42 / 104
一年目、五歳
第42話 RGBなの。
しおりを挟む
三種類のスライムを持って帰ったレイニィは、次の日は洞窟には行かずにエルダの家で実験をする事にした。
「ううう。勿体無いけど、ガラスがないから、透明なアントの脚を使うの」
レイニィは銀(シルバー)スライムが手に入ったら、すぐに気圧計が作れる様にと、持ってきていたアントの脚を、荷物から三本取り出した。
「それを使うのか?」
「洞窟の中を歩くのに、これから作るものがあった方が便利なの。効率よく銀スライムを見つけるためなの。尊き犠牲なの――」
「さっきから、言葉と裏腹に身体が拒否している様だが、大丈夫か?」
レイニィはアントの脚を握ったまま、小刻みに震えたまま、次の動作に移ろうとしなかった。
「ううう。身体がいうことを訊かないの」
「どれ、貸してみろ。私が代わりにやってやろう」
「お願いしますなの」
「ほら、よこせ」
「はいなの」
「だから。よこせって」
「どうぞなの」
「なら、その手を離せ」
「離すの」
「だから、離せって。余計強く握ってるじゃないか。こうなれば力尽くで、ぐぬぬぬ!」
「あ、駄目なの。割れるの!」
「そう思うなら、サッサと離せ!」
エルダは力を込めてレイニィからアントの脚をうばいとった。
「ハア、ハア、ハア。子供のくせに随分力があるな」
「ううう。力尽くで、あたしの大切なものが奪われてしまったの。もう、お嫁にいけないの……」
「人聞きの悪いことを言うな。それに、何故お嫁にいけなくなる?」
「大事な嫁入り道具なの」
「気圧計がか? どんな嫁だ! まあ、この脚自体は高価だから、持参金にはなるな」
「持参金なんてとんでもないの。温度計、湿度計、気圧計は三種の神器なの」
「嫁入り道具を飛び越えて、神器ときたか。はいはい、その神器を作るために、これから作る物が必要なんだろ。サッサとやるぞ」
「わかったの。サッサとやるの」
レイニィは諦めて、エルダに作業の手順を指示することにした。
「まず。アントの脚、管の片側を塞ぐの」
「塞ぐのか――、取り敢えず粘土でいいか」
「次にスライムを管に注ぎ込むの」
「スライムを入れるんだな。――よし、できた」
「管の反対側も塞ぐの」
「はいはい。粘土で塞いで」
「これを三種類とも同じ様に作るの」
「赤はできたから、後は緑と青だな」
エルダは残りの二種類も作る。
「できたぞ。次はどうするんだ」
「これからは実験なの。三本を並べるの」
「並べる。こんな感じでいいか?」
エルダはテーブルの上に管を縦一列に並べた。
「そうじゃないの。横に並べるの」
「ああ、はいはい。これでいいか」
エルダは横に並べ直す。
「それでいいの。後は、魔力を込めるの」
「三色に光るだけだが、これでいいのか?」
「これでいいの。上を見るの」
「上? 天井に何か……。照らされてるな。赤でも緑でも青でもなく、白色で!」
「ここまでは成功なの」
「これはびっくりだな。三色を合わせると白色になるのだな。この後はどうするんだ」
「後は、三種類の光の強さをそれぞれに変えてみるの」
「おー。色々な色が出せるのだな。これは綺麗だな」
「これを小さくして、たくさん並べれば、動く絵ができるの」
「動く絵だと。想像がつかんが、見てみたいな」
「それが出来る様になるまでには随分掛かるの」
「そうか、それは残念。いや、将来が楽しみか。ところで、そうなると、何が洞窟で役立つんだ」
「松明の代わりになるの」
「ああ、そうだな。松明よりは便利そうだ。だが、三本に分かれていたら持ち難いぞ」
「だから、一本にまとめられないか試してみるの」
レイニィは一旦、スライムを管から取り出すと、別の容器を用意して、三種類を混ぜ始めた。
「何か黒っぽく汚い色になったが大丈夫なのか?」
「わからないの」
「わからないって……」
「わからないからこその実験なの」
「まあ、そうだな。これをまた管に詰めればいいのか?」
「そうなの」
黒っぽく汚いスライムが入った管が出来ると、レイニィは魔力を込めた。
管からは綺麗な白色光が放された。
「成功なの!」
「これなら持つにも困らないし、熱くないのだな。火傷する心配もない。魔石を組み込んでやれば誰でも使える。立派な魔道具だ。これは売れるぞ!」
「駄目なの」
「何でだ! こんな便利な物、みんなに使ってもらった方がいいだろう」
「透明な管がないの」
「あー。そうだったな」
エルダは、昨日レイニィが叫んでいた「ガラスが必要なの!」と言う言葉を思い出し、同じことを叫びたくなったのだった。
「ううう。勿体無いけど、ガラスがないから、透明なアントの脚を使うの」
レイニィは銀(シルバー)スライムが手に入ったら、すぐに気圧計が作れる様にと、持ってきていたアントの脚を、荷物から三本取り出した。
「それを使うのか?」
「洞窟の中を歩くのに、これから作るものがあった方が便利なの。効率よく銀スライムを見つけるためなの。尊き犠牲なの――」
「さっきから、言葉と裏腹に身体が拒否している様だが、大丈夫か?」
レイニィはアントの脚を握ったまま、小刻みに震えたまま、次の動作に移ろうとしなかった。
「ううう。身体がいうことを訊かないの」
「どれ、貸してみろ。私が代わりにやってやろう」
「お願いしますなの」
「ほら、よこせ」
「はいなの」
「だから。よこせって」
「どうぞなの」
「なら、その手を離せ」
「離すの」
「だから、離せって。余計強く握ってるじゃないか。こうなれば力尽くで、ぐぬぬぬ!」
「あ、駄目なの。割れるの!」
「そう思うなら、サッサと離せ!」
エルダは力を込めてレイニィからアントの脚をうばいとった。
「ハア、ハア、ハア。子供のくせに随分力があるな」
「ううう。力尽くで、あたしの大切なものが奪われてしまったの。もう、お嫁にいけないの……」
「人聞きの悪いことを言うな。それに、何故お嫁にいけなくなる?」
「大事な嫁入り道具なの」
「気圧計がか? どんな嫁だ! まあ、この脚自体は高価だから、持参金にはなるな」
「持参金なんてとんでもないの。温度計、湿度計、気圧計は三種の神器なの」
「嫁入り道具を飛び越えて、神器ときたか。はいはい、その神器を作るために、これから作る物が必要なんだろ。サッサとやるぞ」
「わかったの。サッサとやるの」
レイニィは諦めて、エルダに作業の手順を指示することにした。
「まず。アントの脚、管の片側を塞ぐの」
「塞ぐのか――、取り敢えず粘土でいいか」
「次にスライムを管に注ぎ込むの」
「スライムを入れるんだな。――よし、できた」
「管の反対側も塞ぐの」
「はいはい。粘土で塞いで」
「これを三種類とも同じ様に作るの」
「赤はできたから、後は緑と青だな」
エルダは残りの二種類も作る。
