92 / 118
第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件
91. 秘密捜査
しおりを挟む
(元近衛隊長ガイル視点)
王子及び公爵令嬢殺害示唆の容疑で地下牢に投獄されていた俺は、国王の前に引き出されていた。
そこで、王子と公爵令嬢が闇魔法により生きていると聞かされた。
だが、おかしい。
国王陛下は「死んでさえいなければ、どんな怪我や病気であろうと治せる魔法」とおっしゃった。「死んでさえいなければ」だ、今回二人は既に死んでいた。
「この魔法は『ヨミの眠り』といって、魔法をかけた相手を仮死状態にし、生命エネルギーを全て身体の回復に回すというものらしい」
「仮死状態ですか?」
「傍から見ると死んでいるのと変わらんようだ」
「では、二人は仮死状態だったと!」
「二人が生き返ったというのだから、そうなのだろう」
「それは、マリー様がその魔法を使ったのですか?」
「状況から見てそうだろう」
確かに現場には三人しかいなかった。他の者が出入りした様子もない。刺されてすぐに魔法を使わなければ、二人は本当に死んでいただろう。
「マリーのお陰でハインリッヒも命を取り留めた。だからといって、お主の罪がなくなるわけではない」
「心得ております」
例え二人が生きていたとしても、近衛が王族の命を狙ったという事実は変わらない。そのこと自体あってはならないことだ。
それに、二人の死によって、イザベラ様が亡くなっている。
あの場で、二人が仮死状態だと分かっていれば、イザベラ様が亡くなることはなかったかもしれない。
「マリーとハインリッヒは、イングラスに移ったようだ」
「ハインリッヒ様も、ですか?」
「二人の死は既に発表してしまった。イザベラも亡くなっている。ハインリッヒをそのまま王宮に戻すわけにはいかない。それに、マリーを狙った真犯人はまだわかっていない」
「マリー様を狙った真犯人ですか……」
イングラスにはイザベラ様が犯人だと伝えて戦争になることは回避したが、本当の真犯人はわかっていない。
真犯人がわからない以上、マリー様が生きていることを知られれば、また狙われる可能性がある。
「マリーが闇魔法を使えたことは、公爵家の者以外ほとんど知っている者はいなかった。元々王太子妃にも知らされていなかったのだ。それだというのに、王宮内で悪意がある形で伝わっている。必ず噂を広げた真犯人がいるはずだ」
イングラスの公爵令嬢であるマリー様を狙ったのは、イングラスに恨みを持つ者か、我が国で戦争を起こしたい者の仕業かと考えていた。だが、それだけでなく、闇魔法に詳しい者が、闇魔法使いとしてのマリー様を狙った可能性もでてきた。
「マリーが安全に王宮に来られるよう、お主には、その真犯人を見つけ出し、始末することを命じる」
「捕縛でなく、始末してしまって構わないのですか?」
「今までの捜査では網にかかっておらん。巧妙に証拠を残していないのだろう。ならば、捕まえても罪に問えるとも限らん。そういえば、最近、巷ではジャンクキラーなる者がおるそうではないか」
「なるほど、ジャンクキラーの被害者が多少増えても構わないわけですね。わかりました。自分にお任せください」
本来、こういったことは、暗部である「ムジン」がやる汚れ仕事ではあるが、罪人である俺に相応しい仕事だ。
それに、イングラス関係となると「ムジン」とイングラスの「クロネコ」が競合する危険がある。今はどこにも所属していない俺が適任というわけか。
いや、これはきっと国王陛下の慈悲なのだろう。自分の手で決着をつけろという。
王子及び公爵令嬢殺害示唆の容疑で地下牢に投獄されていた俺は、国王の前に引き出されていた。
そこで、王子と公爵令嬢が闇魔法により生きていると聞かされた。
だが、おかしい。
国王陛下は「死んでさえいなければ、どんな怪我や病気であろうと治せる魔法」とおっしゃった。「死んでさえいなければ」だ、今回二人は既に死んでいた。
「この魔法は『ヨミの眠り』といって、魔法をかけた相手を仮死状態にし、生命エネルギーを全て身体の回復に回すというものらしい」
「仮死状態ですか?」
「傍から見ると死んでいるのと変わらんようだ」
「では、二人は仮死状態だったと!」
「二人が生き返ったというのだから、そうなのだろう」
「それは、マリー様がその魔法を使ったのですか?」
「状況から見てそうだろう」
確かに現場には三人しかいなかった。他の者が出入りした様子もない。刺されてすぐに魔法を使わなければ、二人は本当に死んでいただろう。
「マリーのお陰でハインリッヒも命を取り留めた。だからといって、お主の罪がなくなるわけではない」
「心得ております」
例え二人が生きていたとしても、近衛が王族の命を狙ったという事実は変わらない。そのこと自体あってはならないことだ。
それに、二人の死によって、イザベラ様が亡くなっている。
あの場で、二人が仮死状態だと分かっていれば、イザベラ様が亡くなることはなかったかもしれない。
