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第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件
71. 再遭遇
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お父様にお願いして、一年ぶりに王都に来ることができた。
第一の目的は、王宮の書庫にあるだろう闇の魔導書だが、折角王都に来たのだから王都の観光名所を巡りもしたい。
と、いうことで、今日はメイドのサラと都内観光だ。古い寺院や時計塔などを見て回る。
途中、カフェテリアで休憩しながらサービスで出された豪華なパフェを食べていると、優雅なひと時を過ごすこの場に似つかわしくない怒鳴り声が聞こえてきた。
「ちょっと! 私が利用できないってどういうことよ」
「こちらのカフェは会員制になっております。会員様以外のご利用はできません」
「私、子爵の娘なんだけど」
「身分は関係ありません。貴族でなくても、会員様ならご利用いただけます」
なんでしょうこれは、前にも同じようなことがあったような……。これはデジャブだろうか?
「なら、会員になればいいのでしょう」
「エコノミークラス会員ですと、年会費一万になりますが、よろしいでしょうか?」
「一万! たか! でも、それを払えばあのパフェが食べられるのね」
少女は私が食べているパフェを指差している。
ああ、やっぱり一年前にカフェの店員にいちゃもんを付けていた自称ヒロインだ。
もしかして、クレーマーなのだろうか?
「いえ、あちらはファーストクラス会員様のみのサービスになっております」
「エコノミーではダメなの? ならファーストクラスになるわ」
「ファーストクラスの会員になるには、年会費百万に加え、当商会と年間一千万以上の取引が条件となります」
「なにそれ! パフェ一つにそんなに出せるわけないでしょ!」
「それでは、お引き取りください」
「ちょっと、どういうこと。私はヒロインなのよ。少しは融通を利かせなさいよ!」
やはり、自分のことをヒロインといっている。
「そんなわけにはまいりません」
「私は光魔法に適性があるのよ。将来王妃になるのよ」
「たとえ、王妃様でも、会員になってもらわないことには、サービスを提供するわけにはまいりません」
「ほんと、頭が堅いわね!」
「お嬢様、これ以上は……」
少女に付いていたメイドが宥めに入った。何か、前もこのパターンだったわね。
少し気になったので、私は少女に声をかけることにした。
「あの、よろしければ、私がご馳走しましょうか?」
「えっ? あんた誰よ?」
少女はこちらを睨みつけた。
親切に、ご馳走すると言っているのに、睨みつけることはないと思うのだが。
「私はマリーといいますが、あなたは?」
「私はセリーヌ オクレール、将来、王子と結婚して王妃になるのよ」
「そう、台本どおり上手くいくといいわね」
「台本? 何のこと?」
セリーヌは台本を知らないようだ。ヒロインだとしても、私と同じようにスカウトされたわけではないのかもしれない。
そもそも、ヒロインかどうかも怪しいが……。
「台本! マリー ロートブルク!」
なぜか、メイドの方が台本という言葉に反応した。しかも、私のことを公爵令嬢だとわかったようだ。
確か、このメイド、ララエルといったか? もしかするとこちらが本当のヒロインなのか?
でも、ララエルの髪色は緑色で、台本に登場するヒロインとは合致しない。
「お嬢様! 早く帰りましょう」
「ララエル? 急にどうしたの」
「いいから、早く!」
「えっ? あ、あれーーー」
ララエルはセリーヌの腕を引っ張ると、あっという間にその場から走り去ってしまった。
あまりにもの逃げ足の早さに、私もサラもただ目を丸くして、見送ることしかできなかった。
第一の目的は、王宮の書庫にあるだろう闇の魔導書だが、折角王都に来たのだから王都の観光名所を巡りもしたい。
と、いうことで、今日はメイドのサラと都内観光だ。古い寺院や時計塔などを見て回る。
途中、カフェテリアで休憩しながらサービスで出された豪華なパフェを食べていると、優雅なひと時を過ごすこの場に似つかわしくない怒鳴り声が聞こえてきた。
「ちょっと! 私が利用できないってどういうことよ」
「こちらのカフェは会員制になっております。会員様以外のご利用はできません」
「私、子爵の娘なんだけど」
「身分は関係ありません。貴族でなくても、会員様ならご利用いただけます」
なんでしょうこれは、前にも同じようなことがあったような……。これはデジャブだろうか?
「なら、会員になればいいのでしょう」
「エコノミークラス会員ですと、年会費一万になりますが、よろしいでしょうか?」
「一万! たか! でも、それを払えばあのパフェが食べられるのね」
少女は私が食べているパフェを指差している。
ああ、やっぱり一年前にカフェの店員にいちゃもんを付けていた自称ヒロインだ。
もしかして、クレーマーなのだろうか?
「いえ、あちらはファーストクラス会員様のみのサービスになっております」
「エコノミーではダメなの? ならファーストクラスになるわ」
「ファーストクラスの会員になるには、年会費百万に加え、当商会と年間一千万以上の取引が条件となります」
「なにそれ! パフェ一つにそんなに出せるわけないでしょ!」
「それでは、お引き取りください」
「ちょっと、どういうこと。私はヒロインなのよ。少しは融通を利かせなさいよ!」
やはり、自分のことをヒロインといっている。
「そんなわけにはまいりません」
「私は光魔法に適性があるのよ。将来王妃になるのよ」
「たとえ、王妃様でも、会員になってもらわないことには、サービスを提供するわけにはまいりません」
「ほんと、頭が堅いわね!」
「お嬢様、これ以上は……」
少女に付いていたメイドが宥めに入った。何か、前もこのパターンだったわね。
少し気になったので、私は少女に声をかけることにした。
「あの、よろしければ、私がご馳走しましょうか?」
「えっ? あんた誰よ?」
少女はこちらを睨みつけた。
親切に、ご馳走すると言っているのに、睨みつけることはないと思うのだが。
「私はマリーといいますが、あなたは?」
「私はセリーヌ オクレール、将来、王子と結婚して王妃になるのよ」
「そう、台本どおり上手くいくといいわね」
「台本? 何のこと?」
セリーヌは台本を知らないようだ。ヒロインだとしても、私と同じようにスカウトされたわけではないのかもしれない。
そもそも、ヒロインかどうかも怪しいが……。
「台本! マリー ロートブルク!」
なぜか、メイドの方が台本という言葉に反応した。しかも、私のことを公爵令嬢だとわかったようだ。
確か、このメイド、ララエルといったか? もしかするとこちらが本当のヒロインなのか?
でも、ララエルの髪色は緑色で、台本に登場するヒロインとは合致しない。
「お嬢様! 早く帰りましょう」
「ララエル? 急にどうしたの」
「いいから、早く!」
「えっ? あ、あれーーー」
ララエルはセリーヌの腕を引っ張ると、あっという間にその場から走り去ってしまった。
あまりにもの逃げ足の早さに、私もサラもただ目を丸くして、見送ることしかできなかった。
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