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一年目、五歳
第46話 ガラスを作るわよ。
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ミスティ ポート ライズは十六歳。レイニィの姉にして、ライズ家の長女で、第一子。
十五歳で成人した時に「錬金術師」の職(ジョブ)を得ている。
ウェーブのかかった明るい茶髪で、腰の上まで長さがあった。
瞳の色はヘーゼルで、レイニィがぱっちりした目なのに対して、どちらかというと切れ長だ。
レイニィが可愛い系なら、ミスティは美人系だった。
年頃で、美人で、領主の娘となれば、周りが放っておくはずなかった。
父親の元には沢山の縁談話が舞い込んでいた。
そんな彼女の最近の悩みは、恋でも愛でもなかった。それは、透明なガラス。
可愛い妹のレイニィが欲しがっていた、それの発明に、寝る間も惜しんで、心血を注いでいた。
何故、そこまで熱心なのか。
勿論、錬金術師として新しい物を作り出したいという気持ちもあるが、なにより、レイニィに喜んでもらいたい。
その天使の様な笑顔で「お姉ちゃんありがとう」と言ってもらいたい。
その為だった。
透明なガラスを作る事は大変な事だった。
夏の暑い日、炉に火を入れて、汗まみれの作業である。
レイニィにもらった温度計は、四十度を軽く越えている。
何度も試行錯誤を繰り返した結果、ある程度、透き通った物はできる様になった。だが、まだ、納得のいくものではなかった。
この程度では、折角のレイニィの笑顔が曇ってしまう。
矢張り、晴天の空の様に、曇りのない、どこまでも透き通った物でなければいけない。
ミスティは妥協しなかった。
それというのも、レイニィの知識により、出来ることは分かっているからだ。
諦めるわけにはいかなかった。
錬金術師としての自負がある。
なにより、可愛いレイニィのために。
材料の砂粒を厳選し、溶かす温度を上げてみた。
少しずつではあるが、改良されてきたが、それもそろそろ限界だ。
ガラスは混ぜ物によって色が変わる。色々なものを試してみた。
お陰で色とりどりのガラスができた。
これはこれで使い道があるだろう。
でも、今欲しいのは透明なガラスだ。
熱い炉のそばで作業していれば、喉も渇く。
水を飲むが、その透明な水が妬ましい。
[水は透明。あのアントも透明。何故透明なのだろう?
あのアントについては、突然変異だと言われていたが、突然変異した原因なんだろう?]
ミスティは頭を悩ます。
[何が普通にアントと違ったのだろう?]
ふと、レイニィがあのアントは赤土の山に住んでいたと言ったのを思い出す。
[赤土の山か。この辺では余り見かけないわね……]
わらをも掴む気持ちで、アント狩りに、一緒に行っていた護衛に頼んで土を取ってきてもらった。
材料にその土を混ぜて、願う気持ちでガラスを作った。
そして、奇跡は起こった。
「透明なガラスができたわ。なんて綺麗なのかしら!」
キラキラ光り、自分で求めていた以上に物が出来上がった。
これならきっと、レイニィも大喜びであろう。
「レイニィが帰ってきたら、好きなだけ使える様に、沢山作っておきましょう」
レイニィの喜ぶ顔を思い浮かべながら、ミスティは透明なガラスの本格的な製造にはいった。
山積みにされた透明なガラスを見て、温度計などを作りたいレイニィは勿論、照明を作りたいエルダも大喜びをする事だろう。
ミスティは四十度を超える部屋の中、せっせとガラスを作り続けるのだった。
ミスティのヘーゼルの瞳に映るのは、レイニィのみ。
他の男が映ることは、今しばらくありそうもなかった――。
十五歳で成人した時に「錬金術師」の職(ジョブ)を得ている。
ウェーブのかかった明るい茶髪で、腰の上まで長さがあった。
瞳の色はヘーゼルで、レイニィがぱっちりした目なのに対して、どちらかというと切れ長だ。
レイニィが可愛い系なら、ミスティは美人系だった。
年頃で、美人で、領主の娘となれば、周りが放っておくはずなかった。
父親の元には沢山の縁談話が舞い込んでいた。
そんな彼女の最近の悩みは、恋でも愛でもなかった。それは、透明なガラス。
可愛い妹のレイニィが欲しがっていた、それの発明に、寝る間も惜しんで、心血を注いでいた。
何故、そこまで熱心なのか。
勿論、錬金術師として新しい物を作り出したいという気持ちもあるが、なにより、レイニィに喜んでもらいたい。
その天使の様な笑顔で「お姉ちゃんありがとう」と言ってもらいたい。
その為だった。
透明なガラスを作る事は大変な事だった。
夏の暑い日、炉に火を入れて、汗まみれの作業である。
レイニィにもらった温度計は、四十度を軽く越えている。
何度も試行錯誤を繰り返した結果、ある程度、透き通った物はできる様になった。だが、まだ、納得のいくものではなかった。
この程度では、折角のレイニィの笑顔が曇ってしまう。
矢張り、晴天の空の様に、曇りのない、どこまでも透き通った物でなければいけない。
ミスティは妥協しなかった。
それというのも、レイニィの知識により、出来ることは分かっているからだ。
諦めるわけにはいかなかった。
錬金術師としての自負がある。
なにより、可愛いレイニィのために。
材料の砂粒を厳選し、溶かす温度を上げてみた。
少しずつではあるが、改良されてきたが、それもそろそろ限界だ。
ガラスは混ぜ物によって色が変わる。色々なものを試してみた。
お陰で色とりどりのガラスができた。
これはこれで使い道があるだろう。
でも、今欲しいのは透明なガラスだ。
熱い炉のそばで作業していれば、喉も渇く。
水を飲むが、その透明な水が妬ましい。
[水は透明。あのアントも透明。何故透明なのだろう?
あのアントについては、突然変異だと言われていたが、突然変異した原因なんだろう?]
ミスティは頭を悩ます。
[何が普通にアントと違ったのだろう?]
ふと、レイニィがあのアントは赤土の山に住んでいたと言ったのを思い出す。
[赤土の山か。この辺では余り見かけないわね……]
わらをも掴む気持ちで、アント狩りに、一緒に行っていた護衛に頼んで土を取ってきてもらった。
材料にその土を混ぜて、願う気持ちでガラスを作った。
そして、奇跡は起こった。
「透明なガラスができたわ。なんて綺麗なのかしら!」
キラキラ光り、自分で求めていた以上に物が出来上がった。
これならきっと、レイニィも大喜びであろう。
「レイニィが帰ってきたら、好きなだけ使える様に、沢山作っておきましょう」
レイニィの喜ぶ顔を思い浮かべながら、ミスティは透明なガラスの本格的な製造にはいった。
山積みにされた透明なガラスを見て、温度計などを作りたいレイニィは勿論、照明を作りたいエルダも大喜びをする事だろう。
ミスティは四十度を超える部屋の中、せっせとガラスを作り続けるのだった。
ミスティのヘーゼルの瞳に映るのは、レイニィのみ。
他の男が映ることは、今しばらくありそうもなかった――。
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