110 / 118
第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件
109. 告白
しおりを挟む
ニコラスの部屋に忍び込み、認識阻害の魔法で隠れていたが、こんな時に限ってお腹を鳴らす馬鹿者がいた。
確かに夕飯前で、お腹はすいているだろうが、時と場所を考えなさいよ。
「そこね! 隠れてないで出てきなさい」
お陰でロザリー様に見破られてしまったじゃない。
兵士を呼ばれて大事になってはまずいので、私は魔法を解くことにした。
「ハインリッヒにマリー! やはり生きていたのね」
「ロザリー様ご無沙汰しております」
「どうも」
姿を見せた私たちにロザリー様は驚きの表情を見せるが、私たちが生きていることは予想していたようだ。
「ハインリッヒ、ごめんなさい。イザベラを死なせてしまって」
これは、どういうことだ? ロザリー様が真犯人だったのだろうか。
「それは、ロザリー様がマリーを殺すように命令したということか?」
リヒトがロザリー様を怒りのこもった目で睨む。
「それは違うわ。だけど、原因を作ったのは私たちなの」
私たちということは、ロザリー様一人ではないということか。
「たぶん、原因となったのは、あるお茶会で交わされた私たち王太子妃三人の会話なの」
王太子妃三人! 三人ともかかわっていたのか。
「当時王宮で、悪役令嬢のマリーが闇魔法を使い、王子をたぶらかしてこの国を乗っ取るつもりだ、と噂が流れていたの」
まあ、悪役令嬢なのは間違いではないわね。国を乗っ取るつもりはないけど。
「その噂をする者に対して、トワが『警戒が必要ね』と言ったの。私は『そうね、必要なら対策を取りましょう』と答えたわ。そうしたら、イザベラが『そんなのは噂の発生元を処分するべきなのよ』と」
「その会話を傍で聞いていた女騎士が、噂をする者でなく、私に対して、警戒が必要で、必要なら対策を取って、処分すべきだと受け取ったということですか?」
「全て、女騎士の勘違いだと!」
しかも、命令されたわけでもないのに、忖度して私を殺そうとしたことになる。近衛隊はどんな教育をしていたんだ!
「そういうことなのだけど、全て女騎士の責任にするつもりはないわ。私たちが不用意な会話をしてしまったのが原因だし、そんな女騎士を近衛に置いた責任も、噂を取り締まれなかった責任もあるわ」
「それなら、なんで、お父様には王位の継承権争いだなんて説明したのですか?」
私はロザリー様に疑問に思ったことを問い質した。
「嫌われて殺されたより、好かれて、奪い合いの結果殺された方が、まだ、印象がいいでしょ」
「殺された、には、違いないじゃないですか」
「そこまで切羽詰まった状態だったのよ」
「切羽詰まった状態?」
「マリー、あなたは自分の立場をわかっていないわ。イングラスがこの国に併合されていなければ、あなたは王女なのよ。その王女が敵国の王宮で近衛に殺されたら、戦争にならない方がおかしでしょ。戦争を回避するには、誰かが責任を取らなければならなかったのよ」
「それで、母上が生贄になったと」
「生贄だなんて……。話し合いになる前にイザベラは自ら命を絶ったのよ。でもそうね。話し合えば、生贄はイザベラに決まったでしょうね」
戦争を回避するためには命をかける。これが高貴な者が負う責任なのだろうか。
しかし、悔やまれるは、私たち二人が生きていることがわかっていれば、イザベラ様が死ぬ必要はなかったのだろうということだ。
確かに夕飯前で、お腹はすいているだろうが、時と場所を考えなさいよ。
「そこね! 隠れてないで出てきなさい」
お陰でロザリー様に見破られてしまったじゃない。
兵士を呼ばれて大事になってはまずいので、私は魔法を解くことにした。
「ハインリッヒにマリー! やはり生きていたのね」
「ロザリー様ご無沙汰しております」
「どうも」
姿を見せた私たちにロザリー様は驚きの表情を見せるが、私たちが生きていることは予想していたようだ。
「ハインリッヒ、ごめんなさい。イザベラを死なせてしまって」
これは、どういうことだ? ロザリー様が真犯人だったのだろうか。
「それは、ロザリー様がマリーを殺すように命令したということか?」
リヒトがロザリー様を怒りのこもった目で睨む。
「それは違うわ。だけど、原因を作ったのは私たちなの」
私たちということは、ロザリー様一人ではないということか。
「たぶん、原因となったのは、あるお茶会で交わされた私たち王太子妃三人の会話なの」
王太子妃三人! 三人ともかかわっていたのか。
「当時王宮で、悪役令嬢のマリーが闇魔法を使い、王子をたぶらかしてこの国を乗っ取るつもりだ、と噂が流れていたの」
まあ、悪役令嬢なのは間違いではないわね。国を乗っ取るつもりはないけど。
「その噂をする者に対して、トワが『警戒が必要ね』と言ったの。私は『そうね、必要なら対策を取りましょう』と答えたわ。そうしたら、イザベラが『そんなのは噂の発生元を処分するべきなのよ』と」
「その会話を傍で聞いていた女騎士が、噂をする者でなく、私に対して、警戒が必要で、必要なら対策を取って、処分すべきだと受け取ったということですか?」
「全て、女騎士の勘違いだと!」
しかも、命令されたわけでもないのに、忖度して私を殺そうとしたことになる。近衛隊はどんな教育をしていたんだ!
