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第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件

108. 幽閉

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 闇の門に足を踏み入れると、あっけないほど簡単に転移していた。
 さっきまで、草原にいたはずなのに、ここは地下空洞のような場所だ。
 僅かな薄明かりがあり、私たちが出てきた鳥居の反対側には、出口と思われる扉がある。

「ここは本当に王宮なのか?」
「取り敢えず、あの扉を開けてみましょう」

 扉には鍵がけられていたが、闇魔法を駆使して解錠し扉を開ける。
 扉の先は廊下が続いていた。

「建物の中のようね」
「ああ、ここなら知ってる。王宮の地下五階だ」
 王宮は地下五階まであったのか。リヒトはよく知っているな。

「それじゃあニコラスの部屋まで案内してくれる」
「わかった。付いてこい」

「あ、ちょっと待って。認識阻害魔法をかけるわ」
「そうだな。見つかるとまずいからな」

 認識阻害魔法をかけたこともあり、誰にも見つからずに、リヒトの案内で問題なくニコラスの部屋に到着した。
 ただ、途中階段を八階分も上がらなければならなかったので、息も絶え絶えだ。

 息を整えてから、部屋の扉をそっと開け中に忍び込む。
 軟禁されているというわりには、扉の前に見張りの兵士がいなかったのは幸いだった。

 部屋に入るとニコラスは既に寝室にいて寝る支度をしていた。
 もう、そんな時間になってしまったのか。あ、時差があったか。

「ニコラス」
「えっ!」
「しっ!」
 認識阻害魔法を解いて、リヒトが声をかける。ニコラスが大声を上げそうになったので、私が慌ててそれを止めた。

「マリー様にハインリッヒ、どうしてここに」
「軟禁されていると聞いたわ。大丈夫?」

「軟禁? 謹慎させられているだけだけど」
「謹慎なの?」

「イングラスに行くのに、お母様には許可を取ったけど、お父様には内緒だったからね」
「それで、ロザリー様も謹慎させられているの」
 蓋を開けてみれば、なんてことはなかった。軟禁と謹慎では大きな違いだ。

「なんだ、心配して損したぜ。それで、ロザリー様から話は聞けたのか?」
「聞くには聞けたんだけど……」

「ニコラス、誰かいるの?」
 まずい、ロザリー様が話声に気付いてやってきたようだ。
 私は慌てて認識阻害魔法をかけ直した。

「お母様、ただの独り言だよ」
「なんだか女の子の声がしたような気がしたのだけれど」

「気のせいだよ」
「何か隠しているわね」

「何も隠してないよ」
 ロザリー様に責められて、ニコラスの目が泳いでいる。嘘をついているのがバレバレだ。

 グー!

 誰よ! こんな時にお腹を鳴らすやつは。

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