「マリーとハインリッヒは、イングラスに移ったようだ」
「ハインリッヒ様も、ですか?」
「二人の死は既に発表してしまった。イザベラも亡くなっている。ハインリッヒをそのまま王宮に戻すわけにはいかない。それに、マリーを狙った真犯人はまだわかっていない」
「マリー様を狙った真犯人ですか……」
イングラスにはイザベラ様が犯人だと伝えて戦争になることは回避したが、本当の真犯人はわかっていない。
真犯人がわからない以上、マリー様が生きていることを知られれば、また狙われる可能性がある。
「マリーが闇魔法を使えたことは、公爵家の者以外ほとんど知っている者はいなかった。元々王太子妃にも知らされていなかったのだ。それだというのに、王宮内で悪意がある形で伝わっている。必ず噂を広げた真犯人がいるはずだ」
イングラスの公爵令嬢であるマリー様を狙ったのは、イングラスに恨みを持つ者か、我が国で戦争を起こしたい者の仕業かと考えていた。だが、それだけでなく、闇魔法に詳しい者が、闇魔法使いとしてのマリー様を狙った可能性もでてきた。
「マリーが安全に王宮に来られるよう、お主には、その真犯人を見つけ出し、始末することを命じる」
「捕縛でなく、始末してしまって構わないのですか?」
「今までの捜査では網にかかっておらん。巧妙に証拠を残していないのだろう。ならば、捕まえても罪に問えるとも限らん。そういえば、最近、巷ではジャンクキラーなる者がおるそうではないか」
「なるほど、ジャンクキラーの被害者が多少増えても構わないわけですね。わかりました。自分にお任せください」
本来、こういったことは、暗部である「ムジン」がやる汚れ仕事ではあるが、罪人である俺に相応しい仕事だ。
それに、イングラス関係となると「ムジン」とイングラスの「クロネコ」が競合する危険がある。今はどこにも所属していない俺が適任というわけか。
いや、これはきっと国王陛下の慈悲なのだろう。自分の手で決着をつけろという。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
【完結】Amnesia(アムネシア)~カフェ「時遊館」に現れた美しい青年は記憶を失っていた~
紫紺
ミステリー
郊外の人気カフェ、『時游館』のマスター航留は、ある日美しい青年と出会う。彼は自分が誰かも全て忘れてしまう記憶喪失を患っていた。
行きがかり上、面倒を見ることになったのが……。
※「Amnesia」は医学用語で、一般的には「記憶喪失」のことを指します。
まだ、言えない
怜虎
BL
学生×芸能系、ストーリーメインのソフトBL
XXXXXXXXX
あらすじ
高校3年、クラスでもグループが固まりつつある梅雨の時期。まだクラスに馴染みきれない人見知りの吉澤蛍(よしざわけい)と、クラスメイトの雨野秋良(あまのあきら)。
“TRAP” というアーティストがきっかけで仲良くなった彼の狙いは別にあった。
吉澤蛍を中心に、恋が、才能が動き出す。
「まだ、言えない」気持ちが交差する。
“全てを打ち明けられるのは、いつになるだろうか”
注1:本作品はBLに分類される作品です。苦手な方はご遠慮くださいm(_ _)m
注2:ソフトな表現、ストーリーメインです。苦手な方は⋯ (省略)
御伽の住み人
佐武ろく
ファンタジー
国内でも上位に入る有名大学を首席で卒業し大手企業に就職した主人公:六条優也は何不自由なく日々の生活を送っていた。そんな彼が残業を終え家に帰るとベランダに見知らぬ女性が座り込んでいた。意識は無く手で押さえたお腹からは大量の血が流れている。そのことに気が付き慌てて救急車を呼ぼうとした優也を止めるように窓ガラスを割り部屋に飛び込んできたソレに思わず手は止まり目を丸くした。その日を境に人間社会の裏で生きる人ならざる者達【御伽】と関り始める。そしてある事件をきっかけに六条優也は人間社会から御伽の世界へ足を踏み入れるのであった。
※この物語はフィクションです。実在の団体や人物と一切関係はありません。

帰還した吞兵衛勇者〜異世界から帰ってきたら日本がダンジョンだらけになっていたんだが?〜
まぐな
ファンタジー
異世界転移に巻き込まれた主人公、梶谷太一は無事に異世界の魔王討伐を成し遂げ、元の世界の日本に帰還した……はずだった。
だが、太一が戻った日本には異世界でよくみたモンスターが蔓延るダンジョンが発生。
日本には元々ダンジョンがあったかのように人々の生活に馴染んでおり、モンスターを討伐する専門組織、討伐隊ギルドなども設立されていた。
「とりあえず難しいことは置いておいて酒盛りだ!」
しかし、太一は何よりも酒のことで頭がいっぱいだった。
異世界で鍛え上げた能力を持つ太一を、人手不足に陥っている討伐隊ギルドは放っておくはずもなく……。
カクヨムにも掲載してます。
実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる