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第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件
69. 黒猫
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以前から魔法の練習をしていいたことが発覚し、大目玉を食らったが、お陰で、自由に魔法の練習をできるようになった。
とはいえ、闇の魔導書を手に入れるまでは、手探りで進めるしかない。
問題は、どうやって鍵のかかった王宮の書庫に入るかだ。
あれこれ悩んでいたが、台本の中に問題を解決させるヒントがあった。
台本によると、私は闇魔法で黒猫を僕《しもべ》にしているのだ。
その黒猫は、すごく優秀で、鍵のかかった部屋にも潜り込み、指示した物を取って来てくれる。
他にも、監視や隠れて護衛などをしてくれ、そのうえ、何と人間の言葉が喋れて、コミュニケーションが取れるのだ。
これは、何としてでも闇のテイム魔法を覚えなければ。
魔導書なしで覚えるのは一見難しそうだが、実は、まるで手掛かりがないわけではない。
闇の身体強化魔法の実験台になった仔馬のノアールが、私に懐いているのだ。
人の言葉を喋ることはできないが、私の言っていることは理解しているようで、私の命令にはたいてい従っている。
ただ、私を舐めようとしてくるのを止めないのは困ったものだ。
ということで、私は次の誕生日プレゼントに、お父様に黒猫をおねだりすることにした。
「お父様、次の誕生日なんですが……」
「ん? どうかしたか?」
「欲しいものがあるの」
「なんだ、誕生日プレゼントのおねだりか。なにが欲しい、言ってみなさい」
「実は黒猫が欲しいのです」
どんな猫でも、闇魔法の影響で黒猫になってしまうだろうが、最初から黒猫なら、周りに闇魔法のことを知られる心配がない。
ガチャン!
そんなことを考えていたら、お父様が手にしていたカップを落とした。
何をそんなに動揺しているのだろう。
お父さんは顔を引きつらせて、メイドのサラの方を確認する。
サラは、しきりに頭を横に振っている。
「クロネコのことをどこで聞いた?」
私ももうすぐ八歳だ、猫くらい知っていて当たり前だと思うのだが、屋敷からほとんど外に出る機会がなかった私は猫を知らないと思っていたようだ。
「私も誕生日が来ればもう八歳ですよ。それくらいのこと当然知ってますわ」
「そ、そうか……。それで、クロネコをどうするつもりだ?」
「それは、僕にしますわ」
「既にサラがいるだろう。それでは駄目なのか?」
「そうです。あたしだけでは不足ですか」
まあ、サラは確かに私専属だから僕のようなものだが、猫ではないからな。
サラが猫耳カチューシャとシッポと首輪をしたところを想像して、ちょっと見てみたい気もするが……。
「駄目に決まってますわ。僕にするとは言いましたが、それだけでなく、ペットとして可愛がりたいのです」
「クロネコをペットにする気なのか?!」
「私がペットになります!」
「サラは人間でしょ。愛玩動物の猫でもないのにペットになんかできませんわ」
でも、今度、猫のコスプレはしてもらおう。
「愛玩動物? クロネコとは、猫のことなのか?」
「黒猫が猫でなかったら、何なのですか? 変なお父様」
「いや、てっきり……」
「てっきり。何ですの?」
「いや、何でもない。黒猫だったな。誕生日までには用意しよう」
何か誤魔化されたようだが、黒猫をもらえるならよしとしよう。
とはいえ、闇の魔導書を手に入れるまでは、手探りで進めるしかない。
問題は、どうやって鍵のかかった王宮の書庫に入るかだ。
あれこれ悩んでいたが、台本の中に問題を解決させるヒントがあった。
台本によると、私は闇魔法で黒猫を僕《しもべ》にしているのだ。
その黒猫は、すごく優秀で、鍵のかかった部屋にも潜り込み、指示した物を取って来てくれる。
他にも、監視や隠れて護衛などをしてくれ、そのうえ、何と人間の言葉が喋れて、コミュニケーションが取れるのだ。
これは、何としてでも闇のテイム魔法を覚えなければ。
魔導書なしで覚えるのは一見難しそうだが、実は、まるで手掛かりがないわけではない。
闇の身体強化魔法の実験台になった仔馬のノアールが、私に懐いているのだ。
人の言葉を喋ることはできないが、私の言っていることは理解しているようで、私の命令にはたいてい従っている。
ただ、私を舐めようとしてくるのを止めないのは困ったものだ。
ということで、私は次の誕生日プレゼントに、お父様に黒猫をおねだりすることにした。
「お父様、次の誕生日なんですが……」
「ん? どうかしたか?」
「欲しいものがあるの」
「なんだ、誕生日プレゼントのおねだりか。なにが欲しい、言ってみなさい」
「実は黒猫が欲しいのです」
どんな猫でも、闇魔法の影響で黒猫になってしまうだろうが、最初から黒猫なら、周りに闇魔法のことを知られる心配がない。
ガチャン!
そんなことを考えていたら、お父様が手にしていたカップを落とした。
何をそんなに動揺しているのだろう。
お父さんは顔を引きつらせて、メイドのサラの方を確認する。
サラは、しきりに頭を横に振っている。
「クロネコのことをどこで聞いた?」
私ももうすぐ八歳だ、猫くらい知っていて当たり前だと思うのだが、屋敷からほとんど外に出る機会がなかった私は猫を知らないと思っていたようだ。
「私も誕生日が来ればもう八歳ですよ。それくらいのこと当然知ってますわ」
「そ、そうか……。それで、クロネコをどうするつもりだ?」
「それは、僕にしますわ」
「既にサラがいるだろう。それでは駄目なのか?」
「そうです。あたしだけでは不足ですか」
まあ、サラは確かに私専属だから僕のようなものだが、猫ではないからな。
サラが猫耳カチューシャとシッポと首輪をしたところを想像して、ちょっと見てみたい気もするが……。
「駄目に決まってますわ。僕にするとは言いましたが、それだけでなく、ペットとして可愛がりたいのです」
「クロネコをペットにする気なのか?!」
「私がペットになります!」
「サラは人間でしょ。愛玩動物の猫でもないのにペットになんかできませんわ」
でも、今度、猫のコスプレはしてもらおう。
「愛玩動物? クロネコとは、猫のことなのか?」
「黒猫が猫でなかったら、何なのですか? 変なお父様」
「いや、てっきり……」
「てっきり。何ですの?」
「いや、何でもない。黒猫だったな。誕生日までには用意しよう」
何か誤魔化されたようだが、黒猫をもらえるならよしとしよう。
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