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第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件

72. 書庫

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 一年ぶりに王宮にやって来た。念願の闇の魔導書を手に入れるため、上手く立ち回らなければいけない。
 国王陛下に挨拶してから子供たちだけで遊び、今はお昼寝タイムである。
 王子たちの子供部屋で、みんなぐっすりお昼寝中である。チャンス到来だ。

 私は、闇魔法を使い気配を消すと、こっそりと起き出して、子供部屋を出て一年前に見つけておいた書庫へ向かう。

 書庫に着くと、このために習得した闇視を使い、書庫の扉の錠をあける。
 幸い、書庫の錠は私が開けられない程複雑なものではなかった。
 ヘアピンを使って、苦も無く解錠する。

 書庫の中に忍び込むと闇の魔導書を探す。
「禁書だとすれば、奥の方か」

 扉を閉めると書庫には窓がなく昼間だというのに真っ暗だ、闇視で照明のスイッチを探し、明かりを点ける。
 それでも薄暗い中、注意深く、本棚の本を確認しながら奥に進む。
 そして、ありました。闇の魔導書!
 私はそれを取り出すと頁をめくる。

 成る程、魔導書は普通の本とは違うようだ、読んだだけで、闇魔法の使い方が頭に入ってくる。

「マリー様、何をされているのですか?」
「!」
 魔導書に夢中になって、周囲を警戒することを忘れていたようだ。
 振り向くと、確か王妃の護衛についていた女騎士がこちらを睨んでいた。

「少し……、読みたい本があって……」
 私は慎重に返事を返す。

「マリー様は既に、本が読めるのですか?」
「ええ、少しですが」

「少しという割には、難しそうな本を手に取られているようですが?」
「これは、絵が綺麗だったから……」

「ほぉー。闇魔法の魔導書ですか……。やはり、闇属性をお持ちなのですね」
「……闇属性? 何のことかしら?」
 私が闇属性持ちなのは一般的には知られていない。ここはとぼけるしかないだろう。

「とぼけても無駄です。子供部屋を出るときにも闇魔法を使っていましたね」
「……」
 闇魔法を使っていることに気付かれていたのか。これはまずい。

「闇魔法で王子を虜にして、この国を乗っ取るつもりですね。ですが、そうはさせません!」
「ど、どうしてそうなるの! 国を乗っ取るつもりなんてないわ!」
 なぜ、ちょっと闇魔法を使って書庫に入って、闇の魔導書を見ただけでそんな大げさな話になる。濡れ衣もいいところだ!

「イングラスの公爵令嬢の言葉など信じられません。王太子妃様は、そのことを大変に危惧されていました」
「王太子妃様が……」
 どの王太子妃よ! そんな言い掛かりを掛けてくるのは。

「イングラスにこの国を支配させるわけにはいきません。マリー様にはここで死んでいただきます。」
 女騎士は腰に差していたレイピアを抜いた。ちょっと本気なの?!

「何で、何もしてないのに殺されなくちゃならいのよ!」
「ご覚悟を!」

 私は少しずつ後退る。
 そして、壁に突き当たった。
 これ以上逃げられなくなった私めがけて、女騎士はレイピアを突き出した。

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