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一年目、五歳
第65話 立派な侍女になります。
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年が明けて新年。スノウィも今年で成人する歳となった。
スノウィの仮職(プレジョブ)は『侍女』である。このまま試練を達成して正式の職(ジョブ)として『侍女』となりたいとスノウィは考えていた。
実際、現在の達成度ならば問題なく『侍女』になれることであろう。
しかし、気になる点が一つあった。
試練の一つに「生涯仕えるに足る主人に会う」というものがあった。スノウィとしては、レイニィこそ生涯仕えるべき主人だと思っていたが、この試練に付いている評価は「C」、合格ではあるが、とても納得のいくものではなかった。
「この、レイニィお嬢様に対する私の思いは、「A」評価、いえ、「S」評価でもおかしくないはずよ。それなのに何故「C」評価? 何が悪いのでしょう――」
スノウィはあれこれ考える。
[考えたくはありませんが、私がレイニィ様に信頼されていないから評価が低いのでしょうか?
ですが、家族にも知らせていない、女神様の加護について、私には相談して下さいました。信頼されていないということはないでしょう。
それでは、その信頼に私が応えていないというのはどうでしょう。
私はお嬢様を裏切るようなことをしていませんし、喋らないでくれと言われたことは、他人に漏らすこともしていません。常にお嬢様のことを考え、お嬢様のために行動しています。
可能性は低いですが、レイニィ様が、生涯仕えるには足りない可能性はどうでしょう。それこそあり得ませんね。女神様の加護を複数授かる様な立派な人物です。おまけに、仮職(プレジョブ)の段階で上級職。それなのに、驕ることもなく努力を続けている。生涯仕えるのにこの上のないお方です。
それでは、何がいけないのでしょう。
もしかすると、スキンシップが足りないのでしょうか。
よく、理想的な主従は一心同体といわれます。レイニィ様と私は、心は一つです。ですが、身体はどうでしょう。同体といえるまでになっているでしょうか。
いや、なっていません。
きっとこれです。これからは、レイニィ様と同体となるべく頑張らなければ!]
新年早々、スノウィは、とんでもない方向に決意を新たにするのだった。
それからのスノウィは、レイニィの側を片時も離れようとしなくなった。お風呂の時も一緒に入ろうとし、寝る時も脇を離れることがなかった。
流石にその様子に不審に思ったレイニィが、スノウィに直接聞いてみたが、得られた答えは「お嬢様と一つになるためです」と要領を得られるものではなかった。
周りで見ていた者も気付き出し、姉のミスティが、父親のゲイルにその様子を伝えたのだった。
ゲイルは、スノウィを呼び出し、レイニィと共に事情を聞いた。そのうえで、ゲイルは、スノウィに言い渡した。
「それなら、この屋敷のメイドは辞めてもらうしかないな。そのうえで……」
「そんな! 私にお嬢様の侍女を辞めろというのですか? 私にとっての主人はレイニィお嬢様以外あり得ません! どうかお願いします。何でもしますから、ここに置いてください」
スノウィは必死の思いでゲイルに懇願する。
「お父さま、酷いの。そんなこと許さないの!」
レイニィもゲイルの言葉に猛反発である。
「そう慌てるな。話は最後まで聞け」
ゲイルはスノウィとレイニィに落ち着くように言う。
「取り乱してすみませんでした、ご主人様」
スノウィがゲイルに謝罪する。
「つまり、そういうことだ」
「え?」
「意味がわからないの?」
「スノウィ。今の君の雇主、つまり主人は私だ。たとえレイニィ専属であってもそれは変わらない」
「そうですね」
「だから評価が上がらないの?」
「そうだ。そこでだ。いったん、屋敷のメイドは辞めてもらって、レイニィが個人的に君を雇う。これで、正式に君の主人はレイニィになる。それで、この問題は多分解決だ」
「スノウィがあたし専属から、あたしの侍女になるの」
「お嬢様、いえ、ご主人様」
スノウィはレイニィと堅く抱き合うのだった。
ゲイルはその様子を微笑ましく、見守るのであった。
スノウィの仮職(プレジョブ)は『侍女』である。このまま試練を達成して正式の職(ジョブ)として『侍女』となりたいとスノウィは考えていた。
実際、現在の達成度ならば問題なく『侍女』になれることであろう。
しかし、気になる点が一つあった。
試練の一つに「生涯仕えるに足る主人に会う」というものがあった。スノウィとしては、レイニィこそ生涯仕えるべき主人だと思っていたが、この試練に付いている評価は「C」、合格ではあるが、とても納得のいくものではなかった。
「この、レイニィお嬢様に対する私の思いは、「A」評価、いえ、「S」評価でもおかしくないはずよ。それなのに何故「C」評価? 何が悪いのでしょう――」
スノウィはあれこれ考える。
[考えたくはありませんが、私がレイニィ様に信頼されていないから評価が低いのでしょうか?