「そういうことなのだけど、全て女騎士の責任にするつもりはないわ。私たちが不用意な会話をしてしまったのが原因だし、そんな女騎士を近衛に置いた責任も、噂を取り締まれなかった責任もあるわ」
「それなら、なんで、お父様には王位の継承権争いだなんて説明したのですか?」
私はロザリー様に疑問に思ったことを問い質した。
「嫌われて殺されたより、好かれて、奪い合いの結果殺された方が、まだ、印象がいいでしょ」
「殺された、には、違いないじゃないですか」
「そこまで切羽詰まった状態だったのよ」
「切羽詰まった状態?」
「マリー、あなたは自分の立場をわかっていないわ。イングラスがこの国に併合されていなければ、あなたは王女なのよ。その王女が敵国の王宮で近衛に殺されたら、戦争にならない方がおかしでしょ。戦争を回避するには、誰かが責任を取らなければならなかったのよ」
「それで、母上が生贄になったと」
「生贄だなんて……。話し合いになる前にイザベラは自ら命を絶ったのよ。でもそうね。話し合えば、生贄はイザベラに決まったでしょうね」
戦争を回避するためには命をかける。これが高貴な者が負う責任なのだろうか。
しかし、悔やまれるは、私たち二人が生きていることがわかっていれば、イザベラ様が死ぬ必要はなかったのだろうということだ。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
【完結】Amnesia(アムネシア)~カフェ「時遊館」に現れた美しい青年は記憶を失っていた~
紫紺
ミステリー
郊外の人気カフェ、『時游館』のマスター航留は、ある日美しい青年と出会う。彼は自分が誰かも全て忘れてしまう記憶喪失を患っていた。
行きがかり上、面倒を見ることになったのが……。
※「Amnesia」は医学用語で、一般的には「記憶喪失」のことを指します。
とあるおっさんのVRMMO活動記
椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。
念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。
戦闘は生々しい表現も含みます。
のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。
また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり
一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が
お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。
また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や
無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が
テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという
事もございません。
また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)
葵セナ
ファンタジー
主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?
管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…
不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。
曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!
ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。
初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)
ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。
勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します
華音 楓
ファンタジー
旧題:re:birth 〜勇者じゃないと追放された最強職【何でも屋】は、異世界でチートスキル【DIY】で無双します~
「役立たずの貴様は、この城から出ていけ!」
国王から殺気を含んだ声で告げられた海人は頷く他なかった。
ある日、異世界に魔王討伐の為に主人公「石立海人」(いしだてかいと)は、勇者として召喚された。
その際に、判明したスキルは、誰にも理解されない【DIY】と【なんでも屋】という隠れ最強職であった。
だが、勇者職を有していなかった主人公は、誰にも理解されることなく勇者ではないという理由で王族を含む全ての城関係者から露骨な侮蔑を受ける事になる。
城に滞在したままでは、命の危険性があった海人は、城から半ば追放される形で王城から追放されることになる。 僅かな金銭で追放された海人は、生活費用を稼ぐ為に冒険者として登録し、生きていくことを余儀なくされた。
この物語は、多くの仲間と出会い、ダンジョンを攻略し、成りあがっていくストーリーである。
転生幼女が魔法無双で素材を集めて物作り&ほのぼの天気予報ライフ 「あたし『お天気キャスター』になるの! 願ったのは『大魔術師』じゃないの!」
なつきコイン
ファンタジー
転生者の幼女レイニィは、女神から現代知識を異世界に広めることの引き換えに、なりたかった『お天気キャスター』になるため、加護と仮職(プレジョブ)を授かった。
授かった加護は、前世の記憶(異世界)、魔力無限、自己再生
そして、仮職(プレジョブ)は『大魔術師(仮)』
仮職が『お天気キャスター』でなかったことにショックを受けるが、まだ仮職だ。『お天気キャスター』の職を得るため、努力を重ねることにした。
魔術の勉強や試練の達成、同時に気象観測もしようとしたが、この世界、肝心の観測器具が温度計すらなかった。なければどうする。作るしかないでしょう。
常識外れの魔法を駆使し、蟻の化け物やスライムを狩り、素材を集めて観測器具を作っていく。
ほのぼの家族と周りのみんなに助けられ、レイニィは『お天気キャスター』目指して、今日も頑張る。時々は頑張り過ぎちゃうけど、それはご愛敬だ。
カクヨム、小説家になろう、ノベルアップ+、Novelism、ノベルバ、アルファポリス、に公開中
タイトルを
「転生したって、あたし『お天気キャスター』になるの! そう女神様にお願いしたのに、なぜ『大魔術師(仮)』?!」
から変更しました。
スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜
櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。
パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。
車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。
ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!!
相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム!
けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!!
パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる