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第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件
78. 王家の霊廟
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王家の霊廟に着くと、墓守のおじいさんに止められた。
「ここは、王家の霊廟。何人たりとも、王宮の許可なしで立ち入らせるわけにはまいりませんな」
「緊急事態だ、これで見なかったことにしてくれ」
墓守に金を握らせ、見て見ぬふりをさせる。
墓守が引っ込んだところで、王子が埋葬された墓を掘り起こす。
どうか、まだ生きていますように。
棺を引き上げ、蓋を開けると王子は静かに眠るように横たわったままだった。
「呼吸をしていない。遅かったか……」
「いえ、お父様。まだ、私がかけた『ヨミの眠り』が効いています。これから目覚める筈です」
「そうか。この状態から生き返るのか……」
王子はどう見ても死んでいるようにしか見えない。自分もこんな状態だったかと思うと、ちょっと、ゾンビになった気分だ。
私、ちゃんと生きてるわよね。心配になって、改めて呼吸と心音を確認する。
自分のことを心配していると、王子が呼吸を始めた。そして、目を開けた。
「ここは?」
「王家の霊廟になります」
「霊廟? 俺は胸を刺されて死んだのか……」
「いえ、亡くなったと思われていましたが、奇跡的に助かりました」
「俺は生きているのか……。なら、なぜ霊廟に?」
「先ほども申しましたが、亡くなられたと思わられたために、ここに埋葬されました」
「状況が理解できないな……」
お父様が説明しているが、私の魔法について触れないため、要領を得ない。
「王子殿下、庇っていただいてありがとうございました」
「お前は、マリーなのか?」
なぜ疑問形? ああ、髪が白髪になってしまったせいか。
そういえば、ハインリッヒの髪は元々金髪だったのに、黒髪になっている。そのせいか、前と大分印象が違う。
しかし、ハインリッヒが黒髪になったのは闇魔法の影響だろうが、それなら、なんで私の髪は白髪になってしまったのだろう。
「はい、マリーでございます」
「怖い思いをさせてしまったようだな。怪我はなかったか?」
ハインリッヒは、恐怖で私の髪が白くなったと思っているようだ。
「いえ、私も胸を刺されましたが、治りました」
「そうか、痛い思いをさせてすまなかった」
「いえ、王子殿下のせいではありません」
「いや、俺がもっとしっかりしていれば、こんなことにはならなかった。それに、お前を襲ったのは、近衛の女騎士だっただろう」
「殿下には、その者が娘を襲う理由に心当たりはありませんでしたか?」
「いや、いつも俺たちには優しかったし、母たちの命令にも忠実だったようだが……。襲った理由を黙っているのか? まさか逃げられたわけはあるまい」
「その者は既に自害しました」
「そうか、俺を刺したのだ、母上も黙っていまい……」
「……それなのですが、イザベラ様も」
「お父様!」
「母上がどうかしたのか?」
「マリー、これからどうするかを考える上で、このことは王子に伝えなければならない」
「……そうですね」
「何があったのだ!」
「王子、どうか気をしっかりお持ちください。イザベラ様は自害されました」
「母上がか?! なぜだ?! なぜ母上が自害する必要がある?!」
ハインリッヒはお父様に食って掛かったのだった。
「ここは、王家の霊廟。何人たりとも、王宮の許可なしで立ち入らせるわけにはまいりませんな」
「緊急事態だ、これで見なかったことにしてくれ」
墓守に金を握らせ、見て見ぬふりをさせる。
墓守が引っ込んだところで、王子が埋葬された墓を掘り起こす。
どうか、まだ生きていますように。
棺を引き上げ、蓋を開けると王子は静かに眠るように横たわったままだった。
「呼吸をしていない。遅かったか……」
「いえ、お父様。まだ、私がかけた『ヨミの眠り』が効いています。これから目覚める筈です」
「そうか。この状態から生き返るのか……」
王子はどう見ても死んでいるようにしか見えない。自分もこんな状態だったかと思うと、ちょっと、ゾンビになった気分だ。
私、ちゃんと生きてるわよね。心配になって、改めて呼吸と心音を確認する。
自分のことを心配していると、王子が呼吸を始めた。そして、目を開けた。
「ここは?」
「王家の霊廟になります」
「霊廟? 俺は胸を刺されて死んだのか……」
「いえ、亡くなったと思われていましたが、奇跡的に助かりました」
「俺は生きているのか……。なら、なぜ霊廟に?」
「先ほども申しましたが、亡くなられたと思わられたために、ここに埋葬されました」
「状況が理解できないな……」
お父様が説明しているが、私の魔法について触れないため、要領を得ない。
「王子殿下、庇っていただいてありがとうございました」
「お前は、マリーなのか?」
なぜ疑問形? ああ、髪が白髪になってしまったせいか。
そういえば、ハインリッヒの髪は元々金髪だったのに、黒髪になっている。そのせいか、前と大分印象が違う。
しかし、ハインリッヒが黒髪になったのは闇魔法の影響だろうが、それなら、なんで私の髪は白髪になってしまったのだろう。
「はい、マリーでございます」
「怖い思いをさせてしまったようだな。怪我はなかったか?」
ハインリッヒは、恐怖で私の髪が白くなったと思っているようだ。
「いえ、私も胸を刺されましたが、治りました」
「そうか、痛い思いをさせてすまなかった」
「いえ、王子殿下のせいではありません」
「いや、俺がもっとしっかりしていれば、こんなことにはならなかった。それに、お前を襲ったのは、近衛の女騎士だっただろう」
「殿下には、その者が娘を襲う理由に心当たりはありませんでしたか?」
「いや、いつも俺たちには優しかったし、母たちの命令にも忠実だったようだが……。襲った理由を黙っているのか? まさか逃げられたわけはあるまい」
「その者は既に自害しました」
「そうか、俺を刺したのだ、母上も黙っていまい……」
「……それなのですが、イザベラ様も」
「お父様!」
「母上がどうかしたのか?」
「マリー、これからどうするかを考える上で、このことは王子に伝えなければならない」
「……そうですね」
「何があったのだ!」
「王子、どうか気をしっかりお持ちください。イザベラ様は自害されました」
「母上がか?! なぜだ?! なぜ母上が自害する必要がある?!」
ハインリッヒはお父様に食って掛かったのだった。
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