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第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件

81. 逃走計画

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 私を殺そうとした真犯人が誰だかわからないので、私とハインリッヒはこのまま死んだことにすることになった。
 そのうえで、二人共、別人として公爵家の養子となることが決まった。
 ハインリッヒ王子のことはリヒト兄様と呼ぶことになった。

 幸い、私もリヒトも、以前と髪の色が大きく変わってしまったので、ぱっと見、身元がばれることはないだろう。

 とはいえ、リヒトをこのまま王都で生活させるのはリスクが高いので、一旦、リヒトを連れてイングラスに戻ることになった。

「マリーを死んだことにする以上、棺はイングラスに運ばなければならないのだが、その見送りにニコラス様とトワ様が見えられるそうだ」
 王都の公爵邸の応接室で、私とリヒトは、お父様からそう言われた。

「そう、わざわざお見送りに来てくれるの……」
 二人には死んだと騙すことになるので、少し申し訳ない気持ちだ。

「本来ありがたいことなんだが、今回はそれでちょっと厄介なことになった」
「何か問題でも?」

「イングラスまで飛行船を使うのだが、運航スケジュールの関係で、事前に二人を乗せておくことができない」
 つまり、王子たちが見守る中、飛行船に乗り込まなければならないわけか。

「流石に、この髪色でも、王子たちに会えば、私たちだとわかってしまうでしょね」
「俺たち二人だけ、別の交通機関でイングラスに向かえばいいんじゃないか?」
 おっ、リヒトにしてはいいアイデアだ。

「子供たち二人だけでは危険過ぎる、とても許可はできない」
「そんな危険なことなどありますの?」

「一年前にも駅で爆弾テロがあったし、ジャンクキラーと呼ばれる殺人鬼も野放しのままだ」
「ジャンクキラー……。まだ捕まっていませんでしたの」
 カナリの父親を殺したのは、ジャンクキラーではないかといわれていた。

「でしたらどうしましょう……」

「一つ良い案がある」
「それはどのようなものですの?」

「棺に入っていけばよい」
「成る程、ですが、私はそれでもいいとして、リヒト兄様はどうしますの」

「王子も棺に入っていけばいい」
「お父様、棺が二つあったら変ですわ」

「だから、一つの棺に二人で入っていけばよい」
「なるほど……。えー! 二人で一緒に入るのですか?」

「なんだ、俺と一緒に入るのは嫌そうだな?」
 それはそうだろう。若い二人が狭い空間に二人きりなんて、はしたない。

「いえ、リヒト兄様が嫌ということではなくてですね……」
「なら、その案でいいだろう」

「えー。本当に?」
「何か他に良い案があるのか?」

「ありませんが……」
「なら、諦めろ」

 そんなわけで、リヒトと二人、再び棺に入ることになった。

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