街角で悪役令嬢役にスカウトされた件 【OKしたけど、異世界でサスペンスだとは聞いてない！】

第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い８歳)王宮書庫殺人事件

70. 闇視魔法

　八歳の誕生日に黒猫のネロをプレゼントされ、毎日テイムできないか、試行錯誤しながら闇魔法をかけている。
　その甲斐あってか、ネロは私に大変懐いているが、まだ、人間の言葉を喋るまでには至っていない。
　兎に角、猫は気まぐれで、僕《しもべ》として役に立つようになるまでには、まだまだ、先は長そうである。
　まあ、ペットとしては申し分ないので、毎日その仕草に癒されているが、メイドのサラに懐かないのは困ったものだ。
　というか、サラも本気に猫といがみ合わないでもらいたい。

　ネロに対して「お嬢様のペットの座は渡しません」と、訳の分からないことを言っているが、サラをペットにした覚えはない。

　そんなことよりも、だ。
　ネロが僕として使えれば、王宮の書庫への侵入も簡単だと思っていたが、他の方法を考えた方がいいかもしれない。
　魔導書があれば、魔法で簡単に書庫へ侵入できるだろうが、その魔導書を手に入れるために書庫に侵入しようとしているのだから、何とも困った状態である。

　台本の中に何かヒントがないかと思い、読み返していると、使えそうな闇魔法があったので習得を試みることにした。

　そんなこんなで、王都から戻って来て一年、自己流で魔法の練習を続けてきたが、なんとか闇魔法で錠を開ける方法を習得することができた。
　闇魔法の闇視を利用することより錠の構造を解析し、解錠することができるようになったのだ。
　闇視は、闇の魔力を流し込むことにより、闇に隠れた所を見ることができる魔法だ。箱の中身を蓋を開けずに確認したり、夜中に明かりを点けずに部屋の様子を確認したりできる。

　暗闇で夜目が利く暗視ではなく、どちらかといえば、透視に近い。

　地道な訓練の末、闇視を使い、数字を揃えるダイヤル錠は全て開けられるようになったし、キーが必要な物もヘアピンがあれば開けられるようになった。

　女優として大成できなかったら、鍵師としてやっていけるだろう。

　これで、王宮の書庫にも侵入できるだろう。

「お父様、もし、王宮に行く機会がありましたら、私も連れて行ってもらいたいのですが」
「ああ、ロバートも一歳になったし、マリーが初めて王宮に行ってから一年経ったのか」

　弟のロバートは先日一歳の誕生日を迎え、今は、よちよち歩きをできるようになった。
　私のことを「ねえね」と呼んでくれる様はとても可愛い。

「王子たちと仲良くなることも大事だろうし、次に王宮へ行くときはマリーも連れて行こう」
「ありがとうございます」

　まあ、王子とは婚約しなければならないから、それも大切だ。
　でも、今回一番の目標は、書庫に潜り込んで、闇の魔導書を見つけることである。
　闇魔法を自在に操る自分を想像すると、今から楽しみで仕方がない。