ですが、家族にも知らせていない、女神様の加護について、私には相談して下さいました。信頼されていないということはないでしょう。
それでは、その信頼に私が応えていないというのはどうでしょう。
私はお嬢様を裏切るようなことをしていませんし、喋らないでくれと言われたことは、他人に漏らすこともしていません。常にお嬢様のことを考え、お嬢様のために行動しています。
可能性は低いですが、レイニィ様が、生涯仕えるには足りない可能性はどうでしょう。それこそあり得ませんね。女神様の加護を複数授かる様な立派な人物です。おまけに、仮職(プレジョブ)の段階で上級職。それなのに、驕ることもなく努力を続けている。生涯仕えるのにこの上のないお方です。
それでは、何がいけないのでしょう。
もしかすると、スキンシップが足りないのでしょうか。
よく、理想的な主従は一心同体といわれます。レイニィ様と私は、心は一つです。ですが、身体はどうでしょう。同体といえるまでになっているでしょうか。
いや、なっていません。
きっとこれです。これからは、レイニィ様と同体となるべく頑張らなければ!]
新年早々、スノウィは、とんでもない方向に決意を新たにするのだった。
それからのスノウィは、レイニィの側を片時も離れようとしなくなった。お風呂の時も一緒に入ろうとし、寝る時も脇を離れることがなかった。
流石にその様子に不審に思ったレイニィが、スノウィに直接聞いてみたが、得られた答えは「お嬢様と一つになるためです」と要領を得られるものではなかった。
周りで見ていた者も気付き出し、姉のミスティが、父親のゲイルにその様子を伝えたのだった。
ゲイルは、スノウィを呼び出し、レイニィと共に事情を聞いた。そのうえで、ゲイルは、スノウィに言い渡した。
「それなら、この屋敷のメイドは辞めてもらうしかないな。そのうえで……」
「そんな! 私にお嬢様の侍女を辞めろというのですか? 私にとっての主人はレイニィお嬢様以外あり得ません! どうかお願いします。何でもしますから、ここに置いてください」
スノウィは必死の思いでゲイルに懇願する。
「お父さま、酷いの。そんなこと許さないの!」
レイニィもゲイルの言葉に猛反発である。
「そう慌てるな。話は最後まで聞け」
ゲイルはスノウィとレイニィに落ち着くように言う。
「取り乱してすみませんでした、ご主人様」
スノウィがゲイルに謝罪する。
「つまり、そういうことだ」
「え?」
「意味がわからないの?」
「スノウィ。今の君の雇主、つまり主人は私だ。たとえレイニィ専属であってもそれは変わらない」
「そうですね」
「だから評価が上がらないの?」
「そうだ。そこでだ。いったん、屋敷のメイドは辞めてもらって、レイニィが個人的に君を雇う。これで、正式に君の主人はレイニィになる。それで、この問題は多分解決だ」
「スノウィがあたし専属から、あたしの侍女になるの」
「お嬢様、いえ、ご主人様」
スノウィはレイニィと堅く抱き合うのだった。
ゲイルはその様子を微笑ましく、見守るのであった。
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