよ」
「レイニィ様よかったですね」
「ありがとう。スノウィ」
「そうか、レイニィの知識は異世界の知識なのか。これからが益々楽しみになったぞ」
「先生、悪いことに使ったら駄目ですからね」
「わかってるって」
「しかし、なぜレイニィには前世の記憶があったんだろうな?」
「それは、女神様の加護として授かったから」
「ああ、授かった加護はそれだったのか」
「それだけじゃなかったけどね」
「それだけじゃない?」
「うん。他にも二つ授かったよ」
「なに、女神様の加護を複数授かったのか!」
「あなた、そんなことあるのですか?」
「いや、私は初めて聞いた」
「私も聞いたことがないな」
「まあ、天使の様に可愛いレイニィなら当然ね」
レイニィの予想に反し、女神様の加護を複数授かった事の方が、大騒ぎになったのだった。
レイニィは、転生前の記憶が戻って以来、背負い続けた肩の荷をやった下ろすことができ、晴れやかな気持ちで六歳の誕生日を迎えることができたのだった。
11
お気に入りに追加
232
あなたにおすすめの小説
異世界王女に転生したけど、貧乏生活から脱出できるのか
片上尚
ファンタジー
海の事故で命を落とした山田陽子は、女神ロミア様に頼まれて魔法がある世界のとある国、ファルメディアの第三王女アリスティアに転生!
悠々自適の贅沢王女生活やイケメン王子との結婚、もしくは現代知識で無双チートを夢見て目覚めてみると、待っていたのは3食草粥生活でした…
アリスティアは現代知識を使って自国を豊かにできるのか?
痩せっぽっちの王女様奮闘記。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~
ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。
異世界転生しちゃいました。
そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど
チート無いみたいだけど?
おばあちゃんよく分かんないわぁ。
頭は老人 体は子供
乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。
当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。
訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。
おばあちゃん奮闘記です。
果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか?
[第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。
第二章 学園編 始まりました。
いよいよゲームスタートです!
[1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。
話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。
おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので)
初投稿です
不慣れですが宜しくお願いします。
最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。
申し訳ございません。
少しづつ修正して纏めていこうと思います。
滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!
白夢
ファンタジー
何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。
そう言われて、異世界に転生することになった。
でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。
どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。
だからわたしは旅に出た。
これは一人の幼女と小さな幻獣の、
世界なんて救わないつもりの放浪記。
〜〜〜
ご訪問ありがとうございます。
可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。
ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。
お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします!
23/01/08 表紙画像を変更しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる