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第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件

113. 治療

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 元近衛隊長によってララエルとヒロインが串刺しにされてしまった。

 私は慌ててノアールから降りると、倒れ込んでいる二人に駆け寄った。
 まだ息がある。ヨミの眠りを使えば助けられるだろう。

「マリー様、二人を助けるのはおやめください」
 元近衛隊長は私を止めようとするが、そんなことに従うわけにはいかない。逆に元近衛隊長に言い返す。
「法律に則った方法を取るべきだと言ったはずだわ。手を出さないで! これは国王陛下の孫としての命令よ」

 国王陛下の孫にどれだけの効力があるかわからないが、使えるものは、名ばかりの権力でも使うことにした。
 幸い、効力があったのか、元近衛隊長は黙り込んで、私の邪魔をすることはなかった。

「ララエル、今助けますわ」
「お嬢様、私は大丈夫ですから、ヒロインに集中してください」
 ヒロインの意識は既にないが、ララエルはまだ話せるらしい。ララエルの傷も深いはずだが、本当に大丈夫なのか?

「私は本当に大丈夫ですから、ヒロインに早く」
 考え込んでいる場合ではなかった。
「ええ、わかったわ」

 私はヒロインに手を当て、ヨミの眠りを使う。
 だが、私の闇の魔力がヒロインの光の魔力によって打ち消されてしまう。
 そうだった。魔法の属性には相性があるのだった。
 闇と光は最悪のようだ。

「闇の魔力が光の魔力で消されてしまうわ」
「そうですか。私が手助けします。片方の手を私の方に」

 私がララエルに手を差し出すと、ララエルはそれを握り返した。

「大丈夫なの?」
「大丈夫ですから、ヒロインの治療を続けてください」

 私は言われるとおりにヒロインにヨミの眠りをかける。
 やはり闇の魔力が光の魔力で打ち消されてしまう。

「いきますよ」

 ララエルの手から魔力とは違う力が流れ込んでくる。

「私の神力がわかりますか? それを闇の魔力に混ぜ込んで使ってください」
「やってみるわ」
 ララエルに言われたとおりにイメージし、ヨミの眠りを使用する。
 今度は、ヒロインの光の魔力を私の闇の魔力が侵食していく。
 この調子でいけばうまくいくだろう。

 ヒロインのピンクゴールドの髪が徐々に黒く染まっていく。
 そして、なぜが私の白髪は白金色に輝き始めた。
 側から見たら後光が差しているようだろう。

「ゲホ! ゴホ!」
 ララエルが咳き込んだ。深手を負っているのにこんなことを続けて本当に大丈夫なのだろうか?
 心なしか、ララエルが透けて見える。

「ララエル、体が透けて見えるけど、本当に大丈夫なの」
「心配しないで、大丈夫ですから。後少し頑張って」

 私はヒロインに集中する。

「なぜ、そこまでして助ける必要があるのです。そいつは、マリー様を陥れたのですよ。さっきだって暴言を吐いていました。法律的にも不敬罪で死刑にできます」
 元騎士団長が話しかけてきた。ヒロインに集中しているので、邪魔しないで欲しいのだが、無視するわけにもいかないか。

「それでも、死なせるわけにはいかないのよ」
 ヒロインなんだから。

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