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第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件
95. 乗馬
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別荘生活も一年が経とうとしていた。私もリヒトも九歳になっていた。
プロデューサーが言っていた準備期間が終わるまでに後三年、それまでに、王子と婚約し、三年後には学園に入学しなければならない。
それだというのに、死んだことになっている私には、王子との婚約も学園入学も見込みが立たない。
台本どおりの学園生活を送るため、闇魔法を極めようと頑張っているが、そちらも成果が上がっていない。
僕《しもべ》にした三体には、闇の身体強化魔法をかけているが、一向に人の言葉を喋るようにならない。
身体強化魔法でなく、別の魔法をかける必要があると考えた方がいいだろう。
こうなると、王宮の書庫に有った闇の魔導書を手に入れそこねたことが悔やまれる。
それでも、僕との仲は深まって、この一年でノアールに乗って遠乗りできるようになった。
今日も、リヒトとサラと三人で近くにある遺跡まで来ていた。
遺跡といっても、草原の真ん中に岩が鳥居状に積まれているだけだ。
「ここに何か書いてあるぞ」
リヒトが岩に刻まれた文字を見つけた。
「本当だわね。だけど、イングラス語でもランドレート大陸語でもないわね」
何か神秘的なところだし、ララエルなら読めるかしら?
ララエルは今日も部屋でゴロゴロしているが。本当に、何のためにいるマネージャーかわからない。
「本当に長閑よね」
こんな生活をしていると、悪役令嬢役など、どうでもよくなってきてしまう。
「マリーが良ければ、俺はこのままずっと、マリーと一緒に別荘で暮らしてもいいと思っている」
リヒトはどうしたんだ? 急にプロポーズのようなことを言い出して。
「リヒト兄様、私もそう思わないでもないわ」
「そうか。なら……」
「それでも、私は夢を諦められないわ。そのためには、どうしても学園に入りたいの」
私は、女優になる夢を諦められない。
リヒトだって、イザベラ様の無実を証明したかったはずだ。
「そうか……、そうだな。マリーが学園に行きたいなら、二人で学園に行く方法を考えよう」
いや、私はこの一年ずっとそれを考えていたんだけどね。
「こちらに来てからもう直ぐ一年になる。そろそろ、ほとぼりも冷めただろう。王都に戻れないか公爵に相談しよう」
リヒトの言うことにも一理ある。あれこれ私が考えても、お父様が許可しなければ学園に入学できない。
ある意味、お父様の説得方法を悩んでいたわけであるが、お父様と相談しない事には、私一人で悩んでいても解決する問題ではなかった。
私は、思い切ってお父様に相談してみるため、ノアールに跨ると、別荘への家路を急いだのだった。
プロデューサーが言っていた準備期間が終わるまでに後三年、それまでに、王子と婚約し、三年後には学園に入学しなければならない。
それだというのに、死んだことになっている私には、王子との婚約も学園入学も見込みが立たない。
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僕《しもべ》にした三体には、闇の身体強化魔法をかけているが、一向に人の言葉を喋るようにならない。
身体強化魔法でなく、別の魔法をかける必要があると考えた方がいいだろう。
こうなると、王宮の書庫に有った闇の魔導書を手に入れそこねたことが悔やまれる。
それでも、僕との仲は深まって、この一年でノアールに乗って遠乗りできるようになった。
今日も、リヒトとサラと三人で近くにある遺跡まで来ていた。
遺跡といっても、草原の真ん中に岩が鳥居状に積まれているだけだ。
「ここに何か書いてあるぞ」
リヒトが岩に刻まれた文字を見つけた。
「本当だわね。だけど、イングラス語でもランドレート大陸語でもないわね」
何か神秘的なところだし、ララエルなら読めるかしら?
ララエルは今日も部屋でゴロゴロしているが。本当に、何のためにいるマネージャーかわからない。
「本当に長閑よね」
こんな生活をしていると、悪役令嬢役など、どうでもよくなってきてしまう。
「マリーが良ければ、俺はこのままずっと、マリーと一緒に別荘で暮らしてもいいと思っている」
リヒトはどうしたんだ? 急にプロポーズのようなことを言い出して。
「リヒト兄様、私もそう思わないでもないわ」
「そうか。なら……」
「それでも、私は夢を諦められないわ。そのためには、どうしても学園に入りたいの」
私は、女優になる夢を諦められない。
リヒトだって、イザベラ様の無実を証明したかったはずだ。
「そうか……、そうだな。マリーが学園に行きたいなら、二人で学園に行く方法を考えよう」
いや、私はこの一年ずっとそれを考えていたんだけどね。
「こちらに来てからもう直ぐ一年になる。そろそろ、ほとぼりも冷めただろう。王都に戻れないか公爵に相談しよう」
リヒトの言うことにも一理ある。あれこれ私が考えても、お父様が許可しなければ学園に入学できない。
ある意味、お父様の説得方法を悩んでいたわけであるが、お父様と相談しない事には、私一人で悩んでいても解決する問題ではなかった。
私は、思い切ってお父様に相談してみるため、ノアールに跨ると、別荘への家路を急いだのだった。
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