街角で悪役令嬢役にスカウトされた件 【OKしたけど、異世界でサスペンスだとは聞いてない!】

なつきコイン

文字の大きさ
上 下
65 / 118
第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件

64. 飛行船

しおりを挟む
 領地に戻る挨拶で王宮に行った時に、書庫の場所は確認できた。だが、書庫には鍵が掛けられていて中に入ることはできなかった。
 今回は諦めるとしても、次回、王都に来る時までには王宮の書庫に入る方法を考えておこう。
 まだ先はある、焦る必要はない。

 領地に帰る日になり、お祖父様たちに別れを告げ、王都の屋敷を出て車で駅に向かう。と、思ったら、向かったのは駅とは違う方向だった。
 来る時と同様に列車と船を乗り継いで、帰るのではないのだろうか? それともどこか寄り道をするだけだろうか?

「お父様、駅に向かうのではないのですか?」
「帰りは列車でなく他の乗り物で帰ることにしたんだ」

「他の乗り物ですか? 何に乗って帰るのです?」
「それは着いてからのお楽しみだ」

 このまま車で帰るというわけではなさそうだが、どこへ向かっているのだろう?

 車で一時間ほど走って到着したのは、王都郊外にある飛行場だった。

「お父様、ここは飛行場ですよね。まさか飛行機で帰るわけではありませんよね」
 この世界にも飛行機はすでにあるが、まだ発明されたばかりで、お客を乗せられるような旅客機は存在しない。あるのは、短座か複座の複葉機くらいなものだ。

「飛行機でなく、乗って行くのはあれだよ」
 お父様が指し示す方には、巨大な飛行船が浮いていた。

「飛行船に乗れるの! やった!」

 日本にいた時でも飛行船に乗ったことはない。少し、いや、かなりテンションが上がってしまい大きな声を出してしまった。

「喜んでくれてよかった。わざわざ、飛行船にした甲斐があったよ」
 しかし、なぜ急に飛行船? 単なるサプライズならいいのだが、列車や船を使えない理由ができたのなら問題だ。列車や船での襲撃を避けるため、手出しができない飛行船にした、というのは考え過ぎだろうか。
 私自身、学園でのことで、少し神経質になっているのかもしれない。

 車を飛行船に横付けし、私たちは飛行船のゴンドラに乗り込む。

 中はまるでサロンのようだ。寝室なども個室で用意されている。
 これはゆっくりくつろいで空の旅を楽しめそうだ。

 離陸時にエレベータに乗っているような感覚があったが、水平飛行に移ってしまえば船に乗っているより乗り心地がいいかもしれない。

 エンジンでプロペラを回して推進力を得ているので、完全に風任せという訳ではないが、それでも、風の影響を大きく受けるので、到着までの時間は、風向きしだいとなる。

 ただ、今の時期は南東からの風が吹くことが多いので、王都から領都に帰るにはちょうど追い風となる。
 お陰で、五日後にはお母様と弟が待つ屋敷に帰り着くことができた。

 行くときに飛行船を使わず、帰りに使用したのは、風向きのためだったのだろうか?
 それならば、警備のためではないかという私の考えは、取り越し苦労だったことになるのだが……。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

筋トレ民が魔法だらけの異世界に転移した結果

kuron
ファンタジー
いつもの様にジムでトレーニングに励む主人公。 自身の記録を更新した直後に目の前が真っ白になる、そして気づいた時には異世界転移していた。 魔法の世界で魔力無しチート無し?己の身体(筋肉)を駆使して異世界を生き残れ!

婚約破棄された悪役令嬢ですが、闇魔法を手に聖女に復讐します

ごぶーまる
ファンタジー
突然身に覚えのない罪で、皇太子との婚約を破棄されてしまったアリシア。皇太子は、アリシアに嫌がらせをされたという、聖女マリアとの婚約を代わりに発表。 マリアが裏で手を引いたに違いないと判断したアリシアは、持ち前の闇魔法を使い、マリアへの報復を決意するが……? 読み切り短編です

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

愛すべき『蟲』と迷宮での日常

熟練紳士
ファンタジー
 生まれ落ちた世界は、剣と魔法のファンタジー溢れる世界。だが、現実は非情で夢や希望など存在しないシビアな世界だった。そんな世界で第二の人生を楽しむ転生者レイアは、長い年月をかけて超一流の冒険者にまで上り詰める事に成功した。  冒険者として成功した影には、レイアの扱う魔法が大きく関係している。成功の秘訣は、世界でも4つしか確認されていない特別な属性の1つである『蟲』と冒険者である紳士淑女達との絆。そんな一流の紳士に仲間入りを果たしたレイアが迷宮と呼ばれるモンスターの巣窟で過ごす物語。

異世界に来たようですが何も分かりません ~【買い物履歴】スキルでぼちぼち生活しています~

ぱつきんすきー
ファンタジー
突然「神」により異世界転移させられたワタシ 以前の記憶と知識をなくし、右も左も分からないワタシ 唯一の武器【買い物履歴】スキルを利用して異世界でぼちぼち生活 かつてオッサンだった少女による、異世界生活のおはなし

だいたい全部、聖女のせい。

荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」 異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。 いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。 すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。 これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。

処理中です...