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第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件
91. 秘密捜査
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(元近衛隊長ガイル視点)
王子及び公爵令嬢殺害示唆の容疑で地下牢に投獄されていた俺は、国王の前に引き出されていた。
そこで、王子と公爵令嬢が闇魔法により生きていると聞かされた。
だが、おかしい。
国王陛下は「死んでさえいなければ、どんな怪我や病気であろうと治せる魔法」とおっしゃった。「死んでさえいなければ」だ、今回二人は既に死んでいた。
「この魔法は『ヨミの眠り』といって、魔法をかけた相手を仮死状態にし、生命エネルギーを全て身体の回復に回すというものらしい」
「仮死状態ですか?」
「傍から見ると死んでいるのと変わらんようだ」
「では、二人は仮死状態だったと!」
「二人が生き返ったというのだから、そうなのだろう」
「それは、マリー様がその魔法を使ったのですか?」
「状況から見てそうだろう」
確かに現場には三人しかいなかった。他の者が出入りした様子もない。刺されてすぐに魔法を使わなければ、二人は本当に死んでいただろう。
「マリーのお陰でハインリッヒも命を取り留めた。だからといって、お主の罪がなくなるわけではない」
「心得ております」
例え二人が生きていたとしても、近衛が王族の命を狙ったという事実は変わらない。そのこと自体あってはならないことだ。
それに、二人の死によって、イザベラ様が亡くなっている。
あの場で、二人が仮死状態だと分かっていれば、イザベラ様が亡くなることはなかったかもしれない。
「マリーとハインリッヒは、イングラスに移ったようだ」
「ハインリッヒ様も、ですか?」
「二人の死は既に発表してしまった。イザベラも亡くなっている。ハインリッヒをそのまま王宮に戻すわけにはいかない。それに、マリーを狙った真犯人はまだわかっていない」
「マリー様を狙った真犯人ですか……」
イングラスにはイザベラ様が犯人だと伝えて戦争になることは回避したが、本当の真犯人はわかっていない。
真犯人がわからない以上、マリー様が生きていることを知られれば、また狙われる可能性がある。
「マリーが闇魔法を使えたことは、公爵家の者以外ほとんど知っている者はいなかった。元々王太子妃にも知らされていなかったのだ。それだというのに、王宮内で悪意がある形で伝わっている。必ず噂を広げた真犯人がいるはずだ」
イングラスの公爵令嬢であるマリー様を狙ったのは、イングラスに恨みを持つ者か、我が国で戦争を起こしたい者の仕業かと考えていた。だが、それだけでなく、闇魔法に詳しい者が、闇魔法使いとしてのマリー様を狙った可能性もでてきた。
「マリーが安全に王宮に来られるよう、お主には、その真犯人を見つけ出し、始末することを命じる」
「捕縛でなく、始末してしまって構わないのですか?」
「今までの捜査では網にかかっておらん。巧妙に証拠を残していないのだろう。ならば、捕まえても罪に問えるとも限らん。そういえば、最近、巷ではジャンクキラーなる者がおるそうではないか」
「なるほど、ジャンクキラーの被害者が多少増えても構わないわけですね。わかりました。自分にお任せください」
本来、こういったことは、暗部である「ムジン」がやる汚れ仕事ではあるが、罪人である俺に相応しい仕事だ。
それに、イングラス関係となると「ムジン」とイングラスの「クロネコ」が競合する危険がある。今はどこにも所属していない俺が適任というわけか。
いや、これはきっと国王陛下の慈悲なのだろう。自分の手で決着をつけろという。
王子及び公爵令嬢殺害示唆の容疑で地下牢に投獄されていた俺は、国王の前に引き出されていた。
そこで、王子と公爵令嬢が闇魔法により生きていると聞かされた。
だが、おかしい。
国王陛下は「死んでさえいなければ、どんな怪我や病気であろうと治せる魔法」とおっしゃった。「死んでさえいなければ」だ、今回二人は既に死んでいた。
「この魔法は『ヨミの眠り』といって、魔法をかけた相手を仮死状態にし、生命エネルギーを全て身体の回復に回すというものらしい」
「仮死状態ですか?」
「傍から見ると死んでいるのと変わらんようだ」
「では、二人は仮死状態だったと!」
「二人が生き返ったというのだから、そうなのだろう」
「それは、マリー様がその魔法を使ったのですか?」
「状況から見てそうだろう」
確かに現場には三人しかいなかった。他の者が出入りした様子もない。刺されてすぐに魔法を使わなければ、二人は本当に死んでいただろう。
「マリーのお陰でハインリッヒも命を取り留めた。だからといって、お主の罪がなくなるわけではない」
「心得ております」
例え二人が生きていたとしても、近衛が王族の命を狙ったという事実は変わらない。そのこと自体あってはならないことだ。
それに、二人の死によって、イザベラ様が亡くなっている。
あの場で、二人が仮死状態だと分かっていれば、イザベラ様が亡くなることはなかったかもしれない。
「マリーとハインリッヒは、イングラスに移ったようだ」
「ハインリッヒ様も、ですか?」
「二人の死は既に発表してしまった。イザベラも亡くなっている。ハインリッヒをそのまま王宮に戻すわけにはいかない。それに、マリーを狙った真犯人はまだわかっていない」
「マリー様を狙った真犯人ですか……」
イングラスにはイザベラ様が犯人だと伝えて戦争になることは回避したが、本当の真犯人はわかっていない。
真犯人がわからない以上、マリー様が生きていることを知られれば、また狙われる可能性がある。
「マリーが闇魔法を使えたことは、公爵家の者以外ほとんど知っている者はいなかった。元々王太子妃にも知らされていなかったのだ。それだというのに、王宮内で悪意がある形で伝わっている。必ず噂を広げた真犯人がいるはずだ」
イングラスの公爵令嬢であるマリー様を狙ったのは、イングラスに恨みを持つ者か、我が国で戦争を起こしたい者の仕業かと考えていた。だが、それだけでなく、闇魔法に詳しい者が、闇魔法使いとしてのマリー様を狙った可能性もでてきた。
「マリーが安全に王宮に来られるよう、お主には、その真犯人を見つけ出し、始末することを命じる」
「捕縛でなく、始末してしまって構わないのですか?」
「今までの捜査では網にかかっておらん。巧妙に証拠を残していないのだろう。ならば、捕まえても罪に問えるとも限らん。そういえば、最近、巷ではジャンクキラーなる者がおるそうではないか」
「なるほど、ジャンクキラーの被害者が多少増えても構わないわけですね。わかりました。自分にお任せください」
本来、こういったことは、暗部である「ムジン」がやる汚れ仕事ではあるが、罪人である俺に相応しい仕事だ。
それに、イングラス関係となると「ムジン」とイングラスの「クロネコ」が競合する危険がある。今はどこにも所属していない俺が適任というわけか。
いや、これはきっと国王陛下の慈悲なのだろう。自分の手で決着をつけろという。
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