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第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件
109. 告白
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ニコラスの部屋に忍び込み、認識阻害の魔法で隠れていたが、こんな時に限ってお腹を鳴らす馬鹿者がいた。
確かに夕飯前で、お腹はすいているだろうが、時と場所を考えなさいよ。
「そこね! 隠れてないで出てきなさい」
お陰でロザリー様に見破られてしまったじゃない。
兵士を呼ばれて大事になってはまずいので、私は魔法を解くことにした。
「ハインリッヒにマリー! やはり生きていたのね」
「ロザリー様ご無沙汰しております」
「どうも」
姿を見せた私たちにロザリー様は驚きの表情を見せるが、私たちが生きていることは予想していたようだ。
「ハインリッヒ、ごめんなさい。イザベラを死なせてしまって」
これは、どういうことだ? ロザリー様が真犯人だったのだろうか。
「それは、ロザリー様がマリーを殺すように命令したということか?」
リヒトがロザリー様を怒りのこもった目で睨む。
「それは違うわ。だけど、原因を作ったのは私たちなの」
私たちということは、ロザリー様一人ではないということか。
「たぶん、原因となったのは、あるお茶会で交わされた私たち王太子妃三人の会話なの」
王太子妃三人! 三人ともかかわっていたのか。
「当時王宮で、悪役令嬢のマリーが闇魔法を使い、王子をたぶらかしてこの国を乗っ取るつもりだ、と噂が流れていたの」
まあ、悪役令嬢なのは間違いではないわね。国を乗っ取るつもりはないけど。
「その噂をする者に対して、トワが『警戒が必要ね』と言ったの。私は『そうね、必要なら対策を取りましょう』と答えたわ。そうしたら、イザベラが『そんなのは噂の発生元を処分するべきなのよ』と」
「その会話を傍で聞いていた女騎士が、噂をする者でなく、私に対して、警戒が必要で、必要なら対策を取って、処分すべきだと受け取ったということですか?」
「全て、女騎士の勘違いだと!」
しかも、命令されたわけでもないのに、忖度して私を殺そうとしたことになる。近衛隊はどんな教育をしていたんだ!
「そういうことなのだけど、全て女騎士の責任にするつもりはないわ。私たちが不用意な会話をしてしまったのが原因だし、そんな女騎士を近衛に置いた責任も、噂を取り締まれなかった責任もあるわ」
「それなら、なんで、お父様には王位の継承権争いだなんて説明したのですか?」
私はロザリー様に疑問に思ったことを問い質した。
「嫌われて殺されたより、好かれて、奪い合いの結果殺された方が、まだ、印象がいいでしょ」
「殺された、には、違いないじゃないですか」
「そこまで切羽詰まった状態だったのよ」
「切羽詰まった状態?」
「マリー、あなたは自分の立場をわかっていないわ。イングラスがこの国に併合されていなければ、あなたは王女なのよ。その王女が敵国の王宮で近衛に殺されたら、戦争にならない方がおかしでしょ。戦争を回避するには、誰かが責任を取らなければならなかったのよ」
「それで、母上が生贄になったと」
「生贄だなんて……。話し合いになる前にイザベラは自ら命を絶ったのよ。でもそうね。話し合えば、生贄はイザベラに決まったでしょうね」
戦争を回避するためには命をかける。これが高貴な者が負う責任なのだろうか。
しかし、悔やまれるは、私たち二人が生きていることがわかっていれば、イザベラ様が死ぬ必要はなかったのだろうということだ。
確かに夕飯前で、お腹はすいているだろうが、時と場所を考えなさいよ。
「そこね! 隠れてないで出てきなさい」
お陰でロザリー様に見破られてしまったじゃない。
兵士を呼ばれて大事になってはまずいので、私は魔法を解くことにした。
「ハインリッヒにマリー! やはり生きていたのね」
「ロザリー様ご無沙汰しております」
「どうも」
姿を見せた私たちにロザリー様は驚きの表情を見せるが、私たちが生きていることは予想していたようだ。
「ハインリッヒ、ごめんなさい。イザベラを死なせてしまって」
これは、どういうことだ? ロザリー様が真犯人だったのだろうか。
「それは、ロザリー様がマリーを殺すように命令したということか?」
リヒトがロザリー様を怒りのこもった目で睨む。
「それは違うわ。だけど、原因を作ったのは私たちなの」
私たちということは、ロザリー様一人ではないということか。
「たぶん、原因となったのは、あるお茶会で交わされた私たち王太子妃三人の会話なの」
王太子妃三人! 三人ともかかわっていたのか。
「当時王宮で、悪役令嬢のマリーが闇魔法を使い、王子をたぶらかしてこの国を乗っ取るつもりだ、と噂が流れていたの」
まあ、悪役令嬢なのは間違いではないわね。国を乗っ取るつもりはないけど。
「その噂をする者に対して、トワが『警戒が必要ね』と言ったの。私は『そうね、必要なら対策を取りましょう』と答えたわ。そうしたら、イザベラが『そんなのは噂の発生元を処分するべきなのよ』と」
「その会話を傍で聞いていた女騎士が、噂をする者でなく、私に対して、警戒が必要で、必要なら対策を取って、処分すべきだと受け取ったということですか?」
「全て、女騎士の勘違いだと!」
しかも、命令されたわけでもないのに、忖度して私を殺そうとしたことになる。近衛隊はどんな教育をしていたんだ!
「そういうことなのだけど、全て女騎士の責任にするつもりはないわ。私たちが不用意な会話をしてしまったのが原因だし、そんな女騎士を近衛に置いた責任も、噂を取り締まれなかった責任もあるわ」
「それなら、なんで、お父様には王位の継承権争いだなんて説明したのですか?」
私はロザリー様に疑問に思ったことを問い質した。
「嫌われて殺されたより、好かれて、奪い合いの結果殺された方が、まだ、印象がいいでしょ」
「殺された、には、違いないじゃないですか」
「そこまで切羽詰まった状態だったのよ」
「切羽詰まった状態?」
「マリー、あなたは自分の立場をわかっていないわ。イングラスがこの国に併合されていなければ、あなたは王女なのよ。その王女が敵国の王宮で近衛に殺されたら、戦争にならない方がおかしでしょ。戦争を回避するには、誰かが責任を取らなければならなかったのよ」
「それで、母上が生贄になったと」
「生贄だなんて……。話し合いになる前にイザベラは自ら命を絶ったのよ。でもそうね。話し合えば、生贄はイザベラに決まったでしょうね」
戦争を回避するためには命をかける。これが高貴な者が負う責任なのだろうか。
しかし、悔やまれるは、私たち二人が生きていることがわかっていれば、イザベラ様が死ぬ必要はなかったのだろうということだ。
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