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第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件

97. 怪しい噂

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(ニコラス王子視点)

 王宮に怪しい噂が流れている。

「ねえ、ニコラス、あの噂話、聞いた?」
「噂話? 関心がないな」
 午後の昼寝の時間、トワが尋ねてきたが、マリーが亡くなってからというもの、ボクは全てのことに関心がなかった。

「少しは、周りのことに関心を持たなければ駄目よ」
「はいはい、そうですね」
 そんなボクにトワはいつも気をかけてくるが、今のボクには煩わしいだけだった。

「そんなこと言っていいの? マリーに関する噂なんだけど」
「なんだって!」
 ボクは思わず大きな声をあげてしまう。

「マリーのことだけは関心があるようね」
「いいから、噂の内容を教えてよ」

「マリーがハインリッヒの亡骸を掘り出して連れ去ったと噂になっているわ」
「マリーが生きていたってことか!」

「違うわよ。噂では、ハインリッヒの恋人だったマリーが、死んだあと離れ離れの場所に埋葬されたのが悲しくて、化けて出てハインリッヒを迎えに来たという話よ」
「なんだ、その出鱈目な噂は! マリーとハインリッヒが恋人同士のはずがないだろう! そんなことあり得ない」

「えー。否定するところはそこなの?」
「どこを否定しろと?」

「化けて出たところ?」
「マリーの幽霊なら会いたいな」

「そういうと思っていたわ。噂を確かめに行ってみましょ」
「どこへ?」

「王家の霊廟よ。ハインリッヒの遺体を確認すれば、噂が本当か確かめられるでしょ」
「そうだね。ボクもこのままじゃモヤモヤするし、王家の霊廟に行ってみよう」

「やった! それじゃあ許可を取って来てね」
「許可?」

「王家の霊廟は、私たちでも国王陛下の許可がないと入れないのよ」
「えー。それをボクに取って来いと?」

「そうよ。よろしくね」
 どうやらトワにうまく乗せられたらしい。

 仕方がないので、お祖父様に許可を取りに行ったが、ハインリッヒの遺体の確認はおろか、王家の霊廟に入ることさえ許可されなかった。

「王家の霊廟に入ることさえ許可されないなんて、ちょっとおかしいと思わない?」
「確かに。噂の出所を調べてもらったら、クビになった墓守らしい」

「調べてもらったの? ロザリー様付? この短時間に優秀ね」
「近衛は信用ならないからな。現状、信用できるのは、お母様が国から連れてきた者だけだ」

 トワは、短時間に調べられたと思っているようだが、それは多分違う。
 ボクが調べるようにお願いする前から既に調べていたのだ。つまり、単なる噂話ではないのだろう。

「それで、墓守はいつ首になったって?」
「ハインリッヒが埋葬されてすぐのことらしい」

「それは怪しいわね」
「だから、ボクは調べに行ってこようと思う」

「霊廟に入る許可はでなかったのでしょ。無断で行くつもり?」
「国王陛下に念押しされてしまったから、霊廟には行かない」

「じゃあ、どうするの?」
「ボクはイングラスに行ってくる」

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