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第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件
80. 偽死
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お父様は、ハインリッヒだけでなく私もこのまま死んだことにした方がいいと言い出した。
「マリー、お前も、また狙われる可能性が高い」
「それは、そうかもしれないけど、家族と離れて暮らすのは嫌だわ」
確かに、真犯人が定かではないのだから用心に越したことはないが、だからといってお母様や弟のロバートと会えないのは寂しい。
「そこは、死んだ娘の代わりに養子に取ったことにする」
「それ、無理がない?」
娘が死んだから、娘にそっくりな少女を養子にした、という言い訳はどうなのだろう。
「家族に隠す必要はない、髪色が変わっているから、周りからはわからないだろう」
「そうかしら……」
確かに大分印象は違うけど……。
「王子も同様に養子ということで」
「いや、俺は使用人で構わない」
「遠慮される必要はないのですよ」
これって、ハインリッヒを養子に迎えれば、台本どおりに養子の兄ができることになる。
これが、何らかの強制力による修正なのか、それとも、初めから決められていた道筋なのかわからないが、もし強制力による修正だとすれば、ロバートに危害が及んでいたかもしれない。
そう考えると、ハインリッヒには何が何でも養子になってもらわなければならない。
まあ、ただ単に私の考え過ぎという可能性もあるが、カナリの件もある。台本どおりにするためにも、ここは、私からも推すことにしよう。
「ハインリッヒ王子が兄になってくれるのなら私も嬉しいですわ」
「そ、そうなのか?」
「はい、それに、真犯人を探すのに、貴族でないと王宮に入れませんよ」
「それもそうだな。なら仕方がない。兄になってやろう」
少し大人になったかと思ったが、横柄な態度は変わらないようだ。
「ありがとうございます。ハインリッヒ王子」
「兄弟になるのだから、リヒトと呼んで構わんぞ」
死んだことにするのに、ハインリッヒ王子と呼び続けるわけにはいかないし、偽名としてもちょうどいいか。
「そうですか。では、リヒト兄様とお呼びしますね」
「リヒト兄様……。うむ、そうしてくれ」
なんだかうれしそうだな。
前に、ニコラスがニックと呼んでくれといっていたこともあったが、もしかして、ハインリッヒも前からリヒトと呼んでもらいたかったのかな?
「それではそういうことにいたしましょう。それと、このまま王都にいるのは流石に見つかる可能性が高いです。ほとぼりが冷めるまではイングラスで過ごされた方がよろしいかと思われます」
「確かにそうだな。イングラスには一度は行ってみたと思っていた。暫くはイングラスで過ごすとしよう」
こうして、私と王子は亡くなったことにして、密かにイングラスに戻ることになった。
「マリー、お前も、また狙われる可能性が高い」
「それは、そうかもしれないけど、家族と離れて暮らすのは嫌だわ」
確かに、真犯人が定かではないのだから用心に越したことはないが、だからといってお母様や弟のロバートと会えないのは寂しい。
「そこは、死んだ娘の代わりに養子に取ったことにする」
「それ、無理がない?」
娘が死んだから、娘にそっくりな少女を養子にした、という言い訳はどうなのだろう。
「家族に隠す必要はない、髪色が変わっているから、周りからはわからないだろう」
「そうかしら……」
確かに大分印象は違うけど……。
「王子も同様に養子ということで」
「いや、俺は使用人で構わない」
「遠慮される必要はないのですよ」
これって、ハインリッヒを養子に迎えれば、台本どおりに養子の兄ができることになる。
これが、何らかの強制力による修正なのか、それとも、初めから決められていた道筋なのかわからないが、もし強制力による修正だとすれば、ロバートに危害が及んでいたかもしれない。
そう考えると、ハインリッヒには何が何でも養子になってもらわなければならない。
まあ、ただ単に私の考え過ぎという可能性もあるが、カナリの件もある。台本どおりにするためにも、ここは、私からも推すことにしよう。
「ハインリッヒ王子が兄になってくれるのなら私も嬉しいですわ」
「そ、そうなのか?」
「はい、それに、真犯人を探すのに、貴族でないと王宮に入れませんよ」
「それもそうだな。なら仕方がない。兄になってやろう」
少し大人になったかと思ったが、横柄な態度は変わらないようだ。
「ありがとうございます。ハインリッヒ王子」
「兄弟になるのだから、リヒトと呼んで構わんぞ」
死んだことにするのに、ハインリッヒ王子と呼び続けるわけにはいかないし、偽名としてもちょうどいいか。
「そうですか。では、リヒト兄様とお呼びしますね」
「リヒト兄様……。うむ、そうしてくれ」
なんだかうれしそうだな。
前に、ニコラスがニックと呼んでくれといっていたこともあったが、もしかして、ハインリッヒも前からリヒトと呼んでもらいたかったのかな?
「それではそういうことにいたしましょう。それと、このまま王都にいるのは流石に見つかる可能性が高いです。ほとぼりが冷めるまではイングラスで過ごされた方がよろしいかと思われます」
「確かにそうだな。イングラスには一度は行ってみたと思っていた。暫くはイングラスで過ごすとしよう」
こうして、私と王子は亡くなったことにして、密かにイングラスに戻ることになった。
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