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第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件
90. 元近衛隊長
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元近衛隊長の俺は、王子及び公爵令嬢殺害示唆の容疑で真っ暗な王宮の地下牢に投獄されていた。
多分このまま二度と光を見ることなく死ぬことになるだろう。
捜査結果を聞いた時、自害を希望したが、それは許されなかった。
まあ、部下だった女騎士のナディヤが王子と公爵令嬢を殺してしまったのだ、それも、俺と王太子妃の言葉を忖度した結果の犯行ともなれば、当然の刑罰であろう。近衛でありながら王族を害してしまったのだ、名誉の死など迎えられるはずもない。
ナディヤは自白剤により命を落としたようだが、可哀想なことをしてしまった。
剣の腕は今ひとつであったが、正義感と忠誠心は誰よりも強く、真面目で命令に忠実だったため近衛に採用したのだが、近衛に採用しなければこんなことにはならなかっただろう。
今更そんなことを考えても時は戻らない。
何もないこの暗闇で、死を許される時を待つしかない。
そう考えていたのに、突然、暗闇の中、一条の光が差し込んだ。
「ガイル、国王陛下がお呼びだ。出ろ!」
二度と外に出ることはないと思っていたが、どういうことだ?
「何をしている。早くしろ!」
俺は黙って連れに来た兵士の後に続いた。
連れられて行った部屋で待っていると、国王陛下がやって来た。
「ガイル、お主が従うのは正義か? それとも儂の命令か?」
「国王陛下、失礼ながら、それは愚問です。国王陛下の命令こそ正義です」
「今も迷いなしか。近衛としてそれが当然だが、今回はそれが裏目に出たのだがな……」
確かに、ナディヤが王太子妃の命令を忠実に実行しようとした結果、今回の事件は起こった。だが、やはり、近衛にとっては国王陛下の命令は絶対だ。
それで、逆賊と言われ、無惨な死を遂げようとも構わない。
「まあ、それはよい。ところで、良い知らせがある。二人は生きているようだ」
「二人とは?」
「ハインリッヒとマリーの二人だ」
「そんなはずはありません。確かに二人とも亡くなっているのを自分が確認しました。はっ! もしや影武者だったのですか?」
「いや、刺されたのは本人たちで間違いない」
「ではどうやって?」
死者を蘇生させる方法でもあるというのか?
「これを見ろ」
「それは、闇の魔導書」
「マリーは書庫でこれを読んでいたらしい」
マリー様が闇魔法を使えると噂になっていたが本当だったのか。
「この中に、死んでさえいなければ、どんな怪我や病気であろうと治せる魔法が載っている」
それは、幻の全治全能薬エリクサーと一緒ではないか!
闇魔法にそんな魔法があったとは、そんなことが知れ渡れば、闇魔法使いの争奪戦が始まるぞ。場合によれば、闇魔法使いは命を狙われることになりかねない。
闇魔法が秘匿されているのはこのためか。
多分このまま二度と光を見ることなく死ぬことになるだろう。
捜査結果を聞いた時、自害を希望したが、それは許されなかった。
まあ、部下だった女騎士のナディヤが王子と公爵令嬢を殺してしまったのだ、それも、俺と王太子妃の言葉を忖度した結果の犯行ともなれば、当然の刑罰であろう。近衛でありながら王族を害してしまったのだ、名誉の死など迎えられるはずもない。
ナディヤは自白剤により命を落としたようだが、可哀想なことをしてしまった。
剣の腕は今ひとつであったが、正義感と忠誠心は誰よりも強く、真面目で命令に忠実だったため近衛に採用したのだが、近衛に採用しなければこんなことにはならなかっただろう。
今更そんなことを考えても時は戻らない。
何もないこの暗闇で、死を許される時を待つしかない。
そう考えていたのに、突然、暗闇の中、一条の光が差し込んだ。
「ガイル、国王陛下がお呼びだ。出ろ!」
二度と外に出ることはないと思っていたが、どういうことだ?
「何をしている。早くしろ!」
俺は黙って連れに来た兵士の後に続いた。
連れられて行った部屋で待っていると、国王陛下がやって来た。
「ガイル、お主が従うのは正義か? それとも儂の命令か?」
「国王陛下、失礼ながら、それは愚問です。国王陛下の命令こそ正義です」
「今も迷いなしか。近衛としてそれが当然だが、今回はそれが裏目に出たのだがな……」
確かに、ナディヤが王太子妃の命令を忠実に実行しようとした結果、今回の事件は起こった。だが、やはり、近衛にとっては国王陛下の命令は絶対だ。
それで、逆賊と言われ、無惨な死を遂げようとも構わない。
「まあ、それはよい。ところで、良い知らせがある。二人は生きているようだ」
「二人とは?」
「ハインリッヒとマリーの二人だ」
「そんなはずはありません。確かに二人とも亡くなっているのを自分が確認しました。はっ! もしや影武者だったのですか?」
「いや、刺されたのは本人たちで間違いない」
「ではどうやって?」
死者を蘇生させる方法でもあるというのか?
「これを見ろ」
「それは、闇の魔導書」
「マリーは書庫でこれを読んでいたらしい」
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「この中に、死んでさえいなければ、どんな怪我や病気であろうと治せる魔法が載っている」
それは、幻の全治全能薬エリクサーと一緒ではないか!
闇魔法にそんな魔法があったとは、そんなことが知れ渡れば、闇魔法使いの争奪戦が始まるぞ。場合によれば、闇魔法使いは命を狙われることになりかねない。
闇魔法が秘匿されているのはこのためか。
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