「できたぞ。次はどうするんだ」
「これからは実験なの。三本を並べるの」
「並べる。こんな感じでいいか?」
エルダはテーブルの上に管を縦一列に並べた。
「そうじゃないの。横に並べるの」
「ああ、はいはい。これでいいか」
エルダは横に並べ直す。
「それでいいの。後は、魔力を込めるの」
「三色に光るだけだが、これでいいのか?」
「これでいいの。上を見るの」
「上? 天井に何か……。照らされてるな。赤でも緑でも青でもなく、白色で!」
「ここまでは成功なの」
「これはびっくりだな。三色を合わせると白色になるのだな。この後はどうするんだ」
「後は、三種類の光の強さをそれぞれに変えてみるの」
「おー。色々な色が出せるのだな。これは綺麗だな」
「これを小さくして、たくさん並べれば、動く絵ができるの」
「動く絵だと。想像がつかんが、見てみたいな」
「それが出来る様になるまでには随分掛かるの」
「そうか、それは残念。いや、将来が楽しみか。ところで、そうなると、何が洞窟で役立つんだ」
「松明の代わりになるの」
「ああ、そうだな。松明よりは便利そうだ。だが、三本に分かれていたら持ち難いぞ」
「だから、一本にまとめられないか試してみるの」
レイニィは一旦、スライムを管から取り出すと、別の容器を用意して、三種類を混ぜ始めた。
「何か黒っぽく汚い色になったが大丈夫なのか?」
「わからないの」
「わからないって……」
「わからないからこその実験なの」
「まあ、そうだな。これをまた管に詰めればいいのか?」
「そうなの」
黒っぽく汚いスライムが入った管が出来ると、レイニィは魔力を込めた。
管からは綺麗な白色光が放された。
「成功なの!」
「これなら持つにも困らないし、熱くないのだな。火傷する心配もない。魔石を組み込んでやれば誰でも使える。立派な魔道具だ。これは売れるぞ!」
「駄目なの」
「何でだ! こんな便利な物、みんなに使ってもらった方がいいだろう」
「透明な管がないの」
「あー。そうだったな」
エルダは、昨日レイニィが叫んでいた「ガラスが必要なの!」と言う言葉を思い出し、同じことを叫びたくなったのだった。
11
お気に入りに追加
232
あなたにおすすめの小説
ハズレ召喚として追放されたボクは、拡大縮小カメラアプリで異世界無双
さこゼロ
ファンタジー
突然、異世界に転生召喚された4人の少年少女たち。儀式を行った者たちに言われるがまま、手に持っていたスマホのアプリを起動させる。
ある者は聖騎士の剣と盾、
ある者は聖女のローブ、
それぞれのスマホからアイテムが出現する。
そんな中、ひとりの少年のスマホには、画面にカメラアプリが起動しただけ。
ハズレ者として追放されたこの少年は、これからどうなるのでしょうか…
if分岐の続編として、
「帰還した勇者を護るため、今度は私が転移します!」を公開しています(^^)
異世界王女に転生したけど、貧乏生活から脱出できるのか
片上尚
ファンタジー
海の事故で命を落とした山田陽子は、女神ロミア様に頼まれて魔法がある世界のとある国、ファルメディアの第三王女アリスティアに転生!
悠々自適の贅沢王女生活やイケメン王子との結婚、もしくは現代知識で無双チートを夢見て目覚めてみると、待っていたのは3食草粥生活でした…
アリスティアは現代知識を使って自国を豊かにできるのか?
痩せっぽっちの王女様奮闘記。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~
ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。
異世界転生しちゃいました。
そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど
チート無いみたいだけど?
おばあちゃんよく分かんないわぁ。
頭は老人 体は子供
乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。
当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。
訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。
おばあちゃん奮闘記です。
果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか?
[第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。
第二章 学園編 始まりました。
いよいよゲームスタートです!
[1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。
話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。
おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので)
初投稿です
不慣れですが宜しくお願いします。
最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。
申し訳ございません。
少しづつ修正して纏めていこうと思います。
滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!
白夢
ファンタジー
何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。
そう言われて、異世界に転生することになった。
でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。
どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。
だからわたしは旅に出た。
これは一人の幼女と小さな幻獣の、
世界なんて救わないつもりの放浪記。
〜〜〜
ご訪問ありがとうございます。
可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。
ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。
お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします!
23/01/08 表紙画像を変更しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる