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第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件
98. 出迎え
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(ニコラス王子視点)
マリーがハインリッヒの亡骸を掘り出して連れ去った、という噂の真相を確かめるため、ボクはお忍びでイングラスに渡った。
トワも一緒に来たいと言っていたが、人数が多くなると目立つので諦めてもらった。
お母様は勿論、このことを知っているが、お父様とお祖父さまは知らない。
お父様たちに知られれば反対され、来ることはできなかっただろう。
お母様も最初は反対したが、無気力だったボクがやる気を見せたことで、お母様付きの騎士を一人、護衛に付けることで渋々許可してくれた。
流石に自分一人では許可が出るとは思っていないので、その騎士を受け入れた。
「ニコラス様、聞き込みによりますと、公爵夫妻は喪が明けるまで、北部にあるエディオカの別荘に滞在しているようです」
「じゃあ、そこに行ってみようか」
騎士の名前はハラル、護衛だけでなく、身の回りの世話や、情報集めまでしてくれる。
ボク一人では、公爵邸に行って、そこで追い返されて終わりだっただろうから、大変助かっている。
ボクたちは、領都ランドンからさらに北部のエディオカに列車で移動する。
駅に着くと公爵家の馬車が出迎えに来ていた。
お忍びで来たつもりだが、どうやらボクたちの行動は公爵に筒抜けだったようだ。
迎えの馬車に乗り、別荘に到着すると、応接室に案内された。
「ニコラス殿下、こんな所までお越しいただきありがとうございます」
「連絡もなく、押しかけてすみませんでした」
「いえ、構いません、マリーも彼岸で喜んでいることでしょう」
「マリー様のお墓参りをしても?」
「もちろんです。ただ埋葬はまだ済んでいませんので霊安室になりますが」
「そうですか、ではそちらにお願いします」
それは好都合だ。一人にしてもらえれば棺の中を確認できる。
案内された霊安室は、出入り口の扉が一つあるだけで、窓もない狭い部屋だった。
そこにぽつりと棺が置かれていた。豪華な祭壇に飾られているものと思っていたが、小さな献花台があるだけだった。
「花を手向けていただければ、お嬢様もお喜びになるでしょう」
メイドが花を差し出したので、それを受け取ると一緒にメモも渡された。
それには、護衛も外に出して一人になるように書かれていた。
元からそのつもりであったが、これは……。
霊安室は扉を閉めてしまえば密室だ。ここでボクが一人になり死んだら、自殺ということで処理されてしまう可能性がある。だが、公爵がボクを殺そうとするだろうか?
虎穴に入らずんば虎子を得ず、だ。覚悟を決めよう。
「公爵様、少し一人にしてもらえるだろうか?」
「一人ですか? 構いませんが」
「ハラルも外に出ていてくれ」
「ニコラス様、それは護衛として承知いたしかねません」
「大丈夫だ、窓もないのだから外から賊が侵入することはあり得ないから」
そういえば、王宮の書庫にも窓はなかった。外から賊が侵入することは、あり得なかったんだ。
「わかりました。それでは扉の外にいますので、何かあれば大声を上げてください」
ハラルも外に出て、棺しかない霊安室はボク一人だけになった。
さて、先ずは棺の中を確認しなければならないだろう。
マリーが生きているにせよ、死んでいるにせよ。いるとすれば棺の中しかない。
ボクは、慎重に棺の蓋を開け、中を確認する。だが、予想に反して棺の中は空だった。
これは……、どういうことだ?
マリーがハインリッヒの亡骸を掘り出して連れ去った、という噂の真相を確かめるため、ボクはお忍びでイングラスに渡った。
トワも一緒に来たいと言っていたが、人数が多くなると目立つので諦めてもらった。
お母様は勿論、このことを知っているが、お父様とお祖父さまは知らない。
お父様たちに知られれば反対され、来ることはできなかっただろう。
お母様も最初は反対したが、無気力だったボクがやる気を見せたことで、お母様付きの騎士を一人、護衛に付けることで渋々許可してくれた。
流石に自分一人では許可が出るとは思っていないので、その騎士を受け入れた。
「ニコラス様、聞き込みによりますと、公爵夫妻は喪が明けるまで、北部にあるエディオカの別荘に滞在しているようです」
「じゃあ、そこに行ってみようか」
騎士の名前はハラル、護衛だけでなく、身の回りの世話や、情報集めまでしてくれる。
ボク一人では、公爵邸に行って、そこで追い返されて終わりだっただろうから、大変助かっている。
ボクたちは、領都ランドンからさらに北部のエディオカに列車で移動する。
駅に着くと公爵家の馬車が出迎えに来ていた。
お忍びで来たつもりだが、どうやらボクたちの行動は公爵に筒抜けだったようだ。
迎えの馬車に乗り、別荘に到着すると、応接室に案内された。
「ニコラス殿下、こんな所までお越しいただきありがとうございます」
「連絡もなく、押しかけてすみませんでした」
「いえ、構いません、マリーも彼岸で喜んでいることでしょう」
「マリー様のお墓参りをしても?」
「もちろんです。ただ埋葬はまだ済んでいませんので霊安室になりますが」
「そうですか、ではそちらにお願いします」
それは好都合だ。一人にしてもらえれば棺の中を確認できる。
案内された霊安室は、出入り口の扉が一つあるだけで、窓もない狭い部屋だった。
そこにぽつりと棺が置かれていた。豪華な祭壇に飾られているものと思っていたが、小さな献花台があるだけだった。
「花を手向けていただければ、お嬢様もお喜びになるでしょう」
メイドが花を差し出したので、それを受け取ると一緒にメモも渡された。
それには、護衛も外に出して一人になるように書かれていた。
元からそのつもりであったが、これは……。
霊安室は扉を閉めてしまえば密室だ。ここでボクが一人になり死んだら、自殺ということで処理されてしまう可能性がある。だが、公爵がボクを殺そうとするだろうか?
虎穴に入らずんば虎子を得ず、だ。覚悟を決めよう。
「公爵様、少し一人にしてもらえるだろうか?」
「一人ですか? 構いませんが」
「ハラルも外に出ていてくれ」
「ニコラス様、それは護衛として承知いたしかねません」
「大丈夫だ、窓もないのだから外から賊が侵入することはあり得ないから」
そういえば、王宮の書庫にも窓はなかった。外から賊が侵入することは、あり得なかったんだ。
「わかりました。それでは扉の外にいますので、何かあれば大声を上げてください」
ハラルも外に出て、棺しかない霊安室はボク一人だけになった。
さて、先ずは棺の中を確認しなければならないだろう。
マリーが生きているにせよ、死んでいるにせよ。いるとすれば棺の中しかない。
ボクは、慎重に棺の蓋を開け、中を確認する。だが、予想に反して棺の中は空だった。
これは……、どういうことだ